第15話 彼氏
気づけば、昼休みに突入していた。
今日は、なぜか時間が経つのが早く感じる。
ある悩み事というか、考え事をしていたからだろうか?
さてと、昼食をどうするか…
学食はなしだな。
昨日と一昨日の件から俺は学んだ。
2度あることは3度あるとかいうらしいが、俺にその言葉は通用しない。
俺の辞書には存在しない。
今日は大人しく教室で食うか…
寂しく1人、それこそぼっち飯といこう。
「おい!蒼!学食行こうぜ!」
「いくでござるよ!蒼氏!」
陰友2人が、のこのこのとやってきた。
悪いが今日は、お前らには構ってられない。
「悪いが、今日は教室で食う」
「はぁ?なんでだよ?」
「そういう気分なんだ」
「あっ、まさか蒼氏…金欠でごさるか?」
「えっ?違うけど?」
「なんだよ、そんなことかよ!よっしゃ今日は俺が奢ってやるよ、この前に、春色をお前に全振りしたお詫びだ!」
「えっ…いやいい…」
「くぅ〜!熱い友情でござるな!そうと決まれば、早速行くでござる!」
「俺の話を聞…ってやめろ!」
クデスが無理矢理俺を抱き抱える。
俺は抵抗したが、クデスとの圧倒的なフィジカル差(体重)にはなす術がなかった。
そして、俺は不本意ながら同意なくして結局のところ学食を食べる羽目になった。
俺は腹いせに、カレーとラーメンの2つを頼んでやった。
ちょうどお腹が空いていたし、奢ると言われたなら、遠慮なくお言葉に甘えよう。
清水に奢られるのと、鬼介に奢られるのは全くもってわけが違う。
「おいおい…2つも食うのか?」
「ああ食うさ、だって奢りだろ?」
「たしかに、奢りだが…少しは遠慮しないか?」
「なんで?鬼介はお詫びのつもりなんだろ?お詫びなのにこっちが遠慮してどうすんだよ」
俺は構わず、カレーを口に運んだ。
うん、今日もうまい!
「チッ…屁理屈は一丁前だな…」
「そりゃどうも」
屁理屈も、立派な理屈だ。
「喧嘩するほど仲が良い!でごさるな!」
さてと…最近のあのトラブルが起きなければいいのだが。
「ここの席いいかな?」
はい、起きました。
お疲れ。
まあ、そうなるとは思っていたので別に驚きはしない。俺は至って冷静だった。
その声の主は天野だった。
「どうぞ」
もう、俺から言ってやった。
どうせ俺が断ろうとしても向えに座っている2人が許可するだろうし。
それに、天野なら別に構わない。
女子の中ではまだマシな方だし。
清水や、春色が来るよりよっぽどいい。
「ありがとう!」
天野は俺の隣の席に座った。
まあ、4人席で俺の隣しか空いてないので当然だが。
今度から、俺の隣の椅子を魔界にでも放り投げようかな…そうすれば座る椅子が無くなる。
天野のお盆の上の皿にはサンドイッチが乗っかっていた。
それで、足りるのか?ってぐらいの量だった。
少食なんだろうきっと。
相変わらず、陰友2人はあたふたしていた。
俺と同じく美少女に対して免疫がないからだ。
俺はなんとなくこの3日間で慣れてしまった。
今更、緊張も焦りもない。
あるのは虚無だけだ。
無関心で、無感情。
特に天野に関しては普通の友達って感じに接することができる。
1番親しい?女子の中のクラスメイトだからな。
「わぁ!陰田君二つも食べるの?」
天野は俺のお盆に乗っているカレーとラーメンを見て驚いていた。
「ああ、お腹が空いたからな」
食べ盛りの男だったら、別に珍しいことではない。
「すごいね〜私なんかそんなに食べれないよ」
「そりゃ、女子だし当たり前じゃないか?」
女子は少食…これは俺の勝手な偏見だ。
だが、清水は大盛りだったな…例外も、もちろんある。
「でも、私食べること好きだから沢山食べれるようになりたいんだよね〜」
「……太るぞ?」
「えっ!そ、それは困るな、でも食べたいし…うぅ…一体どうすれば…」
困るそぶりも可愛すぎた。
「適度に運動すれば、太らないんじゃないか?」
「た、たしかに!陰田君頭いいね!」
「普通だろ…ん?」
何やら俺に視線が向いているような…
案の定、クデスと鬼介は驚いたような目で俺を見ていた。
「どうした…?」
「いや…蒼、お前いつから天野さんとそんなに仲良くなった?」
「は?」
「そうでござるよ!一体どんな魔法を使って天野さんみたいな超絶美少女と仲良くなったでござる?一体、天野さんとはどういう関係でごさるか?」
「んと…別に普通に友達だけど…」
何を勘違いしているんだコイツらは…
すぐそうやって勘違いする。
はやとちりも大概にせい。
「フフッ、面白いね!お二人さん!」
天野は天使のような笑みを浮かべた。
その笑顔を見てしまった2人は恋に落ちたようにキョトンとしていた。
コイツら…甘すぎる…
へっぽこで、ちょろいお二人さんだ。
「あっ…あの人は…」
ふと、天野の目線が移り変わった。
俺も自然と天野目線を追いかけた。
その先は、ある数人のグループの席だった。
「あの人?」
「あの、金髪で大柄な男の人」
天野はそう言う。
確かに、数ある生徒の中で一際目立つくらいの大柄で金髪の男がいた。
席の真ん中で堂々していた。
オーラが溢れ出ているようだった。
「あの人が、清水さんの彼氏」
「なっ!?」
アイツが…清水の彼氏?
あの大柄で金髪で明らかにチャラそうというか、不良ぽいというか問題児みたいなやつが?
「意外だな、清水の彼氏だからもっと優等生だと思った」
「あの人が、
「なんとなく、柄が悪いな…」
「こら、鬼介氏!見た目で判断するのはよくないでござるよ!」
「そうだな…」
いや、あれは見た目で判断してもいいんじゃないかと思えるレベルだ。
特にアイツの目つき…睨んでいるようだ。
オートメンチキリだ。
「でも、実は見た目とは真逆でとても優しいかもよ!」
天野はそう思うだろうな。
天野は見た目で人を判断するようなやつじゃない。
「そうだといいな…」
俺は小声でそう呟いた。
「おい、もう見ない方がいいぜ…目があったら何されるかわらなねぇぞ?」
鬼介が言った。
「目があった程度で何かやばいことでも起きるとでござるか?」
「いや、誰だってジロジロ見られるのはいやだろ…」
「そうだな、鬼介の言う通りだ」
「そうだよ、皆んな早く食べないともう昼休みが終わっちゃうよ?」
「なっ!」
気づけば、昼休みが終了するまであと5分だった。
やばい!俺はカレーをまだ、半分以上残っている上にラーメンも控えているというのに。
「ところで、なんで蒼氏は伸びやすいラーメンよりカレーを先に食べたでござる?」
「あっ…たしかに」
俺は単純に食べたいものから食べていた。
ラーメンの麺が伸びてしまうこととかを全く考えていなかった。
単純で純粋で天然的に馬鹿だった。
阿呆だった。
「フフッ!うっかりさんだね陰田君!」
まあ、天使が微笑んでくれたので結果オーライとしよう。そうであれ。
その後、一気に食べたせいで窒息死しそうになった俺の話は省略させていただこう。
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