第23話

私が院長先生の家に越してきて、ミケ子さんは、いなくなってしまった。

 私の住む家に、すっと入ってくることは、なくなってしまった。

 院長先生はミケ子さんも連れて行ってしまった。ミケ子さんとジョンやお姉さん達の猫も連れ行ったのだと思う。

 院長先生がお引越しされてから、猫の姿は、私の視界から、めっきりと減っていた。猫は、人に着くのでなく家に着くと、よく聞いていたので、もしかしたら、私がミケ子さんの主人になれるのかもしれないと思ったこともあった。

 けれども、ミケ子さんは、あっさりと、院長先生と一緒に引っ越したのだ。

 ミケ子さんが、いつからいた猫か、私は知らない。私が、桃の木のある家に引っ越してきたときには、もう、院長先生の家にいた。

 もしかしたら、院長先生はどこかでお話しされたのかもしれない。私はその話を聞いていたのかもしれない。けれども、私の記憶にはなかった。ミケ子さんは、とっくに院長先生の家にいた。当たり前のことであった。

 ミケ子さんは、いったい何歳だったのだろう。そんなことも、考えたことはなかった。

 私の生活から、猫は姿を消した。学校の行き帰りに、たまに野良猫を見ることがあった。ただそれだけだった。ミケ子さんが私の周りにうろうろしているということは、院長先生がそばにいたと言うことだ。

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