ふぁんたじっく♪マギアフェアリーズ

@murota

第1話 モーニングッド! 変身、マギアサンシャイン!

・キャラクター紹介


〇モニカ(♀)

主人公。15歳。フェアリー学園の落ちこぼれ。

シャイニーと出会い、妖精まほう少女(マギアサンシャイン)になって月の女王と戦う。

黄色いポニーテール。元気いっぱいモーニングッド!

※兼ね役(幼モニカ)


□ステラ(♀)

ヒロイン。15歳。フェアリー学園の首席、プライドが高く完璧主義で高飛車なお嬢様。

問題児のモニカを目の敵にしている。

銀髪縦ロールに、鋭い眼光。まさにパーフェクトな悪役令嬢ですわっ!

※兼ね役(ナイトメアリー/女生徒/お婆ちゃん/優しい声)


△アサ(♀)

サブヒロイン。15歳。

フェアリー学園の都市に引っ越して来た普通の女の子。

三つ編み眼鏡っ子でおとなしい性格。

※兼ね役(ヨルトバーリ/女生徒)


△ヨルトバーリ(♀)

ラスボス。月の女王。

ハレルランドを夜で支配し、世界の人々を永遠に眠らせようと企む呪いの魔女。

恐ろしくて残忍な性格。

アサと兼ね役。


×ナイトファントム(♂)

ヨルトバーリのしもべ。執拗に崇拝している。

キザでナルシストでサディスト。

三日月の仮面と黒スーツを纏った青年。

※兼ね役(担任/理事長/マンドレイク/取り巻き令嬢B/オヤスミン)


□ナイトメアリー(♀)

ヨルトバーリのしもべ。忠誠心が高い。

忠実で堅実なマニュアル人間。

新月の仮面と黒スーツを纏った女性。

ステラと兼ね役。


◎シャイニー(不問)

太陽を司る伝説の妖精。

フェアリー学園の首席が契約できるはずが、とあるきっかけでモニカと契約する。

マスコットのような小さな見た目、シャイニングな陽気で呑気キャラ。

※兼ね役(いじわるカラス/実験室の先生/動く階段/取り巻き令嬢A)


---------------------------------------------------------------

役表5人(♂1:♀3:不問1)90分台本

♀モニカ〇/他:

♀ステラ□/他:

♀アサ△/他:

♂ナイトファントム×/他:

♂♀シャイニー◎/他:

---------------------------------------------------------------

※役は記号検索でお願いします!


【アクセントのヒント♪】

・アオゾラ……「青空」読み。

・モーニングッド……「モーニング」と「グッド」を掛けた、カタカナ読み。

・グナーイン……掛け声や呪文。「クラーケン」と同じ、カタカナ読み。


【変身のヒント♪】

変身バンクは、物語の状況を引きずらずに、敵のことなんか忘れて、楽しくポジティブハキハキに演じるとグッド!👍





△???:

 ――繰り返し夢を見る。いつの頃か分からない。遠い遠い、記憶きおく


△???:

 絵本を読む母親と、それを聞く小さな子供。

 母親が絵本を読み終えると、子供はすぐに泣きじゃくった。

 朝になると、母親はいなくなっている。

 あたたかい声も、肌のぬくもりも、まぼろしのように消えて無くなる。


△???:

 子供は思う。

 「ずっと母親の絵本の世界にいられれば」と。

 「さびしい朝なんて来なければいいのに」と。


 彼女は――「この夜がいつまでも続けばいいのに」と。そう願う。

 ただただ、そんな夢だ。



―――

――



△???:

 ――…………。(ゆっくりと目を開ける)



□ナイトメアリー:

 ――――女王様。



△???:

 …………。

(視線が平伏するメアリーを見つけ、辺りを見る)


□メアリー:

 ここはナイトパレスでございます。

 ……お目覚めになるのを、心待ちにしておりました。


 ――月の女王、ヨルトバーリ様。



△ヨルトバーリ:

 …………。逆よ、メアリー。


□メアリー:

 はっ。


△ヨルトバーリ:

 “目覚め”なんて言葉は、この場には相応ふさわしくないわ。

 ワタシ永遠えいえんに目覚めるつもりはない。


 それとも――――お前は違うのかしら?


□メアリー:

 し、失礼いたしました、女王様……お帰りなさいませ。

 

△ヨルトバーリ:

 ええ。……いい子ね。


□メアリー:

 …………。(石のように動かず平伏する)


△ヨルトバーリ:

 長いこと留守るすにしていたけど、私が戻ったということは、同じように“奴”も……。


□メアリー:

 はい。先刻せんこく、光のエネルギー反応を確認しました……。

 奴が――『太陽の妖精ようせい』が復活するきざしかと。


△ヨルトバーリ:

 ……忌々いまいましい朝をもたらす妖精共ようせいどもも、まぶしいだけの太陽もいらない。

 今度こそ永遠えいえんやみで断ち切ってあげるわ。――外の進捗しんちょくは?


□メアリー:

 はっ。とどこおりなく。

 すでにハレルランドの地の半分を、トバリで支配しました。

 残すは、太陽の妖精の“結界けっかい”のみ。


△ヨルトバーリ:

 よくやったわ。結界けっかいはこの私が破壊する。

 新たな契約者が現れる前に、太陽の妖精をとらえなさい。

 奴一匹では我がトバリを突破することはできないわ。


□メアリー:

 お任せください、女王様。

 すぐに現地にいる“しもべ”を向かわせましょう。


 聞こえていますね?――――――「ファントム」。



×ナイトファントム:(通信越し)

 ――ふん、指図さしずするな。

 貴様に言われるまでもなく、こちらは常に万全ばんぜんだ。


 ご機嫌うるわしゅう、マイクイーン……!

 今宵こよいもお変わりなき美しさであること、大変嬉しくぞんじます。



△ヨルトバーリ:

 わずらわしい態度は相変わらずね、ファントム。


×ファントム:(通信越し)

 フッ……まさに極上の誉め言葉!!

 貴女アナタ様のしもべたるこのナイトファントムめには勿体もったいなきお言葉、恐悦至極きょうえつしごくに存じます。


□メアリー:

 くどい前置きは不要です。

 女王様直々じきじきめい。果たして貴方にその役が務まりますか?


×ファントム:(通信越し)

 無論だ。貴様の出る幕はないぞメアリー。

 この俺の華麗かれいな舞台をそこでボケーっと眺めているといい……フッ!


□メアリー:

 不安ですねぇ。

 女王様!ここはやはりわたしが。彼では身に余るかと。


×ファントム:(通信越し)

 っ!!ッキィーーー!!


△ヨルトバーリ:

 ……奴の復活まで時間が無いわ。お前がやるのよ、ファントム。

 太陽の妖精をトバリに引きずり込み――必ず契約を阻止そししなさい。


×ファントム:(通信越し)

 イエスッ――マイクイーン!!


□メアリー:

 女王様のご意向いこうであれば……。

 ではファントム、お手並み拝見といきましょう。失敗は許されませんよ。


×ファントム:(通信越し)

 キッ!帰ったら目にものを見せてやる……!

 (咳払い)……それではマイクイーン、私はこれにて。グナーイン!!――。


△ヨルトバーリ:

 ……月の再臨さいりんまで、あとわずか。

 この世界を――ハレルランドを夜のトバリで満たして差し上げるわ。


 お前達には期待しています。

 永遠えいえんなる眠りのために――グナーイン。



□メアリー:――グナーイン!!



―――


――




◎ナレーションをしている妖精:

 ――シャイニ~ング!ようこそ!

 ここは、ハレルランド。

 妖精ようせいと人間が手を取り合って暮らす、ふぁんたじっくな世界。

 この物語は、そんな不思議な世界の、とある学園の女の子の話から始まる。

 ……アァ?どーゆーことかって?メンドい説明はナシだぜっ!

 見てりゃ分かる!それみろ~!



(町を駆け抜ける少女)


〇モニカ:

 ――ハァ、ハァ、ハァ!


〇モニカ:

 おっとっと!……こっちの方が近道かも!


〇モニカ:

 ハァ、ハァ、ハァ!もーなんで目覚まし鳴ってくれないのぉ!

 新学期早々そうそう、遅刻しちゃうよ~!!


◎ナレーション:

 ――今、せわしない女の子が通り過ぎて行っただろ?

 彼女の名前はモニカ・アオゾラ。

 妖精の力を学ぶ「フェアリー学園」の今年の2年生だぜ!

 どうやら始業式の日に寝坊したみたいだな。走るのに必死で、周りが全然見えていない様子。

 こりゃ何かハプニングの予感がするなー……。おや?



△アサ:

 ――……えっと。この道で合ってる、よね?

 うーん、学園のシンボルが見えるはずなんだけど……。



〇モニカ:

 ――ハァ、ハァ!

 こうなったら、ショートカット作戦!

 あそこの屋根を登れば……!家主やぬしさんごめんなさい!

 よっと!



△アサ:

 あれ、迷っちゃった……?

 うーん、この町初めてだし……。学園の道聞いた方が早かったかな~。

 誰か人は――。



〇モニカ:

 ここを渡ればもうすぐ――あ!太陽のシンボル発見!

 今日も爽やかな晴天、ご苦労様ですっ!


◎ナレーション:

 ああ、そいつはどうも……って違う!

 上を見てる場合じゃない、とんでもないことになるぞ~!

 おい、気づいてくれー!


〇モニカ:

 うわっまぶしい!お日様の輝き?

 気のせいかな、いつもよりシンボルが光ってる気がする!


◎ナレーション:

 たのむ、前を見ろ前ー!!



〇モニカ:

 なんだか気持ちいい光……!


(モニカのペンダントが反射する)


 そうだよ、今日は特別な日なんだもん!きっと応援してくれてるんだ!


 ありがとうお天道てんと様~!

 あたし!ぜぇったい素敵な妖精ようせいさんと、契約してみせるからー!!

 うおおーーー!


 太陽さんさん、心れっ!

 今日も一日、モーニングッードっ♪


(加速して屋根をジャンプ)



△アサ:

 え――――?



〇モニカ:

 へ――――!?



△アサ:

 (そ、そ、空から女の子が!?!?)


〇モニカ:

 (地面に人が……!?)――って、うわあああ!!

 どいてどいてええええ!!


△アサ:

 あわわわわわわわ!?!?



〇モニカ:

 むぎゅぅうッ!?!?(ゴチンと激突)

△アサ:

 あうぅうッ!?!?(同時に激突)



〇モニカ:

 ぐあっ!

 あいたたたた…………ハッ!!

 ごごご、ごめんなさい!?大丈夫!?


△アサ:(目がグルグル)

 あうぅ、急になにぃ~……。


〇モニカ:

 ひぃぃぃぃ!(真っ青になる)

 け、怪我とかしてない?この指何本か分かる!?


△アサ:(目が33)

 ど、どなたですかぁぁ~~ぼやけてぇぇ何も見えなくて~……。


〇モニカ:

 ああああ!!

 目が赤ちゃんのお尻みたいに~~!?

 きっとぶつかったときにメガネを落としちゃったんだね!?

 ど、どこに落ちたの~……――。


◎いじわるカラス:

 カァ~~~~~~!


〇モニカ:

 へ――?


◎いじわるカラス:

 カァ~~カァ~~!

(光るモノを二つ加えて飛び立つ)


〇モニカ:

 ……メガネ?それに、ペンダント?

 え、それっ私のペンダントなんじゃ――あああ無いいい!?!?

 ちょ、まっ、返してよおおおおおお!!


◎いじわるカラス:

 ド~~~ア~~~ホ~~~~~!


〇モニカ:

 ギャーーーー!絶対取り返さないと!!

 あーでもでも、あの子もここに置き去りにできないし……仕方ない!

