第47話 宣伝方法

 「う〜ん…」


 放課後、俺と復活した図書委員2人と天野で話し合っている。

 どうすれば、図書室の利用者が増えるか…


 一つの提案としては、本を宣伝することだ。

 

 「でもよ〜どうやって本を宣伝するんだよ?」


 小林は怠そうに背伸びをした。

 図書委員のクセして1番やる気がない。

 やる気がないなら帰れ!と1発喝を入れたいが、本当に帰られると困るのでやめておく。


 「ち…チラシを作るとか…?」


 小西が提案する。


 「ポスターを作るのもありだよね」


 天野は賛同した。

 放課後まで、こうやって手伝ってくれるとは天野はいいやつすぎる。

 親切すぎる。お人好しすぎるのだ。

 一応言っておくが、俺が手伝ってほしいとお願いしたのは昼休みだけだ。

 本当に見た目も性格も天使そのものだ。


 「無難な宣伝方法でもやるだけやってみよう」


 やらないよりは、マシ。


 「じゃあ、ポスターとチラシを作る…ってことでいいよね皆んな?」


 全員頷く。

 全員賛成ということで。


 「問題は何の本…どういうジャンルの本を宣伝するかだね…」


 1番の悩みどころは宣伝する本だ。

 一体、どういう本がいいのだろうか…

 もちほん、面白そう!と思ってもらえるような本がいい。


 「宣伝するーつーても、一冊じゃないだろ?数冊ぐらいまとめて宣伝した方がいいんじゃね?」


 小林は鼻に手を突っ込みながら言う。


 「それは、そうだな…」


 一冊を大々的にするものいいかもしれないが、本の種類、数が多い方が万人受けしやすいと思う。

 数打ちゃ当たる戦法の方がいいだろう。


 「何の本がいいかな〜?」


 天野は首を傾ける。


 本、といってもジャンルは幅広い。果てしないのだ。

 ラノベ、物語小説、図鑑、参考書、絵本…


 この学校の図書室は本数が多い方だと思う。

 なので、様々ないろいろな本がある。

 もちろん、俺が大好きなラノベも。


 「や…やっぱり小説がいいと思う…」


 小西が提案する。


 「たしかに、小説だったらアピールポイントも書きやすいよね」


 「逆に小説以外だったら、誰も興味沸かないだろ?」


 小林は相変わらず面倒という気持ちが伝わってくるような表情だった。 


 俺も宣伝するなら小説が1番だと思う。

 

 「じゃあ、小説を宣伝するとして…皆んな、おすすめの小説とかはあるか?」


 「う〜ん…俺普段小説どころか、本なんて読んでねーからなぁ…」


 小林は、頭に両手を組んで椅子の背もたれに体を傾ける。


 「本に一切興味がないのか?」


 「ああ、正直まともに本を読んだことなんてないぜ、読んだことがあるのは教科書ぐらいだ」


 「マジか…」

 

 そんなやつが、この世に存在するなんて…

 本に興味がないくせになぜ図書委員なんて入ったんだよ…


 「あっ!なぜこんな俺が図書委員なんかやってるんだと思っただろ?」


 はい…そう思いました。

 小林は俺が思っていることをズバリ言い当てた。


 「俺が図書委員になったのはなぁ…楽だと思ったからだ!」


 「で…その楽な図書委員の仕事でさえサボると…」


 「……だってよぉ!仕事という仕事がねぇじゃねえーか!」


 「だから、今こうして皆んなで利用者が増えるように話し合っているんだろ?」


 「まあ、たしかに…」


 小林は納得したようだった。


 「わ…私はラノベしかほとんど読まない…」


 俺も小西と同じくラノベしか読まない。

 なので、小説に関しては無知に等しい。


 「ラノベでもいいんじゃない?目的としては本の面白さを知ってもらうことでしょ?」


 天野が言う。


 「天野は普段、本とか読むのか?」


 「う〜ん…多分小説、ラノベ、漫画を合わせると1000冊以上は読んでるかな…」


 「ほんとか!」


 思わず、前のセリフからダジャレを言ってしまった。


 「すごいな…」


 さすがに、俺も1000冊も読んではいない。

 正直、天野がそんなに本を読んでいるとは思わなかった。


 「そうかな〜」


 天野は照れた。


 「てか、それぞれおすすめの本を何冊が挙げてその中から宣伝するのを選ぶでいいんじゃないか?」


 小林は頭を掻きながら言った。


 「そうだな、そうするか…じゃあ、自分がおすすめする本を今、本棚から持ってきてくれ」


 もちろん、おすすめする本がこの図書室に無いと話にならないからな。


 てことで、皆それぞれ本を持ってきた。


 その中から、皆んなで話し合って宣伝する本を8冊を選んだ。


 1冊目は「え?ニート俺がチートに?」だ。

こちらは、いわゆる定番系、異世界転生チート物語だ。


 2冊目は「っても…私は宇宙人です」だ。

こちらは、宇宙人が学校生活や、青春を謳歌する物語だ。


 3冊目は「クズ達のバトルロワイヤル」だ。

こちらは、題名通り人間としてクズの登場人物達がデスゲームで死闘を繰り広げる物語だ。


 4冊目「好きだとは…言ってくれない…」だ。

こちらは、付き合いたての男女2人のウブで尊いラブストーリーだ。


 5冊目は「破滅の世界で君は笑う」だ。

こちらは、主人公が一週間後に世界が終わることを知っている女の子に出会う物語だ。


 6冊目は「愛してると言って欲しかった」だ。

こちらは、離婚した元妻と元夫のその後の物語だ。


 7冊目は「負け犬のバッター」だ。

こちらは、大した実力もないバッターが周りからの批判や暴言に耐え、抗いながら成長していく物語だ。


 8冊目は「ノリノリノリオ」だ。

こちらは、ハイテンションのノリオのコメディ学園生活の物語である。


 以上8冊を宣伝する本に決めた。


 「ほとんど、ラノベになったな…」


 「まあ、いいんじゃねーか?面白ければ問題ないっしょ」


 「じゃあ、ポスターとチラシ作りだね!」


 天野が張り切ったように言った。


 「今からやるのかぁ?」


 小林は面倒そうに言った。


 「あっ…それなら私が全部明日までにやっておくよ…」


 小西が言う。


 「本当か!なら助かるぜ!」


 小林は嬉しそうに言う。


 「待てよ、1人では大変だろ?大丈夫なのか?」


 「そうだよ、皆んなでやった方がいいんじゃない?」


 「大丈夫…私、宣伝とかチラシ作りとかは得意な方だから…それに、今まで仕事をしてなかったし、これくらい任せて」


 小西がそう言うなら申し訳ないが任せよう。


 「じゃあ、明日の朝、皆んなで協力してポスターを貼ってチラシを配ろう」


 それから、俺は真っ直ぐに自宅に帰宅…はできない。

 今日、風邪で学校を休んだために本を返せなかった星北の為に本を星北の家まで取りに行かないとならない。


 面倒で、行くのが嫌だけど仕方ない。


 俺は重い腰を上げて星北の家に向かった。

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