第45話 説得開始
翌日。
の昼休みである。
俺はいつも通りに図書室に行く前にあるところへと行った。
それは、別のクラスだ。
つまり他クラス。
そこである用事があるのだ。
「あの…ここのクラスの図書委員の人はいますかね…」
クラスの出入り口にいた人に俺は陰キャっぽくなるべく目立たない様に、下手に言った。
「ああ…図書委員ですね…ちょっと待っててください」
その人は図書委員を呼んでくれた。
親切でよかった。
それから少し待つと…
「な…なんの用…で、でですか…」
……やって来たのは、おとなしそうな見た目だった。
紫色のボサボサのロングヘアの地味な見た目をしていた。
印象としては、それこそ陰キャぽい。
「あなたは図書委員だよね?」
隣の天野が言った。
俺は一応、念の為天野と一緒に来たのだ。
何かと助けてくれると思って天野に頼んで一緒に来てもらったのだ。
「そ…そそそうだけど…」
もじもじとしていた。
あまり、人と話すのが得意ではないようだ。
不得意そう。
「…仕事してるか?」
単刀直入に聞く。
「…へっ?」
「ちゃんと図書委員の仕事をしているかと聞いているんだ」
今の現状は星北が図書委員の仕事を全てやっている。全振りされているのだ。星北いわく、他の図書委員がちゃんと仕事をしてくれないそうだ。
俺はそれが、星北のストレスの原因だと思ったのだ。例えそれが違っても図書委員なのに仕事をしないのはどうかと思う。
「そ、それは…その…」
彼女は目を逸らす。
必死に言葉を探しているようだ。
いや、言い訳か…
「してないんだな?」
俺は詰める。
「……は…い……」
彼女はようやく認めたようだ。
申し訳なさそうに俯いた。
「その…ご、ごめんなさい…」
彼女は謝った。頭を下げた。
別に謝罪が欲しいわけでもない。
それに、謝られるのは俺じゃない。
謝罪を受け取るのは星北だ。
「いや、俺は別にサボってたことを深く追求する気はない。ただ、今日からちゃんと図書委員の仕事をしてくれればいい」
それだけが、俺の望みだ。
「わ…わわかりました!」
とりあえずはわかってくれたようだ。
素直な人で良かった。
「ち…因みに、あなたは…」
「ああ…俺か?訳あって1週間図書委員の仕事を手伝っている者だ」
そう、大分深い事情がある。
と言っても本を家に忘れたただの間抜けだが。
「ププ…訳あって…ね…」
隣の天野はニヤけていた。
俺が図書委員の仕事を手伝っている訳を知っているからだ。
「新しい…図書委員?」
「違う違う、俺はあくまでお手伝い…」
この流れで自然と図書委員にでもなったら大変だ。そんなの不自然すぎる。
多分、そんなことになったら暴れる。
「じゃあ、俺たちはあとで図書室に行くから、先に行って受付をお願いできるか?」
「う…うん…わかった!」
まだ、他の図書委員の所へ行かなくてはならない。その間、誰も利用しないとは思うが、図書室の受付をやってもらおう。
「あっ…そうだ!あなたお名前は?」
天野が聞き忘れてたように聞く。
「私は…
小西は、辿々しく言った。
それから、また俺は別のクラスへと向かった。同じように説得するため。
「はぁ?嫌だよ?めんどくせーよ」
同じように図書委員である人に仕事をしっかりするように言ったのだが…
コイツはまるで話を聞かない。
金髪のいかにも仕事をサボりそうなチャラ男だった。
「てか、お前は誰なんだよ?図書委員でも無いくせに」
「…俺は諸事情により、今は図書委員の仕事を手伝っている者だ…」
図書委員のくせに仕事しないやつに言われたくはないが。
「ああ…そうですかい…で?俺は図書委員の仕事なんてやんねーぞ?」
「だけど…図書委員なんだろ?なら、しっかり図書委員の仕事をする義務があるだろ?」
「……たしかに、俺は図書委員だけどやりたくないものはしたくねーもんだろ?第一、あんなガラガラで利用する人なんていない図書室に仕事なんてないだろ?」
たしかに、この学校の図書室で本を借りる人などほぼめったにいない。
だけど、それが仕事を放棄する理由にはならない。ましては、無人販売店のように無人図書室を行っているわけでもない。
「利用者がいる、いない関係あるのか?」
「へっ?じゃあ、お前は人がいない無人島でラーメン屋を続けることができるか?」
「……それはできないけど、それとこれは別だろ」
「つまり、俺が言いたいことはな…ただ図書室で暇を過ごすのが嫌なんだよ…お前もただ突っ立っているだけの仕事は嫌だろ?」
「だけど…」
コイツは何も言っても無駄な気がする。
持論が堅く、正論を行ったところで聞き耳立てないタイプだろう。
仕方ない…
「天野からも言ってやってくれ…」
俺は隣の天野に言った。
天野は無言で頷いた。
「へっ…俺は何を言われようと無駄だぜ」
「ねえ…」
「あぁん?」
「ちゃんと、図書委員の仕事…やってほいしな…」
天野はそいつの手を握って言った。
まるで、天使のように。
その仕草は男ならば惚れてしまいそうになるぐらいの魅力、魔力が満ち溢れていた。
「え…あ、ああ…あの…」
そいつはあたふたしていた。
明らかに効いている。
まあ、男なら当然だ。
もう…一押し。
「私…きちんと仕事をやる人が…タ、イ、プ…」
天野は耳にそっと言った。
でました…
「俺!やります!図書委員の仕事!」
堕ちたな…
やっぱり天野を連れて来て正解だった。
コイツみたいな、優柔不断で自分勝手なやつには天野が効くと思ったのだ。
もちろん、事前に天野には全て話である。
いざという時は、天野に任せると。
まさか、悪魔のような、天使のような囁きで説得するとは思わなかったけど…
「よし、それでいいんだよ」
とりあえず、一年生の図書委員全員を説得することができた。
言っておくが、俺の学校は全クラスに図書委員がいるわけではない。いるクラスといないクラスがある。
なので、一年生の図書委員は3人だけなのだ。
二年生、三年生に関しては行く勇気がない。
恐れ多すぎる。
なので、今回はご勘弁願います。
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