 あなた、名前はっ?


△アサ:(目が33)

 え、あ、えぇと~~……アサ・クライン、ですぅ。


〇モニカ:

 アサちゃんだね!あたし、モニカ!

 急でごめんね、よっこいしょッ!!


△アサ:

 ええええ、なに!?持ち上げられてる……!?


〇モニカ:

 心配しないで、アサちゃん!

 メガネもペンダントも絶対に取り返してやるんだから――しっかり摑まっててー!!

 うおおおおーー!


△アサ:

 ふえええ!?ど、どういうことぉぉぉ~~~~!!



◎ナレーション:

 ――やれやれ、言わんこっちゃないぜ。


 だがこれもまた青春!

 「出会いは、唐突にりかかる」。そんな始まり方も悪くない!

 オレっちは、危なっかしいあの二人をもう少し見守ることにしよう。

 ではではみなしゅう、さらばだ~!


 アァ?結局おまえは誰なのかって?

 ――時期に分かるぜ。今度はサイコーなハプニングと一緒にな!シャイニー!



―――


――




×理事長:

 ――えー。今日から新学期の始まりです。2年目となった君達は、今年からエレメントを使った実践授業が追加されます。

 皆さんもご存じの通り、2学年恒例こうれい妖精契約ようせいけいやく――「フェアリーコントラクト」による専攻科目。楽しみにしていた生徒も多いことでしょう。

 契約した妖精は、生涯しょうがいを共にする大切なパートナーとなります。

 きちんと信頼をはぐくみ、より良い学園生活を過ごしてください。


 そして今世代こんせだいもまた!

 「太陽の妖精」の契約者候補こうほが引き継がれる、太陽祭たいようさいが行われます!

 かの妖精がいつ目覚められてもいいよう、契約者のあかしを次の世代へバトンする儀式。

 そのあかしは、このフェアリー学園で最も優秀な生徒に与えられる称号しょうごうです。


 今年の学園首席しゅせきにして契約者候補、代表――ステラ・ハンドレッド!


□ステラ:

 はい!!(壇上に上がっていく)


×理事長:

 貴君きくんの優秀な成績をたたえ、ここに、契約者のあかしさずけます。


□ステラ:

 光栄のいたり、ですわ!


×理事長:

 これは比類ひるいなき名誉であると同時に、このハレルランドをおびやかす厄災やくさいが現れしとき、かの妖精と共に立ち向かう勇気を問われるものです。

 なんじ、その覚悟があると誓いますか?


□ステラ:

 ――誓います!その名誉、つつしんでお受けいたしますわ!


×理事長:

 よろしい。では受け取りなさい。

 代々受け継がれし契約者のあかし、『シャイニーロッド』を。


□ステラ:

 ……!(ついにワタクシが……あの伝説の、「太陽の妖精」の契約者に――)




◎いじわるカラス:

 ――――ア~~~~~ホ~~~~~!?!?


(ステラの頭上から、光るものが落ちてくる)


□ステラ:

 ――――え?



間(数分前)



〇モニカ:

 待て待て待て待て~~~!!

 絶対逃がさないんだからー!!



◎いじわるカラス:

 カァ~~!カァ~~!バカァ~~~~!


〇モニカ:

 くっそー、心なしかケナされてる気分!

 どうやってつかまえたら……!


(太陽のシンボルが光る)


△アサ:(目が33)

 ま、眩しぃ、なんの光……?


〇モニカ:

 学園のシンボル……!

 もうフェアリー学園の近くまで来てたの!?

 アイツまだ飛んでるし、どこまで行くつもりよぉ!


△アサ:

 あううう……か、カラスは、綺麗なものを拾って巣に持ち帰る習性があるって、聞いたことが……。


〇モニカ:

 巣?――あ、そっか!!

 もしかして学園に巣があるってこと!?グッドアイデアだよ!

 それなら近道使って先回りしちゃえばいいんだ、アサちゃんスピード上げるよー!


△アサ:

 ひあああああ!?なんでぇぇぇぇ~~~!?



〇モニカ:

 ふぃ~、着いた!

 ここ、学園の展望台!あたしのお気に入りスポットなんだ~。

 町も学園も一望いちぼうできるんだよ、すごいでしょ?


△アサ:(目がぐるぐる)

 あ、はい、すごいですぅ……。


〇モニカ:

 ここから見ればあのカラスの居場所だって――あ、いた!!

 集会場しゅうかいじょうのちょうど真上まうえに巣がある!

 ちょっと行ってくるね、よいしょ。

(展望台の手すりを乗り越える)


△アサ:

 えぇ……。(目を凝らす)

 な、何してるのぉ!?さすがに落っこちちゃうよ!?


〇モニカ:

 へーき!いつも使ってる道だから!


 よっ、、はっ、、せいっ、、とおおっ!

(軽業で巣の建物まで降りていく)



◎いじわるカラス:

 カァ~~~?


〇モニカ:

 ――グッド♪捕まえたッ!!!


◎いじわるカラス:

 カァ!?ガァ~~~~!!!


〇モニカ:

 うわぁ、ちょお、暴れないで、うわわ、体勢が!!


◎いじわるカラス:

 ――――ア~~~ホ~~~!?!?

(眼鏡が落ちる)


〇モニカ:

 ああ!?アサちゃんのメガネがっ!!


(バランスを崩す)

 うわ、うぐぐぐぁ、あたしも……限界ぃッ!





□ステラ:

 んん?……なによこれ、眼鏡メガネ?なんで空から――。


〇モニカ:

 きゃあああああああ!!ぶつかるぅぅぅぅう!!


□ステラ:

 え――は!?ぶぅぅッ!?(モニカの下敷きになる)


〇モニカ:

 ぼふッ!!!いってててて……た、助かったぁ。


×理事長:

 ――こ、これは何事ですか!?君は、アオゾラくんんん!?


〇モニカ:

 あ……センセー、モーニングッド……!まだ朝礼ちょうれいだから、セーフですよね……!

 ――あ、アサちゃんのメガネあった!

 どこも、割れてないよね?ふぅ、よかった~~!



□ステラ:(下敷きのまま)

 ――――な――何も、良くありませんわッ……!

 いい加減、そこをお退きなさいって……!!


〇モニカ:

 ご、ごごごめんなさい!!ふわふわなクッションみたいで、つい……。


□ステラ:

 はぅ!?!?どこさわってるのよッ!!邪魔!!


〇モニカ:

 ぎゃっ!!(無理やり弾かれ、地面にスッ転ぶ)


□ステラ:

 もぉ…………何なんですの!

 今は表彰式の最中よ!?非常識にもほどがあるのではなくてッ!!

 とにかく壇上だんじょうから消えなさい、せっかくたまわった“あかし”にキズがついてしま……しまう、わ……あれ?え?

(証が手の中から消えている)


 わ、ワタクシのあかしは――どこ?



◎いじわるカラス:

 ――――ド~~~~ア~~~~~ホ~~~~~!!

(光る杖を咥えて飛び立つ)


□ステラ:

 はああッ!?!?


×理事長:

 な、なんということだッ!!契約者のあかしが、よりにもよってカラスにぃ~~!?


〇モニカ:

 あああああ!!思い出した、まだアイツから私のペンダント取り返せてない!!

 ちょっと待っ――。



□ステラ:(被せる)

 ――――モニカ・アオゾラさんッ…………。



〇モニカ:

 びくっ!


□ステラ:

 貴女あなた……自分が何をしでかしたか、分かっておいで……?


〇モニカ:(汗だくだく)

 へ……?え、え、ええと……!


□ステラ:

 公衆こうしゅう面前めんぜんで……よくもこんな恥をかかせて……その上、ワタクシの大事なモノ(※証)まで……!!


〇モニカ:(汗だくだく)

 お、落ち着いて……!はな、話し合いを!


□ステラ:

 ワタクシにとって今日という特別な日に、あぁ、貴女あなたって人はぁ……!!

 なにか弁明べんめいはありますのォ!?


〇モニカ:(汗だくだく)

 えっっと、その。あのぉ……。


 …………………お、お尻をんじゃって、ごめんあそばせ……?えへ?



□ステラ:

 ッッこのっ!!無礼者ぶれいものォォォ―――ッ!!!!



〇モニカ:

 びゃあああああああああああ!!


(ほっぺたにバチンッッと強烈な打音が響き渡る)



―――


――




×担任:

 おはよう諸君しょくん

 今学期から赴任ふにんしたツキカゲだ。このクラスの担任を務めることになった。

 クラスを受け持つのは初めてだが、良いクラスになるといいな。よろしく頼む。


 さっそくで悪いが。一人、転校生を連れて来ている。

 自己紹介を。


△アサ:

 ――あ、アサ・クラインといいます。今日から、よろしくお願いします……!


×担任:

 皆、仲良くしてやってくれ。

 クラインはこの町に引っ越してもない。

 まだみぎひだりも分からないだろうから、これから誰か案内役を頼みたいが……。


□ステラ:

 先生!案内ならワタクシが――。


〇モニカ:(遮る)

 アサちゃーん!こっちこっちー!!


□ステラ:

 なぁっ!!


△アサ:

 あ、さっきの人……。


×担任:

 なんだ?二人とも知り合いか?


〇モニカ:

 さっき通学路で仲良くなったんです!


 そういえばしっかり自己紹介してなかったよね!?

 あたし、モニカ・アオゾラっていうの!メガネ戻ってきたんだね、よかったよ~!


△アサ:

 おかげさまで……。でもまさか同じクラスなんて。


〇モニカ:

 ねー!すっごい偶然!

 いやむしろ必然!?幸運!?グッドラックだよぉ!!


□ステラ:(ボソッと)

 それはお別れの時の挨拶でしてよっ……。


×担任:

 あー。なんでもいいが、知り合いならちょうどいいか。

 アオゾラ、案内を頼めるな?


〇モニカ:

 まっっかせてくださいよー!

 アサちゃん、分からないことあったらなんでも聞いて!

 あたしが手取り足取り、ドーンと教えてあげちゃうからね!

 

△アサ:

 あはは、お手柔らかにお願いします……。



□ステラ:

 くぅぅッ、ワタクシの役目をォ……!!



△アサ:

 ひっ!?なぜかすっごく睨まれてる気が……!


〇モニカ:

 気のせいじゃない?新しいクラスだから、きっと緊張してるんだよ!

 リラックスリラックス~。


△アサ:

 そ、そうかなー。


□ステラ:

 むぅぅぅぅぅ……(凄まじい眼光)


〇モニカ:

 何はともあれだよ、アサちゃん!

 ――フェアリー学園へ、ようこそっ!!





〇モニカ:

 妖精ようせいのことを勉強するところ、それがこの学園だよ!とにかく広くて、でっかくて、それでいて生徒がこう、た~~くさん!


△アサ:

 それくらいは分かるよ~。

 一応、パンフレットでどんな施設があるかのは知ってるけど。


〇モニカ:

 ノーグッド!甘々だよアサちゃん~。

 学園の中はズバリ、ドキドキとワクワクでいっぱいなの。

 そんな紙切れじゃ伝わらないくらい、この学園は奥が深くて、楽しい場所がたくさんあるんだよっ!


△アサ:

 ほんとに!?例えばどんなところ?


〇モニカ:

 例えばそう、ここ!実験室!

 妖精といえば、ふぁんたじっく!不思議な薬の実験とかはかかせないよね~!

 アレやコレを混ぜちゃったりして~(ビンの中を適当に入れまくる)


△アサ:

 モニカちゃん、なんか毒々どくどくしい色になってるけど大丈夫……?


〇モニカ:

 あれ?お花の香りになるはずなんだけどなぁ、くんくん……クサッッ!?


◎実験室の先生:

 うぅっ、この凄まじい刺激臭は……!

