第57話 私を……
次の日。金曜日である。
朝、早朝、俺はいつも通りまだ誰もいない教室で1人机の椅子に座っていた。
金曜日は曜日の中でも好きな曜日な方だ。
なぜなら、明日から休みだからだ。
その前日、休みの前日はまだやる気がでる。
明日からの休みのために、頑張ろうと思うのだ。なぜ、5日間も頑張ったのに休みが2日しかないこの理不尽さには毎度腹が立つ。
とはいえ今日で、やっと地獄から解放される。
図書委員のお手伝いも本日で終了だ。
はぁ…長かったなぁ…
星北に関しては、図書委員の手伝い以外でもいろいろとしてやった。
例えば看病とかね。
本を取りに来てもらった恩を返すためだったけど、逆に恩が溢れているのでは?
トータル的に俺の方が星北に対していろいろと恩を与えている気がするけれど…
「陰田くん、おはよ!」
そんなことを考えていると清水が、元気そうに言って隣の席に座った。
「おはよ…」
相変わらず清水は登校するのが早い。
「聞いたよ〜昨日、図書室は大繁盛だったんでしょ?!」
「ああ、人が予想以上に沢山来たよ」
昨日は、図書室に人が沢山来て大変だった。
大繁盛、大振舞いだ。
「やっぱり、あのチラシのおかげなんじゃない?」
チラシとは図書室にあるおすすめの本を載せた宣伝用のチラシだ。
それを、昨日の朝に配ったのだ。
まるで、ティッシュ配りのアルバイトのように。
「そうかもなぁ…やっぱ宣伝ってすごい効果があるだな…」
正直、宣伝というものを甘く見ていた。舐めていた。ネット動画の広告など見ても、こんなん宣伝して意味あんのかよ…と思っていたが多分効果はあるのだろう。
まあ、あのチラシの完成度の高さのおかげだと思うけれど。
小西のおかげだ。
「今日の昼休みも図書委員のお手伝い?」
「ああ…残念なことにな」
「そっか…」
清水は残念そうだった。
おそらくだが、俺と一緒に昼飯でもと企んでいたのだろう。
「はぁ…今日は一緒に昼飯を食べるのは無理だけど来週は大丈夫だ…だから来週な…」
「本当!じゃあ、来週ね!」
清水は一気に明るくなった。
面倒だけど…一生そう言われるのも釈だし、仕方ない。
来週からは、飯だけは付き合ってあげよう。
昼休み。
俺はいつも通り図書室で、図書委員の手伝いをしていた。
主な仕事は、本の貸し出し受付だ。
「しかし…今日は利用者が少ないな…」
小林は頭をポリポリと掻いて言う。
今のところ今日は昨日に比べて利用者は圧倒的に少ない。だけど、利用者が誰もいないよりはマシだ。
以前のような利用者ゼロではない。
「まあ、借りに来る人がいるだけいいだろ」
「それは、そうだけど…」
利用者以前に一つだけ気がかりなことがあった。それは、星北の姿がないことだ。
「なあ、星北さんは今日は来ないのか?」
少し暇になった時、小林が俺に聞いてきた。
「さあな…何の連絡もない…」
今日休むとも、メールも電話もない。
休むなら前みたいに電話をかけてくるはずだと思うが…
「ま…また、体調が悪いのかな…?」
小西が心配そうに言った。
「まあ、可能性はあるな…」
また、調子こいて治りかけの風邪でも拗らせた可能性がある。
一応、電話をかけてみるか…
決して少し心配だから…じゃないぞ?
「プルルルル…」
でなかった。何度もかけ直しても出ることは無かった。
ったく、星北のやつ休むなら連絡ぐらいしろよな…体調が悪すぎて寝ている可能性も無きにしも非ず。
待てよ…星北が休み?ってことは、あのお願いも自動的に無しになるのでは?
