第49話 スーパーマン
「フー…」
俺は、体の力を抜くように息を吐いた。
看病というものはなかなか疲労がたまるものだ。骨が折れる。
大したことはしていないのだが、体は満身創痍だった。
まさか、俺も風邪に?
星北のがうっつた?
そう心配に思い、一応体温計で熱を測ってみた。
熱は35.6℃…ひっく!…低すぎる。
低すぎて、ドン引きするレベルだ。
これほど低くては逆に心配になる。
低体温なのだろうか…?
まあ、こんな俺の心配事はどうでもいいので幕引きとしよう。
まあ、でも熱はないことはわかった…
ただ単に疲れているだけだ。
俺は、星北のおでこに当ててあるタオルを水で絞り直す。
ベットで眠る星北は、薬を飲んだおかげか大分落ち着いた様子だ。
呼吸も今は落ち着いている。
やっぱ、薬って最強なんだな…改めて薬の偉大さを知った。
俺の的確かつ、迅速な看病のおかげでもあると思うけど。
昔俺は薬が苦くて飲めずに苦労したものだ。
お薬飲めたねというゼリーと一緒に飲もうとしても飲めなかったほどだ。
お薬飲めたねは、俺からしたらお薬飲めたためしがねーと見えてしまう。
今となっては、薬をも飲めるほどに成長した。
立派になったよ、母さん。
俺はおそらく天国にいる実の母に言った。
もしかして、地獄かも…
にしても…だ。
一つ疑問というか、違和感がある。
星北の家…明らかに、星北は1人で暮らしている。俺はそう思った。そう考えた。そう考察した。理由としては、部屋の広さだ…この部屋は明らかに一人暮らしの広さだ。
そもそも、ベットは一つしかないしな。
星北は一人暮らしをしている…と考えてもいいだろう。
なぜ?家族は?いろいろな疑問が頭に浮かび上がる。
何か、事情でもあるのだろう。
さてと、俺はこれからどうするか…
本来なら、星北から本を受け取って学校に返しに行く予定だった。
しかし、星北にどこにも行かないで言われてしまったのでそれはできない。
さすがに、病人を1人にするのはまずい。
ちょっと間ならまだしも、何時間も放置はできない。万が一があるかもしれない。
誰かが看病しなければならない。
まあ、俺以外看病する人はいないのだけど。
かといってこのままただ、黙って座っているのも退屈だ。暇だ。
俺は基本的にじっとしているのが好きではない。どちらかというと、動きたい派だ。
意外と活発なのである。
日課の筋トレでもしようか?
女の子の家で筋トレニキにでもなろうか?
さすがにそれはまずいか…
う〜ん…あっそうだ…よし、抜け出そう。
外へと駆け抜けよう。
そして俺は、星北を起こさないように慎重にそっと忍び寄る忍者のように星北の家を出た。
星北にどこにも行かないで…と言われたけどその言葉を裏切る形になってしまった。
まあ、星北が起きる前に戻れば大丈夫だろう。
もちろん、鍵は勝手に借りたけど…大丈夫だよね?何かの犯罪とかに引っかかってないよね?そう願う。
俺は、もうダッシュで未知なる道を駆け抜けた。
気分はスーパーマン。
目的地はもちろんスーパーマーケット。
スーパーに行く男…スーパーマンである。
本日2度目のスーパーに到着した俺は籠を持って、まるで今日の晩御飯を考える主婦のように食材を探し歩いた。
この時間帯は、夕暮れ前だからか主婦が多かった。
俺がスーパーにきた理由は、星北になにか飯でも作ってやろうと思ったからだ。
やはり、風邪を引いたときは少量でもいいので体いい食べ物を食べるのが大事だと思う。
栄養満点の食べ物を。美味しい料理を。
風邪の時に摂取した方がいい栄養はビタミンDやビタミンC、プロバイオティクス、プレバイオティクス、亜鉛などらしい。まあ、浅知恵程度に覚えてこう。いや、俺の場合猿知恵か。
で…何を作ろう?
やっぱり、風邪の時の食べ物といったらおかゆだろうか。
どうせなら、ただのお粥じゃなくて卵を入れたお粥にしよう。
俺は、卵を籠に入れる。
あれ?…卵の値段ってこんなに高かったっけ?俺は卵の値札を見て驚いてしまった。
俺の想像する卵の値段よりも、遥かに高い値段だったのだ。
ああ…そういえば、ネットのニュースで見た気がする。
たしか、卵が高い原因としては、ニワトリを育てるために必要な飼料の価格が大きく値上がりしているからじゃなかったっけ…?
まあ、他にも理由はあるのだろうけど。
全く…物価高の時代は大変だぜ。
仕方がないけどね。
お米は、星北の家にあったはずだ。
なので、買う必要はない。
あとは…スープとかか?
野菜を沢山いれて栄養満点スープでも作ろう。
味は…コンソメだな!
俺はキャベツ、にんじん、カブ、生姜、顆粒コンソメを籠にシュートした。
後は…食後のデザートも欲しいよね。
フルーツとかいいんじゃない?
どのフルーツがいいかは、わからかったので適当にバナナとキウイを買うことにした。
バナナを下さい…
一説によると、果物は胃に負担をかけるため、あまり適さないとか書いてあったけど見なかったことにした。
本音をいうと、フルーツは単純に俺が食べたかったのだ。
何?俺が食べたっていいじゃないか!
俺は、結構の重さのスーパーの袋を片手に星北の家に向かった。
帰りもスーパーマンのように駆け抜けたかったが、卵があるので無理だった。
ああ、スーパーマンのように空を飛べたらよかったけどなぁ。
ずるいよ、重力を無視して空を飛ぶなんて。
にしても…結構の出費となってしまった。
食材って意外と高いんだな…
普段、食品の買い物などしないために勉強になった。
俺の財布のお札たちは、まるでスーパーマンのように空に飛び立ってしまった。
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