 誰ですかァ!?爆薬を調合した人はぁぁ!


〇モニカ:

 え――(部屋が爆発する)んぎゃああああ!!



〇モニカ:

 えへへ、たまにはああいう失敗もあるよねー。

 落ち込んだときはここ!菜園場さいえんじょう

 危ないモノもないし、いい匂いで満たされて、癒されるんだ~。


△アサ:

 見たことない色んなお花とか植物がそろってるねぇ。

 うわっ、人の顔みたいなものまで!?これってまさか……マンドレ――。


〇モニカ:

 なにそれ怖っ!!

 雑草かなー、ダメだよちゃんと手入れしなきゃ。ブチッ。(雑草を引き抜く)


×マンドレイク:(絶叫)

 『何スンジャッバカタレェェェェェェェェェェェエ!!!!』


〇モニカ:

 ゴメンナサイいいいいいいいいい!!(耳が爆発する)



〇モニカ:

 いててて、ちょっと休憩……よいしょっと(階段に座る)……ふぅ。

 あはは、身の回りのものには注意しないと、だよぉ……。

 動いたり爆発したり、大変なんだから~……。

 

△アサ:

 も、モニカちゃんどこ行くの~~~!?


〇モニカ:

 あれ……?アサちゃんが……。どんどん小さく……。


◎動く階段:

 次ハ展望台ニ参リマス。激シク揺レルノデ手スリニ捕マッテクダギュイーーーーーーーーン!(超高速で昇っていく階段)


△アサ:

 モニカちゃ~~~~ん!



間(食堂)



△アサ:

 ふぅぅ、やっとお昼休み……。


〇モニカ:(食べ物を持ってくる)

 慣れない場所を周ったから疲れちゃったでしょ?ご飯にしよ!

 学食は絶品なんだ~モグモグ!


△アサ:

 もう食べてる……。

 

〇モニカ:

 モグモグ、モゴモゴ~!

訳(妖精の力で育ててる畑があってね、素材も超新鮮なものを使ってるんだって~!)


△アサ:

 た、食べ終わってから、お喋りしようね。

 ……そのパンにはさんでるモノ、お花かな?

 

〇モニカ:

 ごくん――、フラワーパン!

 色んな花の具をはさんでて、カラフルでかわいいんだー。

 あたしのオススメはアサガオだよ!ふわふわな触感しょっかんとピリッとした苦味にがみがアクセントになっててね~、アサちゃんも食べる??

 

△アサ:

 ダ、ダイジョウブ!!

 お弁当持ってきてるの……!(弁当の包みを開ける)


〇モニカ:

 かわいい……!

 おかずが動物になってるよ!

 ウサギのリンゴに、クマのハンバーグに!タコさんウィンナー!

 気合いモリモリだねぇ!

 これを食べれば、きっとアサちゃんも素敵な妖精さんと契約できるよお!


△アサ:

 妖精ようせいさんと……けいやく?どういうこと?


〇モニカ:

 あ、そっか!アサちゃんは転校生だから知らないんだね。

 今日はとっても大事な日なの!

 なんかすっごい儀式をバーンてやって、ドッカーンて呪文をとなえると、妖精さんをパートナーにできる特別な日なんだよっ!


△アサ:

 へ、へぇ……。

 妖精さんがパートナーになるの?

 すごい……私もやっていいのかな?


〇モニカ:

 もちろん!みんなで召喚する呪文を唱えるんだよ。

 えーっと、なんて言うんだったっけ?


 ふぇー、ふぇありんー……。

 

△アサ:

 ふぇありん?


〇モニカ:

 うーん……あ!!


 ふわりんこんたくと!!



□ステラ:

 ――「フェアリーコントラクト」ですわッ!!


(アサの背後から颯爽と登場する)


△アサ:

 ふえ!?


□ステラ:

 ずっと大人しく聞いていれば……モニカ・アオゾラさん!

 なんですの貴女あなたの説明は!


 「すっご~い」だの「どっかーん」だの、ほとんど伝わってないじゃないの!クラインさんも困っているでしょう?

 それに案内中も貴女のみっともない叫び声が、教室まで届いていてよ。

 いい加減、淑女しゅくじょとしての自覚を――って人が話してるときは食べるのをおやめなさいってッ!

 

〇モニカ:

 モゴモゴ~。

訳(だってお腹ペコペコなんだもん~)


△アサ:

 モニカちゃん、この人は……?


〇モニカ:(ヒソヒソ)

 同じクラスのステラちゃん。「ですわ」が口癖で、学園の有名人。

 でも小言が多くてセンセーみたいなんだよ~。それに……。


□ステラ:

 聞こえてますわよッ……。それからこの口調はくせではなく淑女しゅくじょ教養きょうようでしてよッ!


△アサ:

 えっと……。

 アサ・クラインです。よろしくお願いします……ステラちゃん?


□ステラ:

 っ!あな――――(口を開こうとするが、何者かの屈強な手に遮られる)


◎取り巻き令嬢A:

 ちょっとそこ、眼鏡のアナタァ!

 今のは聞き捨てならないわねぇ!


×取り巻き令嬢B:

 お、お、姉様に、ちゃん付けですってえ!?

 うううらやま……じゃなくてアナタァァァ、が高くってよォォォ!!


△アサ:

 ひえええ!?!?ど、どなたですか……!?


◎取り巻き令嬢A:

 ずっと御傍おそばにいたあたくし達ですら、お名前呼びを許されるのに一年をついやしたというのに!

 転校生だからといって許されることではないわ!


×取り巻き令嬢B:

 無礼千万ぶれいせんばんですわァ!!

 この方をどなたと心得ておいで!?


◎取り巻き令嬢A:

 フェアリー学園総裁の愛娘まなむすめであり、名門ハンドレッド家の次期当主にして、太陽祭の契約者候補代表、学園首席!

 ステラ・ハンドレッドじょうであらせられましってよおおおお!!


△アサ:

 お、お嬢様!?首席!?


×取り巻き令嬢B:

 こうやって目を合わせて頂けるだけでもッ光栄なことなのよォ!

 立場が対等だとでも御思おおもい??


 付け上がるのもいい加減にしなさいいい――!


◎取り巻き令嬢A:

 どうやら指導が必要のようね。そのひ弱な身体にレデイのたしなみを叩っこんであげましてよ……!?


【男性演者の場合、追加】

 コォォォォォ(筋肉が膨張し、服が避ける)――マッソゥゥウ、120パーセントよォォオゥ!!


△アサ:

 ひええええええええ!


□ステラ:

 ――おひかえなさい!トリマァキ、パシリーヌ。

 荒事あらごとを起こしに来たのではなくてよ?



◎取り巻き令嬢A(トリマァキ):

 で、ですがステラ姉様!この無作法ぶさほう者達はあまりにも……。


×取り巻き令嬢B(パシリーヌ):

 姉様が軽く見られてしまいますわァ!!


□ステラ:

 今は、ワタクシが話していますの。

 「邪魔は」しないでもらえますこと――?


×取り巻き令嬢B:

 ヒッ!!!


◎取り巻き令嬢A:

 で、出過ぎた真似を……!



△アサ:(ぽかーん)

 …………。


□ステラ:

 ……。ごめんあそばせ。

 連れが失礼な態度を取りましたわ。

 おびに、ワタクシも食事に混ぜてもらっても?


△アサ:

 あ、はい!大丈夫です!


〇モニカ:

 ステラちゃんもお腹すいてるの?

 フラワーパン食べる?


□ステラ:

 ノーサンキューですわ。

 ワタクシの専属シェフが用意したスペシャルランチがありますもの。パシリーヌ。


×取り巻き令嬢B:

 は~い姉様♥ オラッどっこいしょッ!

(50㎏の重箱から鮮やかなおかずが立ち並ぶ)


△アサ:

 す、すごい……!


□ステラ:(ドヤ顔)

 豪華絢爛ごうかけんらん、実にパーフェクトですわ。

 けれど、ワタクシ一人ではいつも食べきれなくって。

 よろしければ分けて差し上げてもよくってよ?


〇モニカ:(すでに食べている)

 わーい!これも美味しいね~♪

 あれも、これも、それも~。モグモグ~!


◎取り巻き令嬢A:

 チョットアナタ!いくらなんでも食べ過ぎよぉ!!


×取り巻き令嬢B:

 そんなに食うんだったら、テメェのパンもよこしなさいヨォ!!

 あむ――――(噴出)ぶぅぅぅぅぅクソ不味ううううう!?!?オロロロロ(嘔吐物発射)――。


〇モニカ:

 ああ!?勝手に人のパン食べないでよー!

 じゃあこっちだってぇ!バクバクバクバク!


◎取り巻き令嬢A:

 アッアッアアアーー!!やめなさい!!

 つばを飛ばさないで頂戴ちょうだい!!はしたないことこの上ないわね……!


【男性演者の場合、追加】

 アンタ達も姉様の前で騒ぐんじゃな――オイそれアタクシが狙ってた玉子焼きだろうがゴラァァ!?独り占めしてんじゃねぇぞッこのッガキィイ!!


×取り巻き令嬢B:(腹がぎゅるるるるぅ)

 ふぐうぅぅぅぅッ!?急に、ふ、腹痛がががァァァァァア……!!

 オォ、お"花"つみ"に"行"き"ま"し"て"よ"おおお!!


△アサ:

 ひ、ひどい……。


□ステラ:

 はぁ……みっともないですわ。

 モニカ・アオゾラさん!貴女も少しはつつしみを覚えたらいかが?

 そんなだから、いつまで経っても問題児扱いされるのですわ!


△アサ:

 もんだいじ……?モニカちゃんがですか?


□ステラ:

 そういえば貴女は、田舎から転校して来たんでしたわね。

 ここは貴族階級のご子息ご令嬢もつどう名門学園。浮いた行動を取ると足元を見られますわ。彼女のようにね。


◎取り巻き令嬢A:

 何かと問題を起こす学園の“落ちこぼれ”!それがモニカ・アオゾラよ!

 学園の恥ですわぁ!これから「太陽祭の儀式」が始まるというのに……ちょっとォ!!もうおかずが無いじゃないのよ!?!?

 限度があるでしょこのッ食ったもん返しなさいよォ!吐き出しなさい!


(モニカとフォークで格闘するトリマァキ)


△アサ:

 たいようさい……?


□ステラ:

 いくら田舎者でも、太陽の妖精の逸話いつわくらいは知っておいでよね?


△アサ:

 あ、はい……。

 大昔。悪い魔女によってハレルランドが夜の闇に覆われ、妖精達は消えて、大地も枯れ果てた時代を救った、伝説の妖精だって。


□ステラ:

 ええ。

 ――魔女と戦うために、太陽の妖精は一人の少女と契約した。その光の力で魔女を封印して、夜を跳ね除ける「結界けっかい」を残し。

 そしてながい眠りについた……。


 太陽祭は、その偉業いぎょうたたえるお祭りでもあり、新たな契約者を決める大事な儀式なのですわ!


△アサ:

 じゃあ、この町がずっと明るいままなのも、その太陽の妖精の力なんですね……。


□ステラ:

 驚くのも無理はありませんわ。

 ここには夜はおとずれない。太陽の結界けっかいで守られていますの。


 ……けれどそれも時間の問題かしら。

 貴女が引っ越して来たのも、それが理由でしょう?


△アサ:

 …………はい。夜が、すぐそこまで迫って来てました。

 それでパパの畑の野菜も全部れちゃって、逃げるようにこの町に……。


□ステラ:

 ……。辛い思いをしましたのね。

 でも、もう少しの辛抱ですわ!


△アサ:

 どういうことです……?


□ステラ:

 今世代こんせだいの契約者は何を隠そう、このっ、ワタクシ!

