Act.7 葬流の源流に…。4
「…そないな事まで知ってるん?せっかく仲良くなれそうだったのに悲しいわぁ…そやけど、『炮烙』無しにうちと斬り合えるとでも思てるん?…血穢はんには悪いけぇど…強いで…うち」
『カミラ』は
彼女は自身の得物である小太刀に魔力を込める。元は闇に紛れる様な漆黒の色をしていたその刀身は、彼女の妖艶な魔力にあてられることで『赫剣』の異名に相応しい美しい
彼女の異変と向けられる殺意に気付いた周りの人々はパニックを起こし、まるで蜘蛛の子を散らすように、その場から逃げまどっていった。全員がその場から離れてくれればよかったのだが…腰を抜かし立てなくなる者や、泣き叫びながら立ち尽くす子供までいる。
「…血穢はん?こないなええ夜に血生臭い事はうち、ほんまに嫌やで?できたら見逃してくれへんかしら?…おたの申します…このとおり」
『百鬼葬流』は元々、一対多数の状況を想定した剣の技術。奥義にもよるが、この『
「くっ!!」
正直、打つ手が無い。自衛手段としての携帯小型ナイフは持っているものの、そんな物を見せたらその瞬間に彼女は『百鬼葬流』の奥義を振るうだろうし、そもそも『炮烙』無しで彼女に勝てる見込みも無い。
単独でいる彼女をここで見逃すのは、のちの事を考えると不味いのかも知れないが、実質的に人質も取られてる以上、アタシも大きくは動けない。
ここは一度降伏して、彼女を見逃すしか無いと思ったアタシはその意を伝えようと口を開こうとした瞬間、
「…お嬢ちゃん。危ないから下がんな」
…驚いたアタシは後ろを振り向くと、そこにはアタシがさっきまで探し回っても何処にも居なかった、『百鬼葬流』の開祖にして伝説の盲目剣士。『鬼剣の暗魔』が『炮烙』を杖の様に突きながらゆっくり近づいているのが見えた。
逃げまどう人々とは反対方向に、ゆっくり歩いてくる彼は、歩を一つ進める度に彼自身の魔力と殺気を強くしていき、その重苦しい『圧』はアタシに向けられてる訳では無いのにかかわらず、アタシは思わず『死の恐怖』を覚え、身体が固まり生唾を呑んだ。
「…お久しぶりどすなぁ。ずっと…待ってましたぁ、『先生』?」
「へへっ…お前さんも、随分『人』斬ったな」
「先生ほどでは…。でも先生?うち、強なったんやで?」
『カミラ』はそういって、自身の纏う悍ましい魔力の圧を更に上げる。
…先ほど、
…どちらにせよこの状況はかなりマズイ!!優れた『百鬼葬流』の使い手同士の斬り合いは、互いが繰り出す数多の斬撃と劫火の余波により、あたり一面は灰燼と化すと前に文献で読んだ!今すぐにこの場を離れないと!!!
しかし思考とは裏腹に、アタシの魂はこの『血闘』を是非見届けたいと心臓の鼓動を早くし、その興奮はアタシを地獄の最前席に案内した。
『カミラ』と『暗魔』の緊張が極限にまで高まり、お互いに手を自らの妖刀の柄に掛ける。居合の構えと取った二人は、そのままその場で動かなくなるが、代わりに二人の魔力が更に圧を増し、ぶつかり合う二つの巨大な魔力同士が摩擦を起こしプラズマと風圧を生む。それらをもっと真近で見たいと思ったアタシは、恍惚な表情を浮かべ、ふらふらと二人に近づこうとしてしまう。
「血穢!!何やってんノ!!?」
突然の叫び声と共に、アタシは声の主である『妖廼』に服の後ろのネックラインを掴まれ、飛び退く形で連れ去られる。
連れ去られる瞬間、『妖廼』の登場に驚きはしたものの、アタシの瞳はしっかりと、居合の構えと取った二人がその刃を抜く瞬間を捉える。
「…百鬼葬流奥義・『
「…百鬼葬流改め、ヴァレンタイン流虚血術奥義…『
刹那、ぶつかり合う二つの刃から放たれる眩い閃光と爆炎。そして赤黒い数多の剣閃が二人を中心にして広がってゆく。
『妖廼』は飛び退きながら、アタシと自身に簡易的な『防御結界魔術』を施し、衝撃に備えた。音速で広がる斬撃と劫火の余波は瞬く間にアタシ達を飲み込む。
幸い、彼女の『防御結界魔術』のおかげで吹き飛ばされこそしたが、アタシ達は何とか怪我はしなかった。
…気づけば彼らの奥義の余波は公園内の桜達を次々と切り刻み、燃やし尽くしている。
しかし…難を逃れ、一命を取り留めたアタシの瞳は今だ彼らに釘付けで、遠目で確認した二人のその姿にアタシは驚愕する!!
『百鬼葬流』の奥義を繰り出したばかりの二人が、余波により激しく舞う土埃や煙に中でさえも関係無く、今だに激しく斬り合っていて、その輝く剣閃の瞬きはさらに速度上げ、まるで巨大な閃光花火の様な火花を散らしていたのだ!!!
あれが!!高レベルの『百鬼葬流』使い手同士の剣撃!!?…次元が違い過ぎる!?あんなのとまともに殺り会おうとしていたのかアタシは!!!?
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