それなら、その方がいい。
ラッキーだ。お願いを叶える必要もなくこの奴隷制約期間が終わればこっちのもんだ。
「何、ニヤついてんだ?」
小林は俺を見て少し気味悪そうに言う。
おっと、思わず笑みが溢れてしまっていた。
「いや、別に何でもない」
俺は、思わず表情を直した。
「てか、お前今日で最後なんだな…」
「ああ、今日でオサラバだぜ」
本日を持って俺の図書委員の手伝いは幕を閉じる。振り返ると長かったようで短…くはないかった。
「い…今まで手伝ってくれて…あっ…あっ…ありがとう…」
小西が気恥ずかしそうに言った。
「ああ、こちらこそチラシとかいろいろありがとな」
こうして、俺の最後の図書委員の仕事は終わりを告げた。
5時間目の6時間目の狭間の10分休み。
結局その日の昼休みには星北が来ることは無かった。かと言って、連絡が来ることもなかった。
あの星北が無断でサボるとは珍しいな。
委員の仕事を無断欠席するようなやつだとは思えないけと。
普段アイツは真面目だったからたまにはサボりたかったのかな。
昨日も忙しかったし。
まあ、たまにサボることもいいと思う。
リフレッシュは大切だ。
ただの体調不良かもしれないし。
そう思いながら、次の6時間目の授業の用意をしいる時だった。
ピロン♪と一件のメールが来た。
星北からだった。
アイツ…ようやく連絡を…
そこには…「本日、放課後、図書室に必ず1人で来て下さい」と。
……このメールの文を見るにアイツ、もしかして学校には来ているかもな…てことは、星北のお願いを回避できないって事だ。クソ!このままやり過ごすつもりだったのに!
俺は軽く勉強机を台パンした。
にしても…1人で来いとはなんだろう?
もしかして…愛の…告白…?な訳ないな。
星北に関してそんなこと神に誓ってないと言い切れる。
星北にそんな乙女心があるとは思えない。
どうせ、またお喋りしようとかだろう。
いいぜ、今日も付き合ってやるよ…なぜなら明日から休みだからだ!
まあ、ひとまず昼休みに来なかった訳を聞こう。
そして、俺は星北に呼ばれたとおり放課後に1人で図書室に向かった。
当たり前に図書室には誰もいなかった。
因みに今日は放課後に図書委員の仕事はない。
星北はまだ来ていないのだろうか?
それとも、またお得意の「やあ」と言って突然後ろから現れるのだろうか?
どのみち、俺が驚くことはない。
残念だったな!
とりあえず星北が来るまで(現れるまで)椅子に座って本(ラノベ)を読んで待つことにした。
「………えっ?!」
それから、気づけば30分ほども経過していた。改めて本とは恐ろしい…こう少し読んだだけなのにこんなに時間が過ぎ去るなんて…
って、そんなことより星北は?
一向に星北は来ない。
星北が呼んだくせに来るのが遅すぎやしないか?それとも、まさか忘れてもう帰ったとか?
俺は少し腹が立って図書室を1人でに見渡した。もしかしたら星北が隠れているかもしれない…普通に探しても駄目だ。もっとしゃがんだり、ジャンプしたり…って…
「うん…?」
ジャンプして見渡した時だった。
本棚の上…火曜日に星北が座って本を読んでいた所…紙が一枚折り畳まって置いてあった。
俺はその紙を本棚から取り、少しシワが目立つ二つ折りの紙を開いた。
サイズ的に、手紙だろうか?
そこには…
やあ。君のことだ私が来なくて腹が立てた時にようやく見つけたことと思う。そんなことはさておき、私の最後の願いを書く。この願いは無理をする必要はない。無視しても構わない。放棄してもいい。
でも
もし、願いを聞いてくれるなら
私を見つけて
俺はこの手紙の意味を全て理解した。
今までの星北の言動、行動…全てが繋がった。
「………クソ!」
俺は、星北を見つけるために走り出した。
一刻も早く、星北を見つけ出さなければならない…じゃないと…
「……星北……絶対に…馬鹿なことはするなよ!!」
待ってろ…俺がお前を見つけ出してやる
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