 かの妖精が目覚めたあかつきには、ワタクシがハレルランドを救ってみせますわあっ!!


△アサ:

 す、すごい自信ですね。


□ステラ:

 当然でしてよ!

 如何いかなる事に置いても、完璧で高潔なレディであることッ。

 それこそがハンドレッド家の名に相応ふさわしい、ワタクシの使命なのですわ!


 貴女も早く学園に馴染めるよう、淑女しゅくじょとして努めなさい。


△アサ:

 ど、努力します……。


□ステラ:

 長居が過ぎましたわね。

 午後には儀式が始まりますわ。


 ――モニカ・アオゾラさん。

 最後にこれだけは言っておきますわよ!

(モニカにナイフの先を向ける)


〇モニカ:

 モフモフ~?


□ステラ:

 妖精の儀式は、この学園で最も神聖な行事。

 少しでも問題行動を起こせば、退学処分もやぶさかではありませんことよ!

 ワタクシの一声ひとこえでそれが可能だということ、きもめいじておくことですわ!


 よろしくて。


△アサ:

 あわ、あわわわ……。


〇□モニカ・ステラ:

 ………………。



×食堂に響くステラのお腹の音:(空気を壊すくらい長く)

 ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~~!



□ステラ:

 ッ、………。(すました顔)


〇モニカ:

 ステラちゃん…………。

 ――フラワーパン。食べる?


