第6話

『それでは転移しますよ。ラピス様』


 そういあいあちゃんから告げられた。

 うん、そろそろストファンの世界に行って遊びたいからねー。


 早く早く!


『…私に掴まっていてください。───準備はいいですね?【空間転移ディジョンテレポート】』


 身体が軽い浮遊感に包まれる。

 エレベーターに乗った時みたいな感じだなぁ…


「はぇ……」


 ……………もう着いていたことに気づかなかった。

 そして、いきなり頭に音が響いた。


『失礼ながら心を読ませていただいたところ、クエストが現れたのではないでしょうか』


 もう心が読まれてるのは慣れた。

 いや、慣れさせられた。


 ────クエストか。

 クエストを表示、っと。


 えーと、なになに……あ、いあいあちゃんが覗き込んでくる。気になるんだね。


【ストーリークエスト:吸血鬼の里】

 ※種族ストーリークエストなので拒否は出来ません。ご了承ください。

 クエスト内容1:他の吸血鬼に会いに行こう!

 ──────


『他の吸血鬼に会いに行こう…ですか』


 いあいあちゃんが少し不安そうな顔をしている…と思ったらすぐさま表情を変えて無表情になった。


 別に変えなくてもいいのに…


 いあいあちゃんの心配は杞憂かな。

 だって、クエストには吸血鬼の里って書いてある。


 ということは、少なくとも2人以上は吸血鬼がいるっていうことだ。


 それに、クエスト内容には"どの吸血鬼"とは書いていない。


 てことは、吸血鬼に会えさえすればなんでもいいんだよね!?


 ───話はずれるが。

 初期装備、結構いいものかも知れない。


 黒色のパーカーに、黒色のスカンツ。さらには靴下───いや、ニーソか?まで黒色。極めつけには靴まで黒だ。

 ニーソは運営の趣味なのかな…?


 で、だ。この全身黒コーデにお嬢様っぽい先端くるくるツインテを組み合わせると────


 なんていうか、ラフな装いをしてるお嬢様みたいだねー。


 けどさー、本当は吸血鬼に会いにいってストーリークエストを進めたいんだけど───やることがある。とってもとっても大事な。


「いあいあちゃん、ストーリークエストは後回し。先に日に当たりに行くよ」


『………なるほど。【自動HP回復】を育てなければ外に出れませんからね……わかりました』


 今は多分、里の入口にいると思うんだよね。

 だから、ここから腕だけでも出せば───


「いてててててっ!!」


 《【自動HP回復】のスキルレベルが4になりました》


 思わず腕を引っ込めた。

 痛い。めっちゃ痛い。残りHP2だ。

 0.5秒ぐらいだけだよ?今出したの…お日様つよし。


『太陽は吸血鬼にとって天敵ですよ。アイテムボックスに初心者用ポーションが入っているのでご使用ください』


 ありがとういあいあちゃん…

 言われた通りにアイテムボックスを開くと、初心者用HPポーションが15個と、初心者用MPポーションが15個入っていた。


 とりあえず性能を見ようか。

【鑑定】っと。


 ◇初心者用HP回復ポーション◇

 初心者の為に作られたHP回復ポーション。

 回復量は20。


 ◇初心者用MPポーション◇

 初心者のために作られたMP回復ポーション。

 回復量は20。


 ふむ…とりあえずHPポーション使えば全開か。


 取り出してっと。


「……っ!味がしない!」


『そういうものですから我慢して頂けると…』


 むむむ…これどうにかならない?残り半分あるけど飲める気がしない…

 味がするもの…気軽に出せるもの…?

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