血煙壊道~BLOODLiNE~
儚之シーシャ
第一章 『血脈葬承』~UNDERSTANDiNG~
Act.1 血の穢れ
おまえ自身の血管の中に、腐って泡を立てている沼の血が流れているのではないか。だからお前は醜く蛙の鳴き声をあげ、誹謗ばかりしているのだ。
フリードリヒ・ニーチェ
「…永遠に寝るものは死せるにあらず、奇しき永劫ののちには死もまた死すべし…」
今しがた心の臓腑を貫いた
蝙蝠の様であり、狼の様でもあり、深海生物の様でもあった形容しがたい
「辞世の句のつもりか?薄汚ぇ化け物の分際で人間の真似事しやがって…気持ち悪りぃ」
地獄蝶の様な舞い散る灰に変わりつつある
刀を引き抜き、流れ下段の残心からの柄を叩く古流の転柄血振を行う。精神的な不浄を払う、古く形骸化した習わしの意味も、もちろんあるのだが、それ以上にこの所作を怠ると、
昔、ケツが青かった頃に一度やらかして、今現在も痛い目を見ているのだが…まぁそれは今度に話すとしよう。
アタシの名前は『
唯一の家族である義父を弄び、惨たらしく殺した
今は街の郊外にある、とある廃寺付近の森林の中、アタシは
アタシは周りに脅威の気配を感じないのを確認して、アタシは血振を済ませた妖刀を仕込み杖の鞘に納め、一息ついた。ポケットから
今夜の
現在、時刻として、3時半過ぎ…。夜明けまではまだ少しあるが、今夜はもう帰ろう。今夜だけで6件、狩った数で言えば十数体はいたかな?さすがに疲れた。これ以上の狩りはリスクが高くなる。
携帯端末を取り出し、組合の専用アプリを開き、最低限の報告をしようとした矢先、その端末がけたたましくその身を震わせた。
「…ったく、タイミングっ…!」
嫌な予感がするのは当然としても、電話に出ないわけにもいかず、苛立ちながら、電話先を確認する。『灯月の家』、アタシの所属する異形狩り専門の組合。その中でアタシは特に吸血鬼に特化した部門に所属し、活動している。
「なんだよ。残業のお願いか!?」
アタシは苛立ちを隠さぬまま気だるげに電話に出た。
「血穢さん!!すいません!!今すぐ
今すぐ血穢さんを出せと言ってて…キャアァァ!!」
「おい!!大丈夫か!?…おい!?」
返事は無く、電話はそこで切れた。悪い予感は斜め上の方向で的中した、今すぐ支部に戻らねぇと。
この現場の後片付けは後ろで待機してた公権力の奴らに押し付けるか。
そんな事を考えていると、後ろから聞きなれた声がかかる。
「何かあったみてぇだな。ここの後片づけはやっといてやるから、早く行きな。」
「
義父の後輩で、現在は公安の秘密警察を担っている
「今更、変にかしこまるな。あと公安に刑事はいねぇよ」
「すいません、恩に着ます。この借りはすぐにでも」
「…いいから早く行け」
彼に会釈し急ぎ早にその場を後にする。
いつもいつも世話になりっぱなしだな…今度埋め合わせにご飯でも誘わないと…。
そんな事を考えながら駐車場に向かい、素早く荷物を纏め、アタシの最高の相棒である、深紅の血の様な鮮やかな
アタシはエンジンを思いきり吹かし、アクセル全開で飛び出す、峠を相棒と共に全速力で駆け、享楽と陰惨を煮詰めた、吐き気を催す汚泥の様な最低で最高の街アタシの故郷『
「…にしても私の事を知ってる奴?これはいわゆるビンゴってやつかもなぁ。支部の皆には悪りぃがゾクゾクしてきたぜ!!」
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