□ステラ:(羞恥心で顔が真っ赤になる)

 ~~~~~~~~~~ッッッ!!!!!


◎取り巻き令嬢A:

 く………。ぶふふっ!


□ステラ:(食堂全体に聞こえる大声)

 ッッ!! 

 トリマァキッ!!みっともなくお腹の音が響いてましてよ……!

 まったく、恥を知りなさいッ!


◎取り巻き令嬢A:

 ええええええっ!?


□ステラ:

 くッ……ごきげんようッ――!!(真っ赤になりバタバタと退場)



△アサ:

 ……。行っちゃったね。


〇モニカ:

 お腹ペコってるならそう言えばいいのに~。

 素直じゃないんだから。モグモグ。



―――


――




×担任:(木陰から、ブツブツと呟くツキカゲ)

 …………イン。…………ナーイン。


△アサ:

 ツキカゲ先生ー。もうすぐ儀式が始まるみたいですよ。

 ……行かないんですか?


×担任:

 っ……ああ。クラインか。

 先に行っててくれ。


△アサ:

 ……?(なんだか、具合が悪そう……)

 先生、大丈夫ですか?


×担任:

 気にするな。

 ……強い日差しは得意ではなくてな。

 休憩したらすぐに行くさ。


△アサ:

 分かりました……。じゃあ。

(クラスの方へ去っていく)




×担任:

 ……――――――(舌打ち)。



間(集会場)



◎ナレーション:

 さてさて~。待ちに待った儀式の時間だぁ!

 広場のあっちこっちで妖精が召喚されて、飛びまわってるぜー!

 んお!?あっちの方、なんだかすっげえ数の妖精が集まってるな!?



×担任:

 次、ステラ・ハンドレッド!

 紋章盤もんしょうばんに手をかざしなさい。召喚できる妖精のエレメントを確認する。


□ステラ:

 不要ですわ、先生。

 ワタクシにはどの属性が扱えるか分かっていますもの。

 たかだか一種類しか確認できない紋章盤もんしょうばんでは、ワタクシの価値は測れませんことよ。


 (杖を掲げる)――――「フェアリーコントラクト」!


(5種類の光がステラの周りを飛び交う)


×担任:

 なにッ!火、地、風、水、光……全てのエレメントに適性があるだと!?

 普通は一人一種類のはずなんだが……これは。



□ステラ:

 (不敵な笑み)――コンプリート、ですわっ!



◎ナレーション:

 うわお~!とんでもない奴もいるもんだぜ。

 オレっちが見守ってた女の子も気になるし、ちょこっとだけ近くで様子を見てみるか!どれどれ~?



△アサ:

 うぅぅ~。緊張してきたよぉ。

 そういえば、パパが言ってたような……人の字を飲めば緊張が解けるとかなんとか。

 ひ、人、人を……。(手のひらに人の字を書く)


×担任:

 次、アサ・クライン!紋章盤に手を。


△アサ:

 ひゃいっ!?!?

 も、もうですかぁ!?まだ心の準備が――。


〇モニカ:

 いっけーアサちゃん!全属性出しちゃえ!


△アサ:

 それは無理だよー。

 すー、はー……よ、よし。えいっ!


(紋章盤の針が回転し続ける)


×担任:

 うーむ。針は動いているが、位置が定まらんな……どういうことだ?

 まさか、お前も……。


〇モニカ:

 ステラちゃんみたいに、妖精出しちゃえば分かるんじゃ――



□ステラ:

 ――不可能ですわ。



△アサ:

 え……?


〇モニカ:

 なんでよぉ!


□ステラ:

 複数の妖精を呼び出すには、相応のアイテムが必要なのですわ。

 ワタクシの杖は、世界に二つとない特別性。

 クラインさんの持つ市販の杖では、妖精達も呼びかけに応じることができませんわ。


×担任:

 それもそうだな。ランクの高い杖を手配して、召喚は後日に回そう。

 クラインも、それでいいな?


△アサ:

 は、はい……。

 妖精さん、会いたかったなー……。


〇モニカ:

 元気出して、アサちゃん!

 代わりにあたしが、すっごいの見せてあげるからさっ!


□ステラ:

 ふっ、それはどうかしらね……。


〇モニカ:

 なにさー!

 あたしなんか、伝説の妖精を召喚しちゃうもんねーだ!


×担任:

 訳の分からんこと言ってないで来い、アオゾラ。

 お前の番だ。さっさと手を出せ。


〇モニカ:

 うおおおおおお~~!

 集まれ~、集まれ~!


□ステラ:

 …………っ。(気にしないふりをしつつ、耳を傾けている)


×担任:

 ……。なんだと。針が……。


〇モニカ:

 ええ!!なになに!?


□ステラ:

 針がっ!?なんですの!


×担任:

 針がッ…………――まったく動かん。適性、なし……。


〇モニカ:

 …………え?


×担任:

 モニカ・アオゾラ。適性無しだ。


〇モニカ:

 ……ええええええええええ!?!?

 ちょっと待って!故障じゃないんですか!?


×担任:

 紋章盤は正常だ、諦めろ。

 適性無しは別に珍しいものでもない。運がなかったな。


△アサ:

 モ、モニカちゃん……。


〇モニカ:

 そ、そんなぁぁぁぁぁぁ~~……。


□ステラ:(手の甲で悪役令嬢高笑い)

 ――っぷ。あーーっはっはっはっはっは!!

 そんなことだと思いましたわぁ!落ちこぼれには相応しい結末ですわね~!


〇モニカ:

 うぐぐぐぐ。


□ステラ:

 劣等生の負けっ面も拝めましたことですし、余興はここまででしてよっ!


 いらっしゃいクラインさん、それに……アオゾラさん♪

 貴女達には特等席で見せて差し上げますわぁ。

 ワタクシが伝説を継承する、この歴史的瞬間を――うふふ。



×担任:

 …………。(ステラの杖を見据える)





□ステラ:(集会場)

 ――準備はできていますわ、いつでも初めてくださいまし!

 

×担任:

 諸君しょくん、注目!まずは理事長からの言伝ことづてを知らせる。

 契約者のあかし「シャイニーロッド」の盗難に関しては、ランド警備隊が目下もっか捜索中である。そのむねを報告するため、理事長も現在中央会議に出席し、学園を離れている。

 よってハンドレッドのクラスを担当している私ツキカゲが、儀式進行代理のにんを預かった!


 立て続けに異例な事態が重なってしまったが、継承の儀式はこの場で必ず果たさなければならない!ご了承願おう。


 これより、太陽祭の儀式を開始する――!!


 契約者候補代表――ステラ・ハンドレッド!壇上へ!


□ステラ:

 はい!(壇上に上がる)


×担任:

 本来であれば、あかしをもって契約を唱える決まりだが。

 今回はその杖で構わない。十分に役割を果たせるランクだろう。


□ステラ:

 分かりましたわ。(杖を取り出す)


×担任:

 (ステラの銀色の杖を眺める)……。


□ステラ:

 ……?どうかなさいまして?


×担任:

 ――いや。綺麗な杖だと思ってなぁ……本当に、伝説の妖精を召喚してしまいそうだ。


□ステラ:

 ……当然ですわ。

 ワタクシの代で太陽の妖精を降臨させますもの!


×担任:

 ああ。私も。心からそれを願っているよ――。

 では、唱えたまえ。



△アサ:

 いよいよだね、モニカちゃん……モニカちゃん?


〇モニカ:

 む~~~。

 

△アサ:

 まだむくれてるの?


〇モニカ:

 だってぇ。納得できないよー!

 今朝まではグッドな一日で、素敵な妖精さんに出会えると思ってたのに……。

 ……やっぱりペンダントがなかったからだ~!


△アサ:

 ペンダント……今朝られたって言ってたやつ?

 カラスの巣にもなくって、まだ見つかってないんだよね……?


〇モニカ:

 絶対アイツが持ったまんま、どっかに落っことしたんだよ~!!


△アサ:

 キラキラ好きのカラスには気を付けないとだね……。

 私もまた眼鏡られたくないし。


〇モニカ:

 そだねー……ステラちゃんの銀髪とか銀の杖みたいにキラッキラな物とかも、すぐ狙われちゃいそうだよ。

 ――――ん?(遠くで何かを発見する)



◎いじわるカラス:

 カァ~~~カァ~~~!

(壇上のステラ目掛けて向かっていく)



〇モニカ:

 ああ!?あいつッッ!!!!



×担任:

 では、唱えたまえ。……さあ。


□ステラ:

 ……(深呼吸)。

 ――継承せよ!今世代契約者の名はステラ・ハンドレッド!

 太陽の妖精よ、契約者候補の名において命ずる。フェアリー……。


×担任:

 ……ッフ(嗤いをこぼし、ずいっとステラに近づく)


〇モニカ:

 ステラちゃん危ないっっっ!!!!


×担任:

 ッ!?!?

□ステラ:

 え――!?


◎いじわるカラス:

 ア~~~~~ホ~~~~~!!


〇モニカ:

 グッド!!今度こそ捕まえたッ!!


◎いじわるカラス:

 ガァ~~~~!?(キランとペンダントが宙を舞う)


〇モニカ:

 あっ!あたしのペンダント!!返してー!!


□ステラ:

 急になんですの――きゃあああッ!!


〇モニカ:

 うわぁぁぁああ!!


◎いじわるカラス:

 ンガァ~~~~!!


(全員もみくしゃになる)


△アサ:

 モ、モニカちゃん!ハンドレッドさん!大丈夫ー!?

 あれ、この杖……。(シャイニーロッドを拾う)


〇モニカ:

 あいててて……あ、ペンダント……!

(ペンダントを握りしめる)

 やった……取り戻したよー!ゲットー!!

 

□ステラ:(またもやモニカの下敷きになる)

 ゲットじゃありませんわよッ……!

 もう嫌ですわ!さっさとお退きに……それ、シャイニーロッド!?

 え、きゃあッ――!?


(シャイニーロッドとペンダントが同時に白い輝きを放つ)


△アサ:

 ひゃああっ!?


〇モニカ:

 まぶしいッなに――!?


×担任:

 ぐぉッ!?まさかこの光は――――!



〇モニカ:

 うぅ……光が、おさまった?

 びっくりした~、なんだったの……?


◎シャイニー:

 ――わりぃわりぃ~、召喚の影響だなー!

 オレっちの光は特に強烈だからよ。

 ダイジョブか?眼とか潰れてないか?


〇モニカ:

 うん、大丈夫だよアサちゃん……。

 今もちょっと目がチカチカするけど。


◎シャイニー:

 そいつぁよかった!

 こんな大事な瞬間を見逃すなんて、サイコーに勿体もったいないことだぜ!


〇モニカ:(目をぐりぐりする)

 ……あれ、アサちゃん、そんな声だったっけ?

 ステラちゃん?


□ステラ:

 あ……あ、アナタ、その……!(口をパクパクさせる)


△アサ:

 モニカちゃん……それ、なに?


〇モニカ:

 え……こっちにアサちゃん、そっちにステラちゃん?

 じゃあ、どちら様ッ!?



◎シャイニー:

 ムッフフフ!

 いく百年の時をて、呼ばれて飛び出てレッツ・シャイニ~ング!


 ハレルランドの生ける伝説!

 『太陽の妖精シャイニー』たぁ――オレっちのことよォ!シャイニー!!



〇△□ステラ・アサ・モニカ:

 ――ええええええええええええ!!



―――


――




◎シャイニー:

 ――んおおお~~!

 ひっさびさに浴びる日差しはポカポカで格別だぜ~!

 ほぉら、ボーっとしてねえでオメーも一緒に!シャイニ~~!


〇モニカ:

 シャイニー……?あなたが、太陽の妖精さん?


◎シャイニー:

 応とも!びっくらこいたろ?オレっちのビッグサプライズ大成功~!


〇モニカ:

 す――――すっごーい!!

 喋れる妖精さんなんて聞いたこともないよお!

 それに、姿もクッキリハッキリ見えるよ!?なんでなんで!?

 

◎シャイニー:

 ムフフ、そりゃオメー、オレっちはめちゃ特別だからなぁ。

 他の妖精達からも、妖精王って呼ばれてるんだぜ!

 

〇モニカ:

 妖精王……かっこいいー!

 それにもふもふなのもギャップがあって、かわいいねー!

 

◎シャイニー:

 ムッフフフ!だろだろ~!

 オレっちのキューティーな偉大さが分かるとは、オメーやっぱ気に入ったぜ!

 どうだい、オレっちと契約するか?


〇モニカ:

 いいの!?

 あ!あたし、モニカ!よろしくねシャイニー!


◎シャイニー:

 よっしゃモニカ!

 ほんじゃま。残りの尺も短けぇし、サクッとやるか~!



□ステラ:

 ちょっとお待ちなさ――――――いッ!!!!



〇モニカ:

 うわぁッ!?

(下敷きのステラが急に立ち上がり、すっ転ぶ)


□ステラ:

 違う!違いますわ!そうではなくってよ!


 ワ・タ・ク・シ!!

 契約者候補はこのっ、ワタクシですわ!!


◎シャイニー:

 アァ?なんだ急に。ダレだオメー?


□ステラ:

 誰って……ッ!

 継承の言葉を聞いていませんでしたの!?

 今世代の太陽祭契約者候補のステラ・ハンドレッドですわッ!

 学園から選ばれた人間ですのよ!


◎シャイニー:

 ほーん。(興味無さげ)


□ステラ:

 ほ、ほーんって……。


 お、おほん。(冷静になる)

 お分かりかしら、太陽の妖精。

 フェアリー学園から証を受理されて、契約の資格を受け継いだのはこのワタクシであって、そこの落ちこぼれ娘は関係ありませんわ。


 そういうわけでしてよ!

 さあ、ワタクシと契約なさいっ!



◎シャイニー:

 ……。めんどくせーな~~~。



□ステラ:

 はぁ……?


◎シャイニー:

 誰が決めたよ、んなこと~。

 その継承が資格がどうのこうのってやつ、人間が勝手にやってることだろぉ?

 オレっちそんなの知らねーし~!


□ステラ:

 な、な、なんですって……!?

 そ――それじゃあ……なぜアナタは今この場に現れましたの!

