幕間 ようこそ龍劫禍街へ…。
けたたましい轟音を上げながら、相棒と共に『龍劫禍街』を駆け抜ける。交通法?こんな状況じゃ、もちろんそんなものは守らないし、まずそもそもこの街じゃ殆どそんなもの機能していない。
…そうだね。目的地に着くまでこの街…いやこの世界ついて少し説明しとこうか。
この星の歴史の教科書が本当に真実を伝えていたとしたら、いまからおよそ500年前、当時世界経済の中心であった、とある超大国の東海岸で、突如飛来した白鯨の様な見た目の巨大な異形が『座礁』したのをきっかけに、この世界の様相は一変したといわれている。
当時の軍隊や科学者、宗教家までもがその遺骸に群がりそれを解体しつくした…。
遺骸からとれる体液には無尽蔵のエネルギーが抽出できる仕組みがあり、それを解明したのは科学では無く、この星に古くから伝わる古代黒魔術の秘法によりそれが実現できたそうだ。
それまでインチキや詐欺と罵られた古代黒魔術が再び世界で注目され、瞬く間に世界のパワーバランスは崩壊。政界には再び、堂々と宗教者が紛れ込み、『神代の時代の再来と。』当時のメディアで報じられたらしい。
新たな革新的技術と資源の奪い合い、さらには新しい秩序の登場や、それらを内包した覇権争いで世界全体が再び戦火にのまれ、非常に多くの死者を出したのはそうなのだが、本当に問題だったのはそれ意外のことだった…。
夜の時間、深い闇に帳が降りると超常的な異形が発生し、人々を喰らいつくす事。
人々は呪いの様なあらゆる不治の病にかかり、時折、死人までもが蘇り徘徊しだす事。遺骸を用いた技術や発明などが自ら意思を持ち、世界を惑わせ狂わせていった事。
欲に誘発された人類を嘲笑い、愉悦に浸るそれらのおかげで世界人口は瞬く間にその数を減らし、現在は当時と比べ人口が10分の1にまで数を減らしたという。
…この街を輿こしたといわれる先人は先の遺骸(次からは便宜上『龍』と呼ばせてもらうよ…。)の一部をこの『極東』に持ち帰り、古代魔術を行使し、巨大な結界を張ることで、この土地を『人の住める地域』として確保したと伝えられている。
その聖人は黒衣を纏う恐ろしく均整のとれた美しい容貌の西洋人女性であり、『月のナイア』と名乗り、この街を守るために生涯戦い続けた尼僧で、死後もこの街を守り続けるために即身仏となり、現在アタシが向かっている、御悪巣地区の御悪巣観音寺に奉納され、今も祀られている。
しかし彼女の人類への希望や祈りは虚しく、今を生きる人々は、自らの欲やエゴに溺れ、享楽と退廃を極める事で、再び自滅への道をまっすぐに行進している…。
ちなみに彼女がアタシの剣の師匠だ………。
ん?状況がオカシクないかって…?あぁアタシだって信じたくないよ…。
あんな悪霊に師事して、こき使われてるって現実に…。
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