第15話
当時、私の家周りの敷地の大きな階段の上に、リハビリの施設の前に、広い空き地があった。その空き地に、いつの間にかプレハブの小屋が建った。
私は、気にも留めていなかった。よくあることであった。よくあったのだ。病院のどこかを修理するために、一時的に、業者の人が、プレハブの小屋を建てていた。今回も、その一つだろうと、思っていた。
しかし、そのプレハブ小屋は、私が思っていた使われ方をしえいなかった。そのプレハブの中が、噂の中心であった。
学校が終わり、帰宅してから、夕方になるまでが長い、まどろんだ夏の時間。この時間に噂の出来事が行われていたのであった。
私は、学校の同級生でなく、近所の年下の女の子達を引き連れて、プレハブ小屋の前に立った。なんとなく、同級生には、知られたくなかった。それに病院の中まで、遠くに住んでいる友達を呼び出したくなかった。
かといって、一人で見に行く勇気が、本当はなかった。一人では、行けなかった。
ちょっと、ドキドキした。見るのを止めようかとも思った。けれども、呼び出した年下の女の子の前で、止めることも出来なかった。私は息をのみこんだ。
ドアノブに手をかけた。扉の鍵はかかっておらず、ドアノブは回った。
そっと音が出ないようにドアを開け、中を覗き、すぐに閉めた。
私は、確信した。
噂は、本当だった。
よく見えなかったが、様子は分かった。
中には男の人が3・4人、テーブルを囲んで立っていた。狭いプレハブの、窓のない部屋に、明かりが煌々と照らされていた。男の人たちは、一点を見つめて、手を動かしていた。男の人たちは、だぶだぶの服を着ていたようだった。間違いなかった
その人たちは、みんな手術着を着ていたのだ。
その日は、そのまま帰った。
何もしゃべらずに、帰った。
見たことは、家族にも学校の友達にも話さなかった。
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