 契約者に選ばれたのがワタクシだからに決まって――。


◎シャイニー:

 ちがうちがーう。

 オレっちの召喚と契約には条件があって、「ロッドとペンダント」が必要不可欠なの。

 今日、たまたま両方そろったからオレっち降臨できただけ。

 契約者を選ぶのは、あくまでオレっちだぜ?

 お分かりデシテ?


□ステラ:

 く~~~~ッ!(言葉が出ず、顔が真っ赤になる)

 そ、それでも……でしてよ。


 アナタはワタクシと契約すべきですわッ。

 ワタクシは学園首席でハレルランドのお歴々から契約を認められた優秀な妖精使い。

 対して、そこのモニカ・アオゾラは学園の問題児で適性無しの落ちこぼれ!


 火を見るよりも明らかですわ!

 ワタクシと契約しなければ、国民が納得しませんことよっ!


◎シャイニー:

 そうなのか?モニカ。


〇モニカ:

 ううぅ……本当だよ。

 今日集まってるみんなも、ステラちゃんがシャイニーと契約するのを楽しみにしてたんだ……。

 やっぱり、あたしじゃダメっぽいかな、あはは……。


△アサ:

 モニカちゃん……。


◎シャイニー:

 そうなのかー……うーん。


□ステラ:

 ご理解いただけたかしら!

 さあさあ、部外者は壇上から降りてくださいまし。

 契約の儀式の続きを――。


◎シャイニー:

 モニカ、オメーはそれでいいのか?


〇モニカ:

 え……。でもあたしなんかが契約しちゃったら、みんなが……。


◎シャイニー:

 皆じゃねぇよ。オメーの心に聞いてんだぜ、オレっちは。

 “オメーは”どうしたいんだ?


〇モニカ:

 っ……!あたしは……。


□ステラ:

 何をもたもたしてますの、モニカ・アオゾラさん!儀式の邪魔ですわ!

 えーっと、太陽の妖精。確かアナタ言ってましたわよね?

 契約に必要不可欠なのは……。



×担任:

 ――――ペンダントとロッド。だったか。

 なるほどなぁ……どうりで今の今まで姿を現さなかったわけだ。


 つまり――(いつの間にかアサの背後に)


△アサ:

 ……先生?きゃあッ!?

 (シャイニーロッドをもぎ取られる)

 

×担任:

 どちらか一つでもアイテムが欠ければ、契約は果たされない――。

 そういうことだな?


〇モニカ:

 え……センセー?


□ステラ:

 な、何をしていますの……?

 ツキカゲ先生、ロッドをこちらにくださいましっ、契約ができませんわ。



×担任:

 先生、か……。(嘲嗤う)――――このマヌケが。



〇△□一同:

 ッ――!?


×担任?:

 フッ、契約なぞさせるか。

 妖精共にも、貴様らハレルランド人にも、もっと悪夢を味わってもらわなくては面白くない。


◎シャイニー:

 その口調……オメー。


□ステラ:

 何を……いえ!(担任に杖を向ける)


 ――アナタ、何者ですのッ!


×担任?:

 華麗に名乗りを上げるならば、相応の舞台が必要だ。そうだろう?


□ステラ:

 『アース・エレメント』!!

 ピクシープラントよ!奴を拘束なさい!!


(大量の植物の根が担任に襲い掛かる)


×担任?:(ふわりと回避し、集会場の屋根に着地)

 おっと!危ない危ない。

 強力な呪文だがノロマな詠唱で助かった。さすがは優等生。


□ステラ:

 くっ!!


×担任?:

 では諸君。ご照覧あれ。

 今宵この満天の夜(せかい)を、我が君に捧げよう……!


 グナーイン……グナーイン(呪文)。

 降りろ!(指を鳴らす)――『ミッドナイト』。





(フェアリー学園を、黒いトバリが包み込む)


△アサ:

 うぅ、急に……すごく眠たく。

 こ、これって……。


□ステラ:

 逸話にあった、闇のトバリ――!?

 うっ……身体の力が……この、ワタクシが……。

(眠気で膝から崩れ落ちる)


◎取り巻き令嬢A:

 お、御姉様……!お逃げください、まし……。


×取り巻き令嬢B:

 ZZZ……!(凄まじいイビキ)


〇モニカ:

 アサちゃん!ステラちゃん!

 っ……みんな!?


◎シャイニー:

 モニカ、オレっちから離れるなよ!

 他のやつみたいに眠っちまうぜ!


〇モニカ:

 シャイニー!

 みんなどうしちゃったのっ!?

 あたしは何ともないよ!


◎シャイニー:

 トバリの中は、夜の呪いで満たされてる。

 人間も妖精も大地も、成すすべなく眠っちまうのさ。

 オメーが平気なのは、オレっちの光で守られてるからだ!


〇モニカ:

 アサちゃん!ねえ、アサちゃん!ステラちゃんってば……!

 だめだ……全然起きないよ。


◎シャイニー:

 無理だ。何をしたって、ずっと眠り続けるぜ。

 それがトバリの力なんだ。


×担任?:

 イエス、邪魔者にはご退場頂いた。

 スヤスヤと、永劫の悪夢の彼方へ、グッナ~イン。


〇モニカ:

 なんで……どうしてこんなことするの、センセー!!


×担任?:

 話を聞いてなかったのか?先生はお遊びだ、バカめッ。

 グナーイン!(指を鳴らし、姿が変わっていく)


◎シャイニー:

 シャイニングだぜっ……!真っ黒な月の仮面……ってこたぁ。

 やっぱオメー、人間じゃねぇな。



×ファントム:

 フッ――我が名は「ナイトファントム」!

 ナイトパレスの大幹部にして、月の女王の第一のしもべ!


 マイクイーンの命により、太陽の妖精を出迎えに上がった。

 ここの人間共をひどい目に合わせたくなければ、おとなしく捕まるがいい――太陽の妖精。



◎シャイニー:

 そのセリフはウン百年前にも聞いたぜ?

 テメーらオレっちのストーカーかよ~。モテモテ過ぎて辛ぇな~。


〇モニカ:

 シャイニーを捕まえる?

 そんなことして、どうするつもりなの。


×ファントム:

 貴様のような脇役には関係ないことだ。そこで舞台を眺めていろ。


〇モニカ:

 関係あるよっ!

 だって……だってあたしは……。シャイニーと……。


×ファントム:

 ……ふーん。その不安そうな表情。イイナ。

 必死さの中に隠れた、深い自信の無さが伝わってくるぞ。

 俺が見たいのはソレだ。


〇モニカ:

 え……?


×ファントム:

 周りの眠った連中を見てみろ。

 苦しい、悲しい、痛み、怒り、不満……そして恐怖!


 そんな絶望的に歪んだ顔を我が城に並べてコレクションする。

 それが俺の望みだ。


〇モニカ:

 ひどいよ……そんなことのためにみんなを!


×ファントム:

 おお、いいぞその顔!


 まだまだこんなものではないぞッ!

 太陽の妖精を我が君に差し出せば、世界中の人間を絶望のどん底に突き落とせる!

 あの方はそう約束してくれた!!

 その日が待ち遠しくて堪らないッッ絶望のパラダイスだ!!!

 フッハハハハ!!


◎シャイニー:

 ゲス野郎め……。


〇モニカ:

 ――させないよ。そんなの。(シャイニーを庇うように立つ)


×ファントム:

 ……何の真似だ。


◎シャイニー:

 モニカ……?


〇モニカ:

 行っちゃダメだよシャイニー。

 誰かの犠牲になるなんて……そんなの、全然グッドじゃない!

 あの悪い奴は、あたしがどうにかする。


×ファントム:

 どうにかできるのか?この俺を?

 学園の人間はみんな眠った。助けも来ない。動けるのは貴様たった一人。

 ククク、落ちこぼれに何ができる。 


〇モニカ:

 それでも戦うよ、シャイニーは絶対渡さない。帰って!!


×ファントム:

 っ……!!(モニカの輝く目に、寒気を抱く)


◎シャイニー:

 本気か、モニカ?

 契約できないオレっちは力を貸せないんだぜ。

 逃げたって、怒んないぜ。


〇モニカ:

 ……シャイニーとはさっき出会ったばっかりだけど、なんでか分かるんだ。

 ちょっと似てるからかな。今のシャイニーは、シャイニーらしくない!つまり、あたしらしくない!


◎シャイニー:

 ――っ!!


〇モニカ:

 どんな時でも、太陽みたいに明るく元気に!それが!!

 きっとあたし達のモットー、でしょ!


◎シャイニー:

 ……………ああ。そうだぜ……!

 シャイニー!!分かってんじゃねーかモニカ!!

 さすがはオレっちが見込んだパートナーだ!

 

〇モニカ:

 えへへ、それほどでも~。


◎シャイニー:

 でも、戦うったってどうすんだー!

 正直に言うと、エレメントが使えないのは厳しいぞ?

 オレっちも今のままじゃ、ただのふわふわ漂うマスコットだし~。


〇モニカ:

 うぐ。面目ない……。

 でもでも大丈夫!グッドアイデアがあるよ!


◎シャイニー:

 おおおお!なんだなんだ言ってみろ~!


〇モニカ:

 あたしがシャイニーと契約して、なんかすっごい力でドッカーンってすればいいんだよっ!!


◎シャイニー:

 ズゴーー!すっごい力でドカーンってなんだ~!期待して損したー!

 だから~、オレっち今契約できないんだっつーの。

 契約にはロッドとペンダントのセット!

 ロッド、アイツに取られてんじゃん!


〇モニカ:

 うん!だからだよ。

 あいつからロッドを取り返して、契約する。

 それで全部解決でしょ?


◎シャイニー:

 っ……。なるほどな。

 シャイニングなアイデアだぜ……!

 やれるのか、モニカ!


〇モニカ:

 あたしを誰だと思ってるの!

 いたずらっ子なカラスに比べればあんな奴、どうってことないよ!


◎シャイニー:

 それもそうだなぁ!


(ファントムに向かって)

 テメーなんて大したことないよ~だ!べろべろべー!


〇モニカ:

 あたし達、戦うよ。

 アンタなんて全然怖くも何ともないもん!


 悔しかったらみんなを元に戻して、さっさとお家に帰りなさい!



×ファントム:

 ………………。(青筋が震える)


 その根拠の欠片もない「希望」とやらに満ち溢れた顔。

 虫唾が走るッ。俺がこの世で最も嫌いな感情だ。


 この俺を前に、大したことないだとッ……?

 怖くないだとッッ……!?


 ――いいだろう!!

 そんなに知りたければ、教えてやる!


 己が目に映る貴様等の絶望を――!

 夢に見る極上の悪夢を今――見せてやろうッ!


 『ミッドナイト・グナーイン』――!!


(生徒達から黒い瘴気が巻き起こり、空間に集まっていく)


〇モニカ:

 なに、あれっ!?

 みんなの身体から、黒い煙が出てきて、集まって……! 


◎シャイニー:

 気を付けろモニカ!

 なんか、ヤベェのがくるぜ……!


×ファントム:

 グナーイン……グナーイン(呪文)。

 現れよ!(指を鳴らす)―― 悪 夢 魔 人 オ ヤ ス ミ ン !!!


〇◎モニカ・シャイニー:

 ッ――!!



×オヤスミン:

 ――――オォォォオヤスミィィィィィィィイン!!(咆哮)



―――


――




◎シャイニー:

 で、デッケェ……!なんじゃコイツ~~ッ。


×ファントム:

 人間の悪夢……負の感情をエネルギーに産み出した魔人。

 俺の最高傑作さ。


 やれ、オヤスミン!


〇モニカ:

 まさか、そいつでシャイニーを捕まえる気……!

 シャイニー危な――。


◎シャイニー:

 違うぜ!!アイツの狙いは――!


×ファントム:

 貴様だ、モニカ。


 オヤスミン!!悪夢ビーム、発射ッ!!


〇モニカ:

 っ――!?!?


×オヤスミン:

 オヤスゥゥゥ――ミンミンミンミンミンミン!!


〇モニカ:

 きゃぁぁあ!!!(ビームが直撃する)


◎シャイニー:

 モニカッッ!!


〇モニカ:

 うぅっっ……しゃ、い……(眠くなり、倒れる) 


×ファントム:

 俺の前で希望を抱いた罪だ。

 深い夢の底で後悔し、永遠に絶望しろ。フッ――――。





(モニカの夢の中)


〇モニカ:

 ――……あれ。ここ、どこ……?

 シャイニー~!アサちゃ~ん!みんなどこ~!



□女生徒の声:

 ねぇねぇ聞きまして?あの子の噂。


〇モニカ:

 ……っ!?


△女生徒の声:

 学園の落ちこぼれ、モニカ!


□女生徒の声:

 迷惑な恥さらし、モニカ!


◎取り巻き令嬢A:

 いっつも問題を起こしてばかり!いい加減におし!!


×取り巻き令嬢B:

 目障りよ!やる気がないなら今すぐ学園から消えて頂戴!!


□女生徒の声:

 この無能!!話しかけないでくれるかしら!


△女生徒の声:

 劣等生!!同じ空気を吸わないでくださいまし!



〇モニカ:

 っ……これは夢……これは夢、これは夢……!

 み、みんなのところに戻らなきゃ。


△夢のアサ:

 …………モニカちゃん。


〇モニカ:

 あ、アサちゃん!?ここにいちゃダメだよ、一緒に逃げよ!


△夢のアサ:

 ……モニカちゃん、すごい妖精さんを見せてくれるんだよね?


〇モニカ:

 え……。


△夢のアサ:

 ……適性ないのに、どうやって妖精さんと契約するの?


〇モニカ:

 それは……シャイニーと……!


△夢のアサ:

 噓ばっかり。できっこないよ、だってモニカちゃん。


 ……落ちこぼれなんでしょ――?


〇モニカ:

 ……ッ!!


□夢のステラ:

 ……モニカ・アオゾラ。


〇モニカ:

 ステラ、ちゃん。


□夢のステラ:

 貴女が落ちこぼれで適性無しなのは当然ですわ。だって貴女。


 (邪悪な笑み)……妖精から嫌われているんですもの。


〇モニカ:

 ッ……で、でも、シャイニーは……。


□夢のステラ:

 誰が望んでいまして?

 だーれも貴女になんか、期待していませんわ!!


