Act.5 崩爛亭・老仙

 あれから二週間後の2月29日、時刻は午後16時ごろ。現在アタシは相棒である改造バイク『KaWaSaKi NiNJA666』に跨って街中を疾走している。

 アタシ専用にチューンアップしたは、機動性と快適性の両天秤バランスを限界まで精査してあり、緊急時のチェイスゲーム鬼ごっこも、快適なロングドライブも両対応した特殊設計仕様の唯一無二、の完全オーダーメイド品だ。

 本来は2気筒仕様のこのシリーズNiNJAを設計者に無理言って4気筒仕様に変えて貰う事で聞き心地の良い重低音のロマンは当然抑えつつ、それに伴って近年の『終末技術革新』《シンギュラリティ》におけるエンジンの最大効率化を活かした非売品の最先端バイクエンジン。通称『ATOMiC HEART』も搭載  

 最高速度約350km/hを可能にしながらも、シュチュエーションにもよるが50km/Lの超高効率燃費を実現している。

 さらにはアタシの仕事道具V狩りの装備を乗せるスペースもちゃんと搭載してあり『炮烙』を『仮鞘』やを差しておく為のホルスターも装備。仕舞いにはそもそもバイクでありながら、最先端AIを使った完全自動運転システムも搭載し、もはや『』その設計思想はまさに『設計者ロマンの血塊』と言えるだろう。


 そもそも非売品だが価格としてはするであろうアタシの相棒は『師匠』からのとして受け取ったものだ。英雄とは言え、彼女は一体どこまで影響力が高いのだろう?


 アタシはそんな相棒NiNJA666をかっ飛ばしながら、『幽奈』を、に行っている。

 本来、彼女を迎えに行くはずの『幽奈の使用人』が突然休養を取ることになった為、代わりにアタシが迎えに行くように『霊茄』さんに頼まれたのだ。

 ちなみに運賃料は払うと霊茄さん言われたが、「友を迎えに行くだけなので」と予め断っておいた。


…………………………………………………………………………………………………


 時刻は午後16時30分。学校に着いたアタシは、校門前に相棒NiNJA666を停め、にもたれながら携帯水煙草vapeを吹かした。


 を口から吐きながら校舎を見上げると、如何にも金がかかったまるで現代美術館の様なおしゃれな校舎で、まさに上級国民しか通えない様な場所だと瞬時にわかる。

 

 …があった為かスクールセキュリティがアタシに近づいてきたが、『狩人証』を適当に見せて追い返した。まぁ無理もないか。が、校舎前に派手な朱色の大型バイクで乗り付き煙草を吹かしてるとなると、夜社会の不審者チンピラにしか見えないもんな…。いや、実際そうか。


 そんなアタシの姿を、帰り際や校舎の窓際の女子生徒がキャッキャしながらチラチラ見てくるので、何だか腹がたったアタシはの意味を込め、彼女らに中指を立てておいた。

 …何故か黄色い声がさらにそのボリュームを増したが、一体どうなってんだこいつらは。


 「見せモンじゃねぇぞ、バカ垂れが…」


 早くこの場を去りたくてイライラしていると、『幽奈』が俯き、肩を震わせながら近づいてくるのが見える。校門まで俯きながら早歩きで歩く彼女を、他の生徒がコソコソ話をしながら見てるあたり、多分いじめられてるのだろう。…金持ちも大変だな。

 

 足を踏み鳴らす様にアタシの前に来た幽奈は、アタシが差し出した幽奈用のヘルメットを受け取ると、震えながら一言。


「早く出しなさい…」


 とだけ言った。せっかく迎えに来たのに粗野な扱いを受けてカチンと来たアタシは


「ヘイヘイ。仰せのままに、『お姫様』」


 と適当に返すと、先ほどの女子生徒達が大声で騒ぎ立て始めた。ホント何なんだこいつら…。

 大きくため息をつき、ヘルメットを幽奈を相棒NiNJA666背中にタンデムシート乗せ、エンジンを思いっきり吹かせてからアタシ達は学校を後にした…。


「…あのさ、言いにくい話だとは思うけどよ、お前学校で虐められてるならアタシに言えよ。アタシがちょっと脅かして黙らせてや…」


 ニケツ走行中、アタシがそう言いかけたところで、後ろからヘルメット越しに思いきり頭をぶん殴られた。



























ダァー!!!ホントに何なんだよ金持ちってやつは!!?

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