第6話 なぜここに?
「これで,掃除を終わります」
その号令でやっと、地獄のような学校が終わった。
やっと、学校から解放された。
気分は久々に釈放された、受刑者の気分だ。
普段は速攻で家に帰宅するが、今日はそうはいかない。
今日は大好きなラノベの新刊発売日だ。
今日の夜はオールで読むと決めている。
絶対に手に入れなければならない。
俺は、すぐさま本(ラノベ)を買うために商店街へと真っ直ぐに向かった。
最寄駅の近くには商店街がある。
商店街には、本屋はもちろんのこと、ゲーセン、レストラン、カラオケ…などなど学生が好きそうな場所が沢山ある。
俺には無縁の所ばかりだ。
てことで、俺は無事に書店へと着くことができた。
そして、俺のお目当てのラノベの新刊も手に入ることができた。
人気作なので、売り切れてないか心配だったが、入手することができた。
そのラノベのタイトルは「今日も僕はお嬢様に罵られる〜でもそれはボクにとってご褒美〜」だ。
内容をざっくりと説明すると、僕こと
ウフフ…相変わらず表紙のお嬢様こと、アリス様は美しい。
俺もこうやって、ご褒美的に罵られてぇ!
さて、あとはレジにて清算を済ますだけ…
「あっ…陰田君」
俺の目の前には、もう見慣れてしまった美少女が現れた。
清水奏だ。
手には参考書を持っていた。
コラ!なんでいるん?
と、思わずつっこんでしまうところだった。
「なぜ…ここに?」
俺はとりあえず普通に聞いた。
俺は反射的に無意識に今持っている本を背中の後ろへと隠した。
別に、恥ずかしいからではない…ただなんとなく、隠したかった。
「ああ…その…参考書が欲しくて…」
清水は参考書を前に出して言った。
「そうなんだ」
「うん。でも、陰田君とこんなとこで会えるなんて奇遇だね〜あははは〜」
そうだね…これが運命…じゃねーよ。
なんかわざとらしい感じがする…
ラノベを買いに行くと言ったことがまずかったか?だが、それは清水が待ち伏せしてたということになる。
いや、ないな。
わざわざ、俺の為にそんなことまではしないだろう。
だって、清水は彼氏持ちだから。
「あっ、そうだ陰田君。このあと、一緒にお食事とかどうかな?昨日のお礼もしたいし…」
まずい…
朝は、ラノベを買いに行くという理由で食事の誘いを断った。
別の断る理由を考えなければ…
待てよ…
清水が、今まで異常に接してくるのは俺にお礼をしたいからだ。
じゃあ、お礼さえしてもらえれば、清水がもう俺に接する理由がなくなる。
そうすれば、いつも通りの陰キャライフを送ることができる!
このイベントさえ乗り越えればいい。
かなり迷ったが、仕方ない。
「いいよ、行こう」
「本当!やった!」
清水は嬉しそうだった。
喜んでいる清水はとても可愛かった。
「じゃあ、私店の外で待ってるから!」
清水はそう言って、店をの出口へ向かった。
なんだか、足取りが弾んでいるように思った。
…………てか、参考書買わないのかよ!
俺は心の中でそうつっこんだ。
俺はとりあえず、ラノベを買って店の外へ向かった。
店の出口を出た先には、美少女が立っていた。
恐ろしく整った顔立ちの彼女。
男であれば、誰だって惚れてしまうほどの魅力があるだろう。
そんな、彼女が俺を待っていた。
俺は軽く深呼吸してから、店の出口から出た。
「あっ、陰田君!本買い終わった?」
「うん。一応は」
「じゃあ、どこ行く?何食べたい?」
う…難問を振りかけてくるな。
俺は、腹は確かに減っているが、特に食べたいものなどはなかった。
「清水は?」
「えっ?」
多分、初めて清水の名前を言った。
「そ、そうだなぁ〜」
清水は視線を右上に向けて悩んでいた。
その仕草でさえ魅力的に映る。
「やっぱり、ここは無難なファミレスとか?」
「うん。いいね」
正直どこでもいいので、適当に返事した。
とはいえ、ファミレスに行くのは久々だ。
陰友たちとも、遊びに行くことはあるが、ファミレスなんか行かない。
あいつらの飯を食うとなったら、大体ラーメン屋だ。
家族で外食することなんてないしな。
「んじゃ!早速向かおうか!」
清水は張り切ったように言った。
某有名ファミリス店は、ここから数分程度歩いた先にある。
俺と清水はファミレス店へ向かって歩いていた。
俺は今、清水と隣り合わせだ。
隣り合わせで歩いている。
なんだ?このカップルみたいな状況は?
側から見れば、俺達はカップルだと勘違いされるだろう。
実際、通り過ぎる人々が羨ましそうな視線を向けてくる。
それだけだとよかったが、たまに恨めしそうな視線を向ける人もいた。
そんなに睨まないでくれ、代われるものなら代わりたい。
隣で歩いている清水の顔を見れない。
見る勇気がなかった。
俺はただ真っ直ぐ先を見て歩いていた。
歩き始めて1分ほどたったが、一言も会話をしていない。
俺としては、会話しない方がありがたかったが、少し意外だなと思った。
社交的な清水のことだから、質問攻めを喰らう覚悟はしていた。
「あの…」
と、思ったら清水の口が開いた。
俺は、反射的に彼女の顔を見た。
!?
清水は、頬を赤くして緊張してような表情をしていた。
まるで、初めてのデートに緊張する初心なヒロインのように。
もちろん、そんな表情もとてつもなく可愛いかったが。
「陰田君のす……好きな食べ物はな…なにかな?」
清水は時々、言葉を詰まらせながら言った。
なんだこの仕草は?
まさか、俺と一緒に歩いていることへの緊張、焦っているとでもいうのか?
いや、ないな。
俺の勘違いも甚だしい。
というか、清水には彼氏がいるしな。
どうせ、俺なんかよりかっこよくて優しい彼氏だろうし。
今更、俺みたいな陰キャと隣り合わせで歩くぐらい、なんともないはずだ。
あれか、清水の心の声を予想すると、「こんな陰キャと一緒なんてキツ…もう帰りたいけど、帰るなんて言えないし…どうしよう〜」だろう。
緊張ではなく、俺への失望からそのような仕草か自然と出てしまったのだろう。
おっと、清水からの質問に答えなければ。
俺の好きな食べ物か…
「ハンバーグ」
俺は一言で答えた。
結構迷ったが、無難なハンバーグにした。
「そ、そうなんだ!美味しいよね!私も好きだよハンバーグ!」
清水は笑顔で反応した。
「……………………………」
また、沈黙が訪れる。
どうだ?清水奏よ…これが、陰キャとの会話だ!基本的に陰キャは自分から会話を持ちかけないし、質問への答えも一言で片付ける。
いくら、コミュニケーション力があろうと会話が行き詰まってしまう。
それが、陰キャと会話するってのとだ。
身をもって受けるがいい…「陰キャとの
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