 貴女は退学よ。二度と学園に関わらないでくださいまし――。



〇モニカ:

 …………。

(全員消えて、一人ぼっちになるモニカ)



×ファントム:

 ――――ククク。理解したか?

 これが皆の本心だ。貴様の存在は邪魔でしかないんだってよ?


 元気や明るさで取り繕っても、心の奥底では誰かに自分を見つけて貰う事を求めている。けれど誰からも認められない、だから常に空回りする。愚かな少女。

 それがモニカ・アオゾラだ。

 可哀そうに……。


 しかし安心しろ。一つだけ、貴様を救う方法があるぞ?


〇モニカ:

 …………。

(ファントムを見つめる)

 

×ファントム:

 ……現実で認められないのなら――戻らなければいい。

 ここは素晴らしいぞ。貴様だけの夢の世界だ。


 貴様を認めてくれなかった世界を、ここで好き放題に滅茶苦茶にしても、誰にも咎められない。胸の内に溜め込んでいた薄暗い欲求を、ここなら自分勝手に爆発させられる。そうだろう?


 ずっとここに居ようぜ?


〇モニカ:(目に闇が灯る)

 …………。


×ファントム:(包み込む優しい声)

 ふふっ、何も難しいことはないさ。

 ここにいる俺もまた、貴様の夢の中の住人。

 俺がこれからずっと、そばにいてやろう。

 そして教えてやる――現実に蝕まれた自分の……壊し方ってやつを。


 さあ。(モニカに手を差し出す)


〇モニカ:

 ここで……ずっと……。

(ファントムの手を取ろうとする)



〇幼いモニカ:(泣きじゃくる子供)

 ――――おばあちゃぁぁぁぁぁぁん!



〇モニカ:

 ……っ!


□お婆ちゃん:

 よしよし。またこんなに泥だらけになってぇ。


〇幼いモニカ:

 みんなひどいよぉ!モニカのことうるさいって!あっちいけって!

 たのしくあそんでただけなのにぃ!


□お婆ちゃん:

 モニカは他の子より人一倍わんぱくだからねぇ。

 あたしは元気なモニカが一番好きだよぉ。

 

〇幼いモニカ:

 やー!モニカ、げんきヤメるぅ……!

 みんなといっしょがいいよぉ……。


□お婆ちゃん:

 モニカが元気なのは、健やかな印なんだよ。

 あの太陽さんも、元気いっぱいに輝いているだろぅ?


〇幼いモニカ:

 たいよーさん?


□お婆ちゃん:

 きっとお空の太陽さんも、元気で晴れやかなモニカが大好きなんだよ。


〇幼いモニカ:

 なんでー?なんで――



〇モニカ:

 ――なんでわかるの。お婆ちゃん。



□お婆ちゃん:

 それはねぇ。この石が輝いてるからさぁ。


〇幼いモニカ:

 それなにー!?ひかってるよ!


□お婆ちゃん:

 さあねぇ。もしかすると、太陽さんの落とし物かもしれないねぇ。

 だってほら。モニカの笑顔みたいに、サンサンと光っているよ。


〇幼いモニカ:

 わぁぁ……。

 たいよーさんも、サンサンしてる?


□お婆ちゃん:

 ああ。太陽もさんさんで、晴ればれしてるよ。


〇幼いモニカ:

 たいよー、さんさん!はればれー!わぁぁあ!――。


(幼いモニカが笑顔で走っていき、消えていく)



〇モニカ:

 ……。思い出した。あのペンダントは、お婆ちゃんの。



□お婆ちゃん:

 んふふ。(今のモニカの方を見つめる)

 ……ずっと持っていてくれたんだね。


 モニカなら、きっと大丈夫だよ。

 明るくて元気な、あたしの自慢の子。


 そんなモニカが、みんなちゃんと大好きだよ――――。


(お婆ちゃんが消えていく)



〇モニカ:(目に煌めきが宿る)

 っっ……!!✨



△夢のアサ:

 モニカちゃん!

 早く素敵な妖精さんに会いたいね~、一緒に見つけようよ!――。


〇モニカ:

 ……うんっ。


□夢のステラ:

 モニカ・アオゾラさん!

 いつまで寝ているつもりでして、責任もってこの状況なんとかなさいッ。

 貴女がいなかったら……ワタクシは誰に張り合えばいいんですのっ――。


〇モニカ:

 うんっっ。


◎夢のシャイニー:

 ――モニカ。


〇モニカ:

 シャイニー……。


◎夢のシャイニー:

 みんな、ちゃんとオメーを見てるぜ。

 じゃあ。オメーはどうしたい。帰ったら答えを聞かせろよなー!――。


(みんなが霧のように消えていく)



〇モニカ:

 ……みんな。お婆ちゃんっ✨


(気が付くと、手の中にペンダントがある)


(ペンダントを握りしめるモニカ)


×ファントム:

 ……。何をためらってるッ。

 悔しくないのか!?貴様を落ちこぼれだと罵った皆に、仕返しできるチャンスなんだぞ!!


〇モニカ:

 ――うん。あたしは学園の落ちこぼれ。

 授業の実験ではいっつも失敗するし、動いてないと気が済まなくて、うるさい奴ってよく言われる。妖精の適性もない。

 それが、あたし。


 他でもない、あたし自身が認める、大好きなあたし!


×ファントム:

 なんだとッ……!


〇モニカ:

 良いところも悪いところも、ぜんっぶ合わせて、あたしらしさなの!

 誰になんて言われても、関係ないもんっ!

 どんなにダメでも、バカでも!失敗しても、落ちこぼれでも!!


 アンタの誘いに乗るようなあたしは、あたしらしくない――!!


(ペンダントが光の閃光を放つ)


×ファントム:

 グッッッッ、バカなァ!?!?

 俺の悪夢の中で、ナゼ――!?



〇モニカ:

 どんな時でも、モーニングッド!


 ――それが、モニカ・アオゾラだよっ!!



×ファントム:

 ソンナ――バカナァァッッッ――――!!!


(光の中に消滅する)



間(現実)



◎シャイニー:

 くっそ!おい、放せよ~!!


(オヤスミンに捕まっている)


×ファントム:

 フッ、華麗に任務完了。

 それではゆこうか。我らが常闇の世界、ナイトパレスへ――。



〇モニカ:

 ……――(倒れているモニカのペンダントが光りの閃光を放つ)



×ファントム:

 ……ッ!?


◎シャイニー:

 っ!!モニカ……!


△アサ:(光に当たり、目覚める)

 ……モニカ、ちゃん。


□ステラ:(光に当たり、目覚める)

 っ…………!


◎シャイニー:

 あれは、オレっちと同じ光……!

 こりゃシャイニングだぜーーーっ!


×ファントム:

 どういうことだ。

 なぜ俺の悪夢から目を覚ませる……!?



〇モニカ:(立ち上がる)

 ――どんな夢も、いつかは覚めるんだよ。

 苦しいことなんて忘れて、朝が来たら起きあがれるの……!


 あったかくてぽかぽかな太陽の日差しが、みんな大好きだから!!



×ファントム:

 戯れ言を……!

 起き上がったところで、貴様一人に何ができる!!

 このロッドがなければ契約もできまい!


△アサ:

 ひとりじゃないよ、モニカちゃん……ッ!!

 

(いつの間にか駆け出し、ファントムの持つロッドにしがみつく)


×ファントム:

 なッロッドを!?手を放せ小娘!!


〇モニカ:

 アサちゃんっ!

 

△アサ:

 負けちゃだめだよ、モニカちゃん!

 先生、日差しが苦手って言ってたの……!


 (しがみついたロッドに唱える)

 え、えれめんと!光の妖精さん、ほんの少しでいい、光って!


×ファントム:

 キィ、呪文もまともに言えないカスが!邪魔を――。



□ステラ:

 お手柄でしてよ――『ライト・エレメント』!照らしなさいッ!!


(二人のそばまで来ていたステラがアサの手を握り、唱える)

(一瞬、ファントムの目の前に温かい光が生まれる)


×ファントム:

 ぐあぁぁっっ!?ヤメロッッ……!

(ロッドを手放し、光から逃げる)


×オヤスミン:

 オヤスミンンンンッ!?!?

(光にビックリして、シャイニーを手放す)


◎シャイニー:

 っぷは、ガッツ・シャイニーング!でかしたぜ二人とも!


□ステラ:

 今ですわクラインさん!シャイニーロッドを!


△アサ:

 はいっ!

 ……モニカちゃん!


〇モニカ:

 ……っ!


△アサ:

 夢の中で、ひどいこと言っちゃってごめんね……!

 落ちこぼれとか、適性がないとか、私そんなの気にしないよっ!

 だってモニカちゃんは……こんな私なんかをいっぱい助けてくれた、とっても心が温かい人なんだって知ってるから!


 だから、私と――お友達になってくださぁぁぁぁい!!

(モニカにロッドを投げる)


〇モニカ:

 アサちゃん――!!

 ……なーにいってるのっ!あたしとアサちゃんは、もうとっくに友達だよ!!

(ロッドをキャッチする)


△アサ:

 っっ……!!


□ステラ:

 ……まったくもって。酷い夢を見ましたわぁ。


〇モニカ:

 ステラちゃん……!


□ステラ:

 このワタクシともあろうものが、あのモニカ・アオゾラを鼓舞するだなんて、まさしく悪夢でしてよっ……!

 ……もう少し、この悪夢も続きそうですわ。


 ――モニカ・アオゾラッ!

 これは貸しでしてよ。奴を何とかしてみせなさい!

 それくらい出来なくては、ワタクシと張り合おうなんて100年早くってよっ!


〇モニカ:

 うんっっ!まっかせてよ!!


◎シャイニー:

 モニカ~~~!

 

〇モニカ:

 シャイニー!!


◎シャイニー:

 ……ムッフフ!

 寝起きにしちゃぁ、シャイニングな笑顔じぇねーの!

 

 どうだ。オメーのやりてぇこと、聞けそうか?


〇モニカ:

 うん。あたし、もう迷わないよ。

 自分に嘘はつかない!


 このペンダントみたいに、あたしらしく輝ける妖精使いになるっ!

 他のことは、なるよーになれだー!


◎シャイニー:

 シャイニー!そうだぜ。


(ボソッと)――だからオメーを選んだんだ。



×オヤスミン:

 ――オォォォヤスミィィィィィィィィン!!(咆哮)



〇◎モニカ・シャイニー:

 っ――!!


×ファントム:

 …………茶番はもう十分か、クソ共。


 俺は、あくまで紳士的に任務を達成するつもりだった。

 乱暴なことは嫌いなタチでな……。


 だが、忌々しく希望に満ちた貴様らの顔はッ!それ以上に嫌いだッッ!!


 オヤスミン!!

 もう暴れてもかまわん!コイツらに悪夢よりも恐ろしいものを見せてやれ!!


△アサ:

 モニカちゃんっ!!


□ステラ:

 来ますわよッ!


×オヤスミン:

 ――オヤスミィィィィィィィィン!!(咆哮)



〇モニカ:

 シャイニー、あたしの!


 ――モニカのパートナーになってよ!


◎シャイニー:

 シャイニーング!!その言葉、待ってたぜェェ!




【モニカ変身バンク】


◎シャイニー:

 シャイニーッ!!

 太陽の妖精の名において! 契約を執行するっ!


〇モニカ:『フェアリーコントラクト』――!!


(二人の世界が光に包まれる)


◎シャイニー:気合い入れてくぜぇ、シャイニー・ウォッチモード!

(シャイニーがウォッチに変化、モニカの手首に出現)


〇モニカ:お日様ペンダント、セット!

(ペンダントをウォッチの軸にセット)


◎シャイニー:太陽のペンダントウォッチ!!

       レッツ――!


〇モニカ:『ウェイクアップ』!


◎シャイニー:シャイニーーング!

(モニカの見た目と衣装が変化していく)


〇モニカ:

 太陽さんさん、晴ればれチェンジっ!


 ――ふぁんたじっく! マギアサンシャイン!!



〇モニカ:(空高く跳び上がって、晴ればれポーズ)

 煌めく朝日にレッツ! モーニングッーード♪✨✨



―――


――




□ステラ:

 なんですの……あの姿……っ。


△アサ:

 かわいい……!

 かわいくて――かっこいいい……っ!!


×ファントム:

 マギア……サンシャインッ!?

 なんだ、その――。



〇◎モニカ・シャイニー:

 なにこれええええええええええ!?!?



〇モニカ:

 えぇぇ!?

 なにこの服!髪ながっ!色も違う!

 それになんか……すっごくキュートだよ!?


 見て見てシャイニー!

 ……って、シャイニー?どこー?


◎モニカのペンダントウォッチ:

 オレっちはここだああああああ!!

 

〇モニカ:

 うえぇ、ウォッチから声が!シャイニーなの!?

 どゆことー!!


 これって、フェアリーコントラクトなの……!?


◎ウォッチ(シャイニー):

 オレっちにもさっぱりだぜ!

 なにせ契約自体、数百年ぶりだからよぉ。

 こんなだったっけか~?一応、契約は成立してるっぽいけどぉ。


〇モニカ:

 えぇ……まあ。(自分の姿を見返す)

 ……かわいいから良しとします!


◎ウォッチ(シャイニー):

 う~~ん……。

 ま、それもそうだなー。これでも問題ねーだろ!


□ステラ:

 おおアリですわよッッ!!

 こんな妖精契約は前代未聞……聞いたこともありませんわっ!


 ぬわぁんでフェアリーコントラクトで姿が変わるんですのよ!?


△アサ:

 いいなぁ、モニカちゃん……!

 私も変身できるかなー?


□ステラ:

 ありえませんことよっ!

 モニカ・アオゾラが異常なだけですわ……!



×ファントム:

 …………訳が分からん。

 マイクイーンは、こうなることを恐れていたのか……?


 まあ何でもいいさ。

 たかが小娘の姿が変わっただけに過ぎん!


 オヤスミン!その落ちこぼれを痛めつけてやれッ! 


◎ウォッチ(シャイニー):

 来るぞモニカっ。


〇モニカ:

 あわわわ!どうすればいいの!?


◎ウォッチ(シャイニー):

 何でもいいから攻撃を避けろ!


×オヤスミン:

 オヤスッッ、ミン!!(巨大な拳が迫る)


