第12話
私は、風邪をひいても、病院に行ったことがなかった。他の土着の友達のように、小児科も行ったことがなかった。私が風邪をひくと、父が病院から薬を持って帰ってきて、薬を飲んで家で寝ていた。寝ているのが、一番いいと父は言っていた。
風邪をひいた友達の持っている、咳止めシロップの入った、オレンジ色の飲み薬が、とっても羨ましかった。
友達は、病気で休んでいた後も、登校してきたら、先生の許可をもらって、給食の後、プラスチックのボトルに入ったオレンジ色の薬を飲んでいた。孫薬を飲んでいる友達はみんな、甘くておいしいと言っていた。私は見ていて、羨ましかった。
そのオレンジ色の薬を飲んでいる友達を、私は何人も見ていた。
私は、友達とは違うのだなと、オレンジ色の薬を見ながら感じていた。そして、オレンジ色の薬を飲んだことがないことを、誰にも話さなかった。
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