第24話 面倒な娘
「あなた誰ですか?変質者ですか?!」
と、清水の妹?に超絶警戒された。
変質者だと思われている…勘違いされている
もし仮に彼女が防犯ブザーを所持していたなら、確実に鳴らされてただろう。
ビビビビビって…町内に鳴り響くだろう。
たしかに、今俺はニット帽を深く被りマスクで顔を隠しているので変質者に見えても仕方がない。
この姿に、サングラスを付け足すともう言い逃れができないだろう。
即通報問題だ。
むしろ、彼女の俺に対する警戒は正しい。
しっかりとした防犯対策ができている。
この子はできる子だ。しっかりしている。
「あの…俺は決して怪しいものでは…」
「嘘です!その怪しい格好では、信じられません!」
俺の弁解も虚しく散った。
そりゃ、この見た目じゃな…
「ほら!これでどうかな?怪しくはないだろ?」
俺は、ニット帽とマスクを取って言った。
顔を見せれば、怪しくはないだろう。
と、思った俺はあさはかだった。
「怪しい格好をとったというだけで、あなたのことは存じ上げませんし、私はまだあなたのことを怪しいんでますし、警戒しています!誰ですかあなた?一体なんのようですか?」
コイツは、面倒なガキ…ではなくて、ちょっと用心深い妹さんだなぁ。
まあ、当たり前か。
「俺は、清水奏のクラスメイトで…清水をここまで運んできたんだよ」
「ほほぅ…あなたは、お姉様のお友達ということ…って、お姉様?!あなたがなぜ、お姉様をおんぶしているのですか?!」
ようやく、俺が清水をおんぶしていることに気づいたようだ。
というか…コイツは姉のことをお姉様なんて言うんだな…。
どこぞのお嬢様だ?
「あなたの正体と目的がわかりました!あなたは誘拐犯ですね!それで、お姉様を誘拐した!」
「は?」
なぜそうなる?
なぜそう見えてしまうのか?
何やら変な勘違いしている。
誤解を産んでいる。
「おいおい…俺は誘拐犯じゃねーよ。というかもし、仮に俺が誘拐犯だったら、なんでわざわざ誘拐したやつを家までご丁寧に運んでくるんだよ?」
そんな誘拐犯がいたとしたら、馬鹿だ。
捕まえてくださいと言っているようなものだろ?
むしろ誘拐犯というか、愉快犯だろう。
「それは、あれでしょう!?直接交渉というものですかね?」
「誘拐犯が直接交渉とか頭悪すぎんだろ!普通は電話とかメールで取引するのが一般的だろ?」
知らんけど…
なんか、誘拐犯らしく言っちゃったけど…
「それで、望みはどうせお金でしょう?いくらですか?」
「おい、勝手に誘拐犯って決めつけたまま話を進めんなよ」
「今、私が出せるのはせいぜい2万円程度ですが…」
少な…
どうせなら、最低でも100万円…って…俺は何を!?
「何も出さなくていい…何度も言わせんな、俺は誘拐犯じゃねーよ」
「足りないと?わかりました…私が小さい頃から必死に、コツコツ貯めてきた豚の貯金箱を割りますよ…それを足せば、なんとか5万円ぐらいにはなります…」
「話を聞け…」
というか…それは純粋に重い。
小さい頃からコツコツと貯めてきたものを壊すとか…重いよ…
多分それは例え誘拐犯だったとして受け取らないだろ…
「まだ、足りませんか?全く強欲ですね…では一体あなたは何が欲しいんですか?!」
「ああ、お前には人の話を聞く力が足りてねーよ」
「ではでは、もし仮にあなたが誘拐犯ではないとして一体なぜ、どういう経緯で、どういう理由で、どういう訳で、お姉様をおんぶしてここまで運んできたのです?」
「それは…お姉様からあとで聞けばいい…」
「わたしは、今知りたいのです」
面倒くさいやつだな…
「話せば、家に入れてくれるか?」
「ええ、約束しましょう。私が信用できないというのなら、契約書にサインしてもいいですよ?なんなら、誓いのキスでもします?」
「いや…いい、信じるよ」
「あっ、因みにキスは初めてなので優しくお願いしますね!」
「しねーよ!」
というわけで、なるべくわかりやすくなるべく丁寧に、中学生でも理解できる程度にことの経緯をざっくりと大まかに説明した。
「なるほど、なるほど…大体はわかりました…理解しました…つまり、あなたはお姉様を救ってくれたヒーローということですね」
「そんな大層なもんじゃない」
「お姉様を救ってやったんだから、見返りとして、俺にいろいろとご奉仕しろということですね…?!」
「そんなことは言ってねーよ」
「それなら仕方ありませんね…では、お入りください!」
清水の妹が家に入れてくれるまで、何分かかったことか。
清水の妹がものすごく面倒ってことはわかった。
「お邪魔します」
「あっ、言っておきますと、親はいませんよ!おっと、チャンス到来ですね!」
「なんのチャンスが到来したんだ?」
俺は玄関で、靴を脱いで清水宅へ上がり込んだ。
「清水の部屋は?」
「清水の部屋と言うのならば、全てにおいて清水の部屋です」
怠いな。
面倒だな。
いちいち全部説明しないと伝わらんのかよ?
「お姉様の、お部屋は?!」
「2階です。私が案内しましょう」
俺は清水の妹に案内され2階の清水の部屋へ行くことにした。
「さてと、念願のお姉様のお部屋に入ることができますね!」
清水奏の部屋の目の前で清水の妹が煽るように言った。
「はいはい…さっさと、ドアを開けていただけますかねぇ?」
「その前に、今のお気持ちは?」
「はいはい、最高です、興奮してます、幸せです…」
「本当に変態さんですね…今になってあなたを家に入れたことを後悔してますよ…」
「変態さんでもいいから、早くドアを開けてくれ…」
「はいはい!わかりました〜では、どうぞ!変態さんのご入場です!」
清水の部屋はいかにも女の子らしい部屋だった。
たくさんのぬいぐるみが至る所に飾ってあった。
本棚には、ラノベ…はなく、参考書などほとんどが勉強に関する本だった。
さすが、本棚までも真面目だ。
俺は、ベットに優しく清水を寝かせた。
はぁ…ようやく解放された。
清水をおんぶしてここまで、約30分程度。
もう、精神も、腰も限界だ。
清水はその…重かっ…いや、質量があった…
にしても、清水は一度寝るとなかなか起きないんだな。
今のままでずっと眠り続けている。
眠り姫か…
「ムニャ、ムニャ…明日、ブラジルでね〜」
清水はまた、意味のわからない寝言を言いながら気持ちよさそうに寝ている。
羊からブラジルか…
今まで、あまり深い眠りにつけなかったのかもしれない。
やっと九頭竜坂から解放されて安堵したのだろう。
寝顔は相変わらず可愛らしかった。
「襲うチャンスですよ?」
「わっ!」
いきなり、後ろから話しかけられたので驚いてしまった。
「襲わないのですか?せっかくお姉様を襲えるチャンスというのに…?」
「襲わねーよ、俺をどこぞの変態にするな」
「そうですか、見かけによらず紳士なこと」
「さて、俺は用も済んだし、帰え…」
「しませんよ?」
「はっ?」
「帰しませんよ?」
と、清水の妹は不敵な笑みを浮かべていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます