Act.6 甲骸のハサン 4
「ガアァアァアアアァアァ!!!!!!」
アタシは
「百鬼…葬死流奥…義…『
アタシの手から流れ落ちる赤黒い『穢血』は膜状の風呂敷となって幽奈を優しく包み込み、柔らかい球状となる。これで安心だ…。落下の衝撃と外傷は全て、『
…じゃぁアタシは一体どうするんだって?…知らないし、興味も無いよ、そんな事…。
「さよなら幽奈。アタシはどうやらここまでみたいだ…『師匠』と『妖廼』によろしく言っといてくれ」
そしてアタシは心の中でここまで頑張って来た彼にも別れの挨拶をした。
「…それにごめんね『NiNJA666』。今までホントありがとね…アタシもすぐそっちに…」
別れを告げ、物理法則に乗っ取ったアタシと幽奈は、それぞれ別の方角に飛んで行った。あの方角…幽奈は多分、『
一方アタシは…若竹が多いな…へへっ、こいつは笑える。
「復讐の女剣士『
…………………………………………………………………………………………………
気づけばアタシは若竹の多い竹林の中で仰向けに倒れていた。幸か不幸か、即死はしなかったらしい。残念なのはさっき皮肉で言ったとおりに、タケノコがアタシの脇腹を貫いていたことだった。ついでに全身打ち身で右足は逆方向にひしゃげていて。さらには『炮烙』の刃を強く握り過ぎた右手の切り傷は骨にまで達しており、ギリギリ繋がっている状態だった。
「あ、ぐぁあぁっく…あああぁぁ」
全身を駆け巡る激しい痛みに悶え苦しみのたうち回っていると、視界に移ったのはアタシの近くのベンチに座り、こちらをじっと見つめる『ハサン』の姿であった…。
「ぐっ…殺れよ…。一思いに…」
「…我が仇ながら天晴れであった『
「死人の、くっ…手向けにし…ては月並みだな…。『幽奈』には手を…出すなよ…」
「ハハっ血穢殿。手を出すも何も、拙者こそ既に死兵。いやはや、幽奈殿はお強いですな、ハっハっハっ!!!」
ハサンがそう言い終えた瞬間、奴の凍傷の様に黒ずんでいた左腕が、氷の結晶の様に粉々に砕け散る。
「!!?何が…あった?」
「やはり何も覚えてはおらぬで御座るか!!ハっハっハっ!その方が良かろう!!!あの恐ろしい『虚流の死剣』を見ては、夜もおちおち眠れまい!!」
「…にしても血穢殿。そなた本当に良き『
「…長生きしてるのに知らねぇのか?どんなものにも心が宿るんだよ…。大切にしてれば猶更な」
「………これは一本取られましたな。…これではあの世で『宝仙』に笑われそうだ」
ハサンの身体がさらに冷たくなって崩れていく…。
「…お前は何で千尋に還るのを拒んだ?…いや、無粋だな。聞かなかった事にしてくれ」
「…拙者は別に還りたくない訳では無いのでござるよ、血穢殿」
「拙者はただ、『千尋様』に王たる資質を問うたに過ぎぬのです」
「人の運命をも支配し、そのすべてを背負うだけの責…そのお覚悟を…」
「しかし、拙者ごときがそれを推し量ること自体が罪、そしてこの痛みこそがその罰。そうでありましょう?我が主であり、我が女王、『
「…そうだねハサン。でも…もう苦しまなくてもいいよ?あとは全部私に任せてね。…じゃぁお休みなさい『甲骸のハサン』…良い夢を…」
突如この場の…ハサンの背後に現れた『
「!!?それがお前の真名か『
「こんばんわ…フフっというかさっきぶりだね『血穢』。…酷い大怪我だね、それ」
突如現れた『
アタシの患部の傷は、「ジューッ」と肉を焼く様な音を立て、赤黒い煙をあげながら、みるみる内に治っていった。
「くっ、何しやがる!」
「いいからじっとしてなよ『血穢』。…貴方はこんなとこで死んではいけない」
「幽奈との約束もあるしね。…とにかくありがとう。ハサンを追い込んでくれて」
「アタシは何もしてない。アタシが気絶してる間、一体何があったんだ?それにお前も」
「………。『血穢』、貴方のおかげだよ。貴方の『覚悟』が私に流れる『蒼の浄血』を目覚めさせた」
「それに質問の答えはいずれすぐ分かるよ…。とにかく『血穢』。私はね…貴方も私の中に『還す』って決めたんだ。…もう迷わない」
さっきから何を言ってるんだ?…少なくと分かるのは『
「フフ…『蒼の浄血』に目覚めたばかりのアタシ一人では、流石に『カミラ』と『ヴァニタス』そして『彼』とやり合うには分が悪すぎるからね?」
「…お前!?心の中を!!?」
「ごめんね『血穢』♪傷を治すついでに色々仕込んじゃったから」
「!?クソっ!!アタシはお前の玩具じゃ…!!」
『蒼の浄血』のおかげで傷が治り、体力もあらかた回復したアタシは、起き上がるのと同時に、『
「フフ、この無礼者♪…『跪きなさい!蛭蟲 血穢!!』」
アタシの身体はアタシの意思に反し言う事聞かず、前のめりに倒れ込んでそのままひれ伏す姿勢を取った。この状態で姿勢を固定され、アタシは身動きが取れなくなった。
「この!!アタシの体が!!なんで!?」
「アハハっ!すごい!こんなに効くんだ!」
意思に反して、『
「…私はもう『神薙 千尋』では無くて、夜兎の始祖である『吸血姫、
「…。そろそろ「幽奈』達が来るか…じゃあね『血穢』、おやすみなさい。また会いましょう。」
「まて!!」
アタシの静止を聞かず、『
暗闇の竹林の中、静寂の中でアタシは一人取り残された。
さっきまで高速道路で『ハサン』と死闘繰り広げていたばかりなのに、急激な変化を伴う展開に頭の理解が追い付かない…。
クソっ!!アタシが気絶してる間に、一体なにがあったていうんだ…!?
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