第5話 発覚
その桃色のツインテールの美少女はなぜか、俺のことを睨んでいた。
え?
なんで俺は今、喋ったこともない美少女から睨まれているのか?
その俺の睨む美少女の名は
桃色のツインテール、整った顔立ち、どこかお嬢様のような雰囲気、ナイフのような目つき…春色も一言で表すと美少女と呼ばれる分類だろう。
よく、清水奏と一緒にいるイメージがある。
清水の親友かなにかなのであろう。
そんな春色に、なぜ俺は睨まれている?
まさか、知らぬ間に俺はなにか重大な過ちを犯してしまったのか?
例えば、知らぬ間に彼女の大事なハンカチを無意識で鞄の中に入れてしまったところを見られたとか?
それとも、「あんたのこと…実は好きなのよ…」みたいな奇跡のようなラノベのような嘘のような展開に流れるのか?
「てか、あんた…お手本のような陰キャの見た目してるね」
春色はまるで、汚物を見るような目で俺に言い捨てた。
「え?」
今…陰キャって言ったか?
俺を?お手本のような?陰キャだと??
嬉しさが込み上げた。
俺にとって、陰キャと言われることは1番の褒め言葉だ。
「え?何嬉しそうな顔しているの?気持ち悪い…」
おっと、嬉しくてつい微笑んでしまった。
彼女は気味が悪そうな表情をしていた。
「って、そんなことはどうでもいい!あたしが、聞きたいことは!…」
「ゴク…」
俺は固唾を飲み込んだ。
もし、俺が彼女に何かやらかしていた場合は、まず謝るのが第一だ。
人は謝れば大抵のことは許してくれる。
よほど重大なことではない限り。
「あんた、奏とどういう関係なの?」
「他人です」
俺は即答した。
いや、できた。
冷静に回答できた自分に驚いている。
俺は機械のようだった。
まさか、ここであの悪魔の魔性の女の清水の名前が出るとは…
だが、どういう関係とはどういう質問だ?
「他人?嘘を言うな。他人ならなんで、奏と一緒に食堂で、昼食を食べてた?」
なるほど、食堂でのことを見たのか。
いや見られたのか。
それで、変な勘違いをしたと…
「あれは、事故です」
「事故ぉ?」
「ええ、事故です。それに、俺以外もあの場にいたと思いますが…?」
そう、俺以外にも陰友2人もあの席にいた。
俺は標的を別に定めようとした。
クデスか鬼介に流れてくれないかな?
「あの、キモオタとイタ中2にはもう話は聞いた」
くそ!先を越されたか…
てか、酷いいいようだな、クデスをキモオタと、鬼介をイタ中2呼ばわりか。
さすがに可哀想だ。
なんというか…ここまで春色の話してわかったが…すごい毒舌なやつだ。
人の悪口を平然と息をするように言う。
「で、そいつらが詳しいことはあんたが知ってるって言ってたから、あたしはあんたに聞いてるんだよ!」
アイツら、俺に全振りしやがって。
あとでアイツらはボコって、日本海に沈めるとして、この状況をどう乗り切るか。
「何の関係もありません。他人です」
俺はそう言うしかなかった。
実際そうだし。事実は事実なのだ。
変に嘘をつく方が話がややこしくなる。
正直に言うのが最善だ。
「………まあ、別にいいよ本当に何もないならね!てっきり、あんたが、奏のことを狙っているかもって思った」
「はぁ?」
おっと、思わず声が漏れてしまった。
俺は清水奏とことを何とも思っていないのに狙ってるとか思われたことが気がかりだ。
「もし、奏のことを狙っているのなら諦めた方がいいわよ」
「安心しろ、狙ってない」
俺は眼鏡をクイっと上げた。
「そう、ならよかった絶対に付き合うことは無理だから」
「俺が陰キャだからだろう?」
俺は自信満々に聞いた。
実はもっと、陰キャって言ってほしい。
いや、罵ってほしい。
ドMか?俺は?
「別にあんたが陰キャだからってわけではないわよ…ただ、奏にはもう彼氏がいるってこと」
「え?…」
俺は一瞬思考が停止した。
そして、何かを思った。
それが、どういう感情なのかはわからなかった。
「それじゃ、ごめんね。あたしのはやとちりだったわ」
春色はそう言って立ち去った。
清水奏に彼氏がいたのか…
いや、当たり前のことだ。あんな美少女だぞ?彼氏がいないわけないじゃないか。
でも、なんだこのなんとも言えない気分は?
「陰田くん?おーい」
隣から、清水奏の声が聞こえた。
いつの間にか、隣に座っていた。
一体、どれくらい時間がたっていたのか…
「あっ…」
「大丈夫?なんか、とてもぼーっとしてたよ?」
俺はぼーっとしてたのか。
きっと寝不足だからだ。
そう。そうに違いない。
「大丈夫」
俺はそう彼女に返した。
「そっか、よかった!」
彼女は笑顔でそう言った。
彼氏持ちの彼女は相変わらず可愛かった。
◇◆◇◇◆◇
気怠い授業がようやく全て終わった。
あとは、もう帰るだけだが、俺は掃除当番なので教室を掃除しなければならない。
面倒だなと思いつつ適当に箒で床を掃いていた。
「おい、蒼!」
教室の出入り口の方から呼ばれた。
その声の主は鬼介だった。
隣にはクデスもいる。
鬼介はこっちに来い!といわんばかりのジェスチャーをした。
俺は掃除中だが、構わず鬼介の方へ行った。
掃除をサボることは、いけないことだが少しなら平気だと思った。
「どした?」
「さっき、春色から何を言われた?」
あっ、そういえばコイツらをボコして日本海の深海奥深くに沈める予定だった。
今のこの場で、実行するか!
「お前ら、俺に全振りしやがって…」
「いや、だって清水は明らかにお前目当てだっただろ!」
鬼介は必死に言い訳を言った。
「それが、遺言か?」
「そうでござるよ!実際、陰田氏が立ち去ったあと、彼女はとても悲しそうにしてたでござる!」
「悲しそうにしてただと?」
「ああ、お前が立ち去ってから明らかに声のトーンとか下がって、口数が少なくなって元気がなさそうだったぞ」
俺が立ち去って悲しそうにしてただと?
なぜだ?
そりゃ、残った奴らが中2病と
「というか、陰田氏はぶっちゃけ清水さんとどういう関係なのでござるか?かなり、仲が良さそうだったでござるが…」
なんで、コイツらや春色は判断が早いんだ?
俺は昨日までは清水とほぼ接することはなかった。
今日、初めてまともに喋ったぐらいで変な疑いをするのはやめてほしい。
「他人だ、それ以上もそれ以下でもない」
「他人?そんなわけねぇだろ」
「そんなわけあるんだよ。俺は少なからずそう思ってる」
「他人って…本気で言っているでごさるか?」
「ああ」
俺はキッパリと言った。
「おい!陰田、ちゃんと掃除しろ!」
後ろから、橘花先生の声の激怒が聞こえた。
ついにバレてしまったか。
「おっと、バレたか…じゃあ、またな」
俺は陰友2人にそう言って掃除に戻った。
「怒られちゃったね…どんまい陰田君」
そう言って、先生に怒られた俺をフォローしたのは、
天野はクラスメイトから天使と呼ばれるほどに、可愛いい容姿をしている。
「うん」
俺はいつも通りの二文字だけ返して、掃き掃除を再開した。
俺は自分のくだらない気持ちを埃とともに掃いた。
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