第59話 ごめん……

 「クソ!どこだ星北!!!」


 俺は、あの手紙を見て急いで走り出した。

 あの手紙の内容、今までの星北の言動、行動から予測するに、星北は死ぬつもりだ。


 これが、俺の勘違いでただ単に大袈裟であることをひたすらに願いたい。


 あの手紙には最後の星北の願いが書いてあった。


 ————私を見つけて———————


 それが、星北の願い。

 最後の…願い…いや、最後にはさせない。


 俺は、学校を出てまず星北の家に向かった。

 星北の家は鍵がかかっておらず、中に簡単に入ることができた。

 

 予測はしていたが、家の中には星北はいなかった。

 

 机の上にはくしゃくしゃに乱雑に丸められた紙が複数置いてあった。

 おそらくは、図書室に置いてあった手紙の失敗したものだろう。


 これを見るに、相当思い詰めていたのだろう。

 星北がそう思い詰めている理由は何となく予測はつく。

 おそらく…星北のそう思い詰めるのは…孤独だろう…


 今はそんなことを考えている場合じゃない。

 一刻も早く、星北…アイツを見つけ出さなければ…手遅れかなってしまう。


 俺は、星北の家を飛び出して商店街に向かって走った。その後は、公園…住宅街…川道…


 それから俺は、闇雲に走り回った。

 

 

 「ハァ…ハァ……」


 かれこれ3時間ほど、走り探した。

 だが、星北の姿は見つけられなかった。

 辺りはすっかりと暗く、夜になってしまったようだ。


 「クソ…どこだよ…星北……」


 俺は、一旦星北の家に戻った。

 もしかしたら、星北が戻ってきてかもしれないと甘い期待を抱いていたが、戻ってきてはいなかった。


 「ハァ…ハァ……」


 俺はついに限界を迎えて、星北のベットに座り込んだ。

 足が痛い…岩のように重かった。

 何時間も走り回ったのだから、当然だ。


 手がかりは何も無い。

 ヒントも、情報も無い。

 そんな状況、条件で星北を探し出すなんて無理ゲーすぎる。

 不可能だ。


 「どこだよ…星北…」

 

 一体、星北はどこにいるのだろうか…

 どこを探せばいいのだろうか…


 いや、もう手遅れかもしれない。

 もう数時間も経ってしまっている。


 間に合わなかった…のか?

 

 俺には星北は見つけられない。

 探し出せない…見つけてやることができなかった…


 ごめん…星北…俺にはお前を救い出すことはできなかった…

 俺は…結局…救えない…救うことができなかった…

 ごめん………ごめん……


 俺は、そう心に呟き爪が刺さるぐらいに拳を握りしめた。


 


 ◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇


 「お母さん…なんで…」


 「……言った通りよ…あなたにはもうこの家を出てってもらうわ」


 「なんで!?何か私が悪ことした?!お母さんに酷いことしちゃった!?なら謝るから!家を出てけなんて…」


 「………私はあなたを愛してないのよ……」


 「えっ……」


 「こうして、何年もあなたを育ててはきてみたけれど…結局ここまで育てたのはただの世間体にすぎなかった…今まで私はあなたに愛など抱かなかった、持てなかった…私にはあなたを愛せなかった…それにあなたはあの浮気野郎と偶然にも奇跡的にできてしまった子なの………はぁ…ちゃんと避妊はしていたのにねぇ…今でも後悔しているわ」

 

 「…じ…………じゃあ……私は…………」


 「……本来、存在してなかったはずなのよ」


 「……あっ………そ……そう…なんだ……」


 私は大泣きした。

 目の前が見えなくなるくらい泣いた。

 

 私は……存在する…生きてる意味があるのか………?


 「じゃあ、さようなら」


 母は、後ろを向いて歩き出した。


 「待って!待って!お母さん!!!」


 急に母との距離が遠くなる。



 「私を…置いてかないで……1人に……しないで………………1人は…………もう……嫌…」






 「誰か私を!!」


 私はそう言って手を伸ばして起きた。

 

 「あれ…私…そっか…寝ちゃってたのか…」


 空はとっくに暗く、もう夜だとすぐにわかった。あれから、数時間程寝てしまったらしい。


 寝ていた間見たのは、悲しい記憶だった。

 思い出したくもない、記憶の奥にしまったはずの記憶だった。


 そんな夢を見たせいか、あの時と同じように私は泣いていた。


 あの時から……ずっと前から、いや最初から私は1人だったと改めて思い知った。


 充電が切れかけたスマホで時刻を確認するともう23時半を回るところだった。

 

 私は周りを見渡す。

 暗い、海辺……私以外に人はいない。

 私だけしかいなかった。


 「やっぱりか…………」


 彼は来なかった。私を見つけ出してはくれなかった。

 当然だ。

 彼にとって私なんか何者でもない。

 大事な人でもなければ友達でもない。

 わざわざ、そんな私なんかを探してくれるはずもない。


 わかってはいた。そう思っていた。


 ……でも…………それでも少しだけ期待していた自分がいた。


 もしかしたら私を見つけ出してくれるかもしれない…私を探し出してくれるなんて夢物語を願っていた。


 だけど、現実は悲惨であり残酷だった。


 これ以上、彼を待っても意味はない。

 だって、彼は来ないから。

 彼は私を見つけ出してはくれないから…


 別にいいさ…構わない…だって、私は元から…最初からずっと…ずっと…ずっと…ずっと


 —————1人ぼっちだった———————


 悲しくなんて…寂しくなんて………………


 

 決心がついた…


 私は、真っ暗でまるで闇のような海に歩みを進めた。



—————————————————————

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2024年12月25日 00:04

俺の陰キャライフが美少女たちに破壊される話 あんホイップ @anhoippu

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