Act.7 葬流の源流に…。2
気が付けばアタシ達はソファーの上で寝ころんだ状態で目を覚ます。あたりを見渡すとここはどうやら》『
「いやーやられちゃったネ血穢。あの強さ…マジでただもんじゃないナー」
「クソっ、いつの間に術を掛けられていたんだ?」
『幻肢の術』の発動タイミングもそうだが、幻の中でアタシ達は『明晰状態』であるはずなのにあそこまでの技量差で一方的に斬殺されるなんて。
目を覚ましたアタシ達に気づいたマスターが、店内からこの部屋に戻って来た。マスター曰く、アタシ達二人はカウンターで飲んでる最中に、突然、寝落ちしてたらしく。呼吸も乱れて無かったので、いつもの事だと思い、バックヤードに運んで寝かしてたと言うことだ。…当然、妖廼と老人が店で暴れていたと言うことは無く、アタシの『
…不味いな、完全に盗まれてしまった。
「血穢-。さっきのお爺ちゃん。『少しだけ返して貰うって』っていってたよネ?」
「まさか…」
『百鬼葬流』の開祖にして伝説の盲目剣士『鬼剣の
「やっぱ血穢の『
「バカ言え!『炮烙』は今、アタシの
「それに『夜兎』の時間間隔で少しって…一体いつ帰ってくるか分かったもんじゃねぇ!」
「…んだよネー。やっぱ追わなくちゃダメ?…まぁ一応、
「そこまでやっといて、追わない選択肢は無いだろ。…でも流石だな妖廼!あの一瞬でそこでやってるなんて」
「…『ご先祖』に叩き込まれたからネー。『ただでは死ぬな』…って」
「じゃあ早速行こうぜ妖廼!案内してくれ」
何故だか知らないが、妖廼は行きたくなさげだ。何時もなら「絶対やり返す!」なんて息巻いていそうだが。
「血穢-。行って二人ともホントに切られちゃうとかなイ?」
「だったらもう二人とも切られて死んでるよ…だいたい、お前がいきなり切りかかったからやり返されたんだろうが。…チャラにしてやるから、さっさと案内しろって」
「うゥー、ごめんっテ血穢-。でもあんな殺気出されたら万が一があるじゃン?」
「…まぁそれはそうだな。
でも大事な
…考えるまでも無いか…『
…彼に何とか接触し、『百鬼葬流』の源流を辿る事で、アタシの業もさらに強力な物となるだろう。
『炮烙』を返して貰うのも勿論そうだが、『
アタシ達は、マスターに『介抱してもらったお礼』と少しばかりの迷惑料を上乗せした飲みの代金を支払い。店を後にした。
…………………………………………………………………………………………………
時刻は現在20時。アタシ達は妖廼が『暗魔』に仕込んだ
桜の咲き誇るこの季節に、曰く『夜桜』の名所言われるこの場所では、今現在『花見」の為に非常に多くの人達が老若男女問わずごった返しており、公園どなりの電車駅とその周辺の飲み屋が立ち並ぶ一角までも人がゴミの様にあふれかえっている。
「あちャー。この辺までは確かに捕捉出来てたんだけド、こんなに人がいたら『ノイズ』が多すぎて流石に分かんないナー」
自身の頭をポリポリ掻きながら申し訳なさそうに妖廼がいう。
「…ここまで的を絞れたんなら十分さ。後は自力で探そう」
「ウェッ。それマジ~?骨が折れるってもんじゃないヨ~」
「いいから手分けして探すぞ!アタシは公園内、
「…うーイ。血穢、見つけても一人で突っ走らないでヨ?」
「それはこっちのセリフだ。お前も携帯のマナーモード切っとけ」
そういいながら、アタシは自分の携帯のマナーモード切り、着信音量を最大に設定した。妖廼がぶー垂れながら渋々アタシの言う事聞いてるのを見届けて、アタシは『
公園内。園内の特殊な『ネオン街灯』でライトアップされた、『八重桜』から『しだれ桜』までの大小様々な桜が、その妖しい耀きで多くの人々の心を魅了し、夢中にさせていた。
敷物を敷き、桜を肴に大宴会をする若者やサラリーマンの集団と、二人だけの濃密な時間の世界に蕩ける男女に、ただ淡々と夜桜を写真に収めてゆく変わり者まで様々だ。
確かに、普段は風情とかにあまり興味の無いアタシでさえも、『ここ夜桜』に関しては思わず本来の目的を忘れて妖しく耀く桜たちを見つめていいたいと思うほどだ。本当に美しい…。
非常に多くの人達が行き交う公園の中、アタシは駆け足気味で『
人が行き交う舗装されたコンクリートの道のど真ん中。一人の女性が転んでしまったのか、横座りで自らの痛めた足を擦っている。
よく見るとその女性は、かなり『派手な花魁』の様な『打掛』を着ており、『ぽっくり下駄』が近くに二つ散乱していた。普通に考えれば、あんな重装備の女性が転んだらだれか一人ぐらいは手を貸しそうなもんだが、通り往く人々は皆、彼女がまるで見えていないかの様に振舞い、無視して隣を通り過ぎてゆく。
「世も末だな…。いや、この街ならある意味普通なのか」
アタシは小さくため息をつくと本来の目的を一端隅に置いて、転んでる彼女に駆け寄り、彼女の物であろう『ぽっくり下駄』を拾ってから、彼女に手をかした。
「大丈夫ですか?怪我の方は?」
「あらまぁ、おおきに。近頃珍しい優しい人どすなぁ。助かりましたぁ」
花魁の様な彼女は自然な笑顔で品のある小さなお辞儀をする。彼女様子を見るに足も怪我まではいっておらず、本当に軽く転んだだけの様であった。とりあえずここでは色々と邪魔になるので、アタシは彼女を近くの人が少ない木製ベンチに誘導しようと思った。
「このくらい、普通の事ですよ。…立てますか?手を貸しますよ」
「フフフ…素敵なお人。ほな、お言葉に甘えて」
彼女はこの公園の桜の様に妖しくそう言うと、アタシの手を取りスッと立ちあがる。
アタシは立った彼女に『ぽっくり下駄』を履かせてあげた後、そのまま彼女の手を取り、近く木製ベンチまで誘導した。
この街の連中は本当にどうしようもないな。困ってる女性一人に対して、手の一つも貸さない何て…。まるで周りにいる全員が彼女は存在しないみたいに振舞っていたな…。
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