Act.7 葬流の源流に…。5
嵐のような激しい剣劇を繰り広げる 『カミラ』と『暗魔』。
『カミラ』の、まるで『火の神の奉る美しい神楽』のような攻防一体の高速連続斬撃を、驚異的な反射速度と
達人同士の高度な刃の読み合いに、立ち入る隙は
「…うワっ!?何あの太刀筋!?単純な刀術だけなら『ご先祖』より上なんじゃないノ?あの二人」
「あれじゃあ助太刀にも入れない…。…かえって邪魔になるな」
「でも、このままほっといてもマズいよね…どうしよウ」
まだまだ実力が足りない未熟なアタシ達では、何も出来ない歯痒い状態だ。一体どうすれば…。『義父さん』だったら、こんな時どうするんだ!?
思考を巡らせ、何か出来る事は無いかとアタシは必死に考えていたのだが、不意に、視界に移る『暗魔』の様子が少しおかしい事に気づいた。
『夜兎』とは言え、既に肉体の老いた暗魔の動きが少しずつ鈍くなっており、だんだんカミラの剣圧に押され始めていた。…当然、カミラも暗魔のその変化を察知していて、彼女は逆に自身の剣速を更に早めたのだ!!
「まずいぞ!?あれじゃあ!!!」
アタシが思わず声を上げた瞬間、暗魔の持つ『炮烙』が、カミラの強い一撃よって大きく弾き飛ばされ、アタシのすぐ手前の地面に勢い良く突き刺さった。
『
胴体こそ真っ二つにはならなかったが、暗魔の胸元からは大量の鮮血が噴き出し、彼は膝から崩れ落ちた。カミラは立膝の状態の暗魔にゆっくり近づき、彼に止めを刺すために再び小太刀を構えた。…視界の悪い夜の野外であったはずなのだが、アタシの瞳には、俯きながら何かを口ずさむ『暗魔』と、何故か『カミラ』の頬を伝う涙が写って見えていた。
「お爺ちゃん!!」
アタシは『暗魔』ピンチに助太刀する為その場から飛び出し、目の前の『炮烙』に手を伸ばそうとしたとき、後ろにいた妖廼に伸ばした方とは反対の腕を思いきり掴まれ、制止される。
「血穢!、だから駄目だヨ!!アレには勝てっこないっテ!!!」
「離せよ妖廼!!勝てないからって、人が
「だから『無謀』と『勇気』は違うんっだっテ!!『ご先祖』も前に言ってたでしょ?」
「…くっ!!?…妖廼、すまねぇ!!」
「!?アッ…」
アタシは妖廼掴まれた手に『微量の魔力』を込め、そのまま魔力をアタシの腕から妖廼の頭まで伝わせて彼女に軽い脳震盪を起こさし、彼女の意識を奪った。
意識を失った事で離された手をそのまま振りほどき、アタシは地面に刺さった『炮烙』を引き抜く、そして『縮地法』で一気に『カミラ』の方へ駆けた!!
真っすぐ一直線に突撃しながら刃を左腕の肘窩に滑らせす事で『炮烙』にアタシの『穢血』を吸わせ、そのまま彼女に向けて『百鬼葬流』の奥義を放つ!!
「百鬼葬流奥義!!『
『縮地法』により、自身の出せる最高速度まで加速したアタシはその勢いのまま跳び、ライフル弾の様なキリモミ回転の突進突きを『カミラ』にお見舞いした。
アタシの回転突きの奥義、『
よし!まずはここまで!
一瞬だけ出来た隙に、アタシはすぐさま『暗魔』の元に駆け寄り、彼の傷口から流れ出る血を素早く『炮烙』に吸わせ、次の手を打つ!!!
「百鬼葬流奥義…『
『炮烙』から放出される無数の『血煙』が、あたり一面を包みこむ。これで『カミラ』の視界を一時だけ塞いだがこれではまだ足りない!!
「百鬼葬流奥義…『
アタシは『炮烙』に纏わりつく血の全てを振り落とす様に刃を薙いで、飛ばされたその血は子鼠の様な『血弾』となり、『カミラ』に襲い掛かった。…これで時間が稼げるはずだ!!
アタシは奥義を放ったあとすぐに小柄な『暗魔』を抱え上げ、すぐさまその場から離脱する。
これがアタシの作戦!別にこの場で『カミラ』勝つ必要なんて無いんだ!ここは一旦引いて、とにかく『お爺ちゃん』を救わないと!!
「駄目だ…。お嬢ちゃん…」
離脱しようとした瞬間、アタシに抱きかかえられた『
そして気が付けば、目の前に先ほどまでとは比べ物にならないほどの強い殺気を放つ『カミラ』が、『
回避はもう間に合わない!!アタシは左手で、さっき妖廼がやっていた『防御結界魔術』を見様見真似で行い、迫りくる死の刃を苦し紛れに受け止めた!!…達人の本気の一撃を、素人の見様見真似で受けるとどうなるかなど、最早言うまでも無いだろう。
まぁ…幸いな事に、アタシ達は真っ二つに斬られる事は無かった…。…しかし、『防御結界魔術』を施したとはいえ、『
その一撃の余波によりズタズタに引き裂かれ、ところどころの箇所が辛うじて皮で繋がっている状態だった。そしてその傷口は、今この瞬間にも発火し焼け落ちるかと思える程に赤熱し、無残に爛れていた…。
分かってると思うけど、これは『幻肢』では無い。…紛れもない『現実』だ。…アタシは…たった今…、
『…左腕を…失ったのだ。』
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