〇モニカ:

 ジャーーーーンプっ!!(天高く跳び上がる)


×オヤスミン:

 オヤスッッ!?


×ファントム:

 なにッ!?


□ステラ:

 なんですの、あのジャンプ力ッ!?


〇モニカ:

 うわー!すっっごすぎだよ~~!?(自由落下)


◎ウォッチ(シャイニー):

 浮かれてる場合じゃねえぜ!

 ほら避けろ避けろー!


×オヤスミン:

 ミン!ミンミン!!オヤスミンッ!!(連続攻撃)


〇モニカ:

 うわっとっとっと~!(落下中に攻撃が迫る)


 ホップっ!(避ける)

 ステップっ!(避ける)

 ジャーンプっ!!(避ける)


×ファントム:

 なぁッ!?空中を駆け回っている……だとぉぉ!

 何が起こっている!?


△アサ:

 すごいよモニカちゃんー!がんばってー!!


〇モニカ:(空をステップしていく)

 なんだか、ちょっと分かってきたかも!シャイニーの力!


◎ウォッチ(シャイニー):

 シャイニーング!身体も温まってきたみたいだなモニカ!

 まだまだこっからだぜっ!


×ファントム:

 なんつー動きだ……理解不能だ!


 もういいオヤスミン!

 もう一度、悪夢ビームを食らわせてやるッ!!


◎ウォッチ(シャイニー):

 さっきのやつが来るぞ!

 エレメントを唱える時間がねぇ、避けられるか?


〇モニカ:

 大丈夫っ!一緒にすれば、なるようになる!


◎ウォッチ(シャイニー):

 ッ!そういうことか……!


×ファントム:

 さすがにこれは避けられまい!ビーム発射ッ!


◎ウォッチ(シャイニー):

 『サンシャイン・エレメント』!


×オヤスミン:

 オヤスゥゥゥ――ミンミンミンミン!!


〇モニカ:

 ――『ぽかぽかシールド』!!

(瞬時に出たアサガオのバリアが、ビームとぶつかり防ぎ続ける)


×オヤスミン:

 ミンミンミンミンミンンンンンンン……ゼェ、ゼェェ。

(ビームが切れてしまう)


◎ウォッチ(シャイニー):

 シャイニーング!

 一緒にすれば、なるようになる、だぜ~!


×ファントム:

 小賢しい真似を……!


 フッ、だが逃げてばかりでは倒せないぞぉ?

 オヤスミンは学園全ての人間からエネルギーを吸収しているのだ。

 その程度のエレメント如きでは傷一つ付けられまい!


□ステラ:

 モニカ・アオゾラ!

 反撃しないことには何も始まりませんわッ!


 『アース・エレメント』!『アクア・エレメント』!

 マッドピクシーよ!魔人の足を拘束なさい!!


(地面が深い泥になり魔人の足を沈めていく)


×オヤスミン:

 オヤスゥ……?


〇モニカ:

 ステラちゃん!


×ファントム:

 足止めのつもりか?無駄だ。

 どのみちエレメントの攻撃は通じん。


 構うなオヤスミン、ビームをチャージしろ!

 最大火力で、奴の着地を狙え!!


×オヤスミン:

 オヤスゥゥゥゥゥゥ――――。(チャージ中)


□ステラ:

 くっ、あの魔人にエレメントは効きませんわ……!

 どうするつもり!?


◎ウォッチ(シャイニー):

 関係ねーぜ……こっちも最大火力だ!

 ぶちかませモニカァ――!



〇モニカ:

 いっくよおおおー!!


 ハァァァ!

 お日様ッッッパンチ――――ッ!!



×オヤスミン:

 オヤスブゥァッッ!?(直撃し地面に叩きつけられる)


×ファントム:

 はああ!?!?


〇モニカ:

 お日様ッッッキーーーック――ッ!!


×オヤスミン:

 オギャァァァァッ!?(吹っ飛ぶ)


×ファントム:

 ぐぉぉぉぉ!?


□ステラ:

 パンチって……キックって……っぷ、ふふ!


×ファントム:

 ……クソ!なんてデタラメな奴だ、ホントに妖精使いか……!?


◎ウォッチ(シャイニー):

 サイコーにふぁんたじっくな攻撃呪文だぜ~!

 名付けて、モニカ・エレメントっ!!


×ファントム:

 そんな呪文など無い!

 バカにしやがってッ……何をしている!立て、オヤスミン!!


×オヤスミン:(目がぐるぐる)

 オォ……オヤスゥゥ……。


×ファントム:

 チィッ、役立たずめが!

 そういうことか……マイクイーンは、こうなることを危惧して……!


 クソッこうなったらもはや、俺自ら――!


〇モニカ:

 ううん。終わりだよ!


×ファントム:

 ッ……!?


〇モニカ:

 オヤスミンはもう動けないんでしょ?

 だったらアナタの負けだよ!

 だから――諦めて帰りなさいっ!


×ファントム:(青筋が立つ)

 ……………………ハァ?


□ステラ:

 ……な、何を言っていますの、モニカ・アオゾラ!

 奴は月の女王のしもべと名乗ったんですのよ!なら倒すべき敵でしてよッ!?


〇モニカ:

 そうかもしれないけど、あたしはみんなとシャイニーを守るために契約したの。

 誰かを傷つけるために戦いたいわけじゃないっ!


 シャイニーもそうだよね?


◎ウォッチ(シャイニー):

 オレっちは、モニカの意志に従うぜ~。

 そいつが危険な野郎なことには違いねぇけど、モニカが倒さないってんなら、倒さない!とっとと尻尾巻いて帰りなぁ!


□ステラ:

 あ、アナタたち……まったく。(溜息をつく)


△アサ:

 私も……!モニカちゃんに賛成だよ。

 先生もちょっぴり、かわいそうだし……。


×ファントム:

 ギィッ…………!


〇モニカ:

 グッド!そういうことっ!


 だから――ファントム。

 もうこんなことやめてさ、みんなを元に戻して、アナタのお家に帰って休もう。ね?



×ファントム:

 そんな無様な真似ができるかァア――ッ!!



〇モニカ:

 っ!?


×ファントム:

 どいつもこいつも……この甘ちゃん共がッ!

 何の成果も上げずに、ノコノコと帰れるわけがないだろうが……!

 

 俺は大幹部ナイトファントムだッ、マイクイーンに愛されし右腕なんだッ!

 忠義を果たさなければ、俺の存在する意味が――。


〇モニカ:

 その、マイクイーンさんが……怖いの?


×ファントム:

 ッッ……!!

 そ、そんなわけ。

 俺は、マイクイーンの寵愛を受けているのだ……!

 忠誠は誓っても、我が君を恐れるなどっ。


〇モニカ:

 だって、すごく顔色が悪いよ。

 帰ったら怒られるの?アナタのお家なのに?


×ファントム:

 ……ガキには分からん世界だッ。


〇モニカ:

 わかるよ!

 アナタ、ずっと不安で怯えてる。いじめられてたあたしみたいに。

 傷つきたくないって聞こえるよ……!


 だから、帰れないの?

 

×ファントム:

 知ったような口を聞くなッ、貴様に俺の何が――。



〇モニカ:

 ……あたしは、アナタも心配だよ。


 ――ねぇ。大丈夫?



×ファントム:

 ――――!



間(ファントムの記憶)



□優しい声:

 ――こんなところでどうしたの!大丈夫?





×ファントム:(頭痛)

 ――――グッ!?ウゥゥ!!


〇モニカ:

 っ……!?どうしたの!!


◎ウォッチ(シャイニー):

 離れろモニカ、様子がおかしいぜっ!


×ファントム:

 …………ヤメロ。俺にそんな目を向けるなッ。

 マイクイーンは望んじゃいない!

 我が君は……我が、ヨルトバーリ様の望みは……!


△アサ:

 先生……!


×ファントム:

 ……果たさなければ。あの方の望みを。どんな手を使ってでも――。

(詰め寄り、アサに掴みかかる)


△アサ:

 きゃぁぁあッ!?


〇モニカ:

 アサちゃん!!


×ファントム:

 近寄るなッッ!コイツがどうなってもいいのか!!


□ステラ:

 クラインさんっ!


△アサ:

 う……うぅぅ!(首を絞められる)


◎ウォッチ(シャイニー):

 オメー、正気か……?


×ファントム:

 なんとでも言え。俺は使命を全しなければならない!


 モニカ・アオゾラ!

 コイツを解放して欲しければ、太陽の妖精をよこせッッ!


△アサ:

 ぐ……ううぅぅ――――。


〇モニカ:

 だめだよ、ファントム……!(心配そうに見つめる)


×ファントム:

 そ、そんな目で俺を見るな!俺を憐れむな……!!

 俺は、何としてでも……それだけが、オレの……――。




△アサ?:

 ――――――……無様ね。




×ファントム:

 な……なんだとッ!


△アサ?:

 いつまで待たせるつもり?時間が掛かり過ぎよ――愚図が。


×ファントム:

 ――――ッッ!!(血の気が引く)

 そ、その、お声はッ……!?


△アサ?:

 気になって来てみれば、貴様。私の前でどこまで醜態を晒せば気が済むの。

 ――――控えろ。



×ファントム:

 は、ハハァァァァァッ!!(地面に深く平伏する)



〇◎□一同:

 ッ……!?


×ファントム:

 面目次第もございません……!

 しょ、少々イレギュラーな事態が……。


△アサ?:

 言い訳は無用。

 この私を失望させないで。


 お前はもう何もしなくていいわ。トバリを維持しなさい。

 私は――奴と話してくるわ。


×ファントム:

 ぐっっっ……。(下唇から血が滴る)


 イエスッ、マイクイーン……ッ!!



〇モニカ:

 ……アサちゃん、なの?


□ステラ:

 その目は飾りですのっ、モニカ・アオゾラ。

 アレのどこが、クラインさんでして……!


(アサに杖を向けるが、震えが止まらない)


△アサ?:(闇のオーラが漂う)

 ……ふふふ。


 400年ぶりかしら――忌々しい妖精王。


◎ウォッチ(シャイニー):

 よお~。オメーも相変わらずだな、魔女っ娘。


△アサ?:

 年長者は敬うべきよ、坊や。


 私を封印し、仮初の平和ごっこに興じていたようだけど。

 それも今日でおしまい。


 本当の悪夢はここから始まるの。

 

〇モニカ:

 アサちゃんはそんなこと言わないよ……誰っ。


△アサ?:

 ――ヨルトバーリ。

 偉大なる月の女王よ。控えなさい、小さな契約者。


□ステラ:

 月の……女王ッ……!?

 まさか復活していたなんて……!


〇モニカ:

 アサちゃんはどうしたの!


△アサ(ヨルトバーリ):

 この胸の中でグッスリと眠っているわ。

 これからも、永遠にね……。


〇モニカ:

 アサちゃん……!


◎ウォッチ(シャイニー):

 オメーこそ、まだ寝ぼけてんじゃねーか?

 力が戻ってないから、その子に憑依するしかねぇんだろ。

 

 寝起きでおめかしが整ってねーんなら出直してきなっ。


△アサ(ヨルトバーリ):

 これで十分よ。

 お前たちはこの子を傷つけられないでしょ。


 なら――私を止めることは出来ない。グナーイン!(呪文)


×オヤスミン:

 オヤスゥゥゥ……――。

(消滅し、闇のエネルギーに変わってアサの手に収束される)


□ステラ:

 魔人をエネルギーに……!?


 させませんわ――(杖を構えるが)ッ、エレメントが使えない!?


△アサ(ヨルトバーリ):

 部外者は這いつくばってなさい。


□ステラ:

 ぐぅっっ!!

(闇がステラを押さえつける)


△アサ(ヨルトバーリ):

 派手に、散れ――。


(指を鳴らし、エネルギー弾が結界に直撃)

(地響きが起こる)


□ステラ:

 っっ!?太陽の結界に、ヒビが……!!


〇モニカ:

 そんな……!!


△アサ(ヨルトバーリ):

 この結界も時期に消え去るわ。

 そして再び夜が満ち、月が再臨する――。


 ……ッフフフ!ウフフフフフフフ!!


 さあ。



(音を立てて、結界に巨大な亀裂が走っていく)


〇□モニカ・ステラ:

 ッッ――!!



△アサ(ヨルトバーリ):

 暗黒の時代よ――。



〇モニカ:

 …………シャイニー。


◎ウォッチ(シャイニー):

 なんだ?もしかしてビビッてんのか?


〇モニカ:

 っ……!


◎ウォッチ(シャイニー):

 そんな曇り顔――オメーらしくもねーぜ。つまり、オレっちらしくもねー!


〇モニカ:

 ……ッ!あたしたち、らしく。


◎ウォッチ(シャイニー):

 ラスボスが出てきて、友達が乗っ取られて、結界が壊されそうになって。

 それがどうした?


 そんなの大した問題じゃねーよっ。


〇モニカ:

 ……!✨


◎ウォッチ(シャイニー):

 オメーとなら、きっと大丈夫だぜ。シャイニ~!


〇モニカ:

 ……ぷははっ。

 ずっと思ってたけど、シャイニーって結構のんきだよね~。


◎ウォッチ(シャイニー):

 その方が楽しいだろー!

 明るくて元気なパワーが世界を救うっ!

 

 それが、オレっち達の十八番じゃねーかぁ!


 サイコーにシャイニングだぜッ!


〇モニカ:

 ……うん!あたしたち今、サイッコーにグッドだね!!


◎ウォッチ(シャイニー):

 おいおいそこはシャイニングだろ~!


〇モニカ:

 グッドだよー!


◎ウォッチ(シャイニー):

 シャイニング!


〇モニカ:

 グッド!


□ステラ:

 アナタ達ッ!!遊んでる場合じゃありませんわよッッ!



◎ウォッチ(シャイニー):

 ――ほんじゃま。尺も大詰めだ。

 やるか、モニカ!


〇モニカ:

 ――うん。シャイニー!



(結界の亀裂が広がっていく)


△アサ(ヨルトバーリ):

 ……何ができるというのッ。

 私に攻撃すれば、ダメージはこの子に行く。

 

 この子を犠牲にする以外、お前たちに私の力を止める術はないのよッ!


◎ウォッチ(シャイニー):

 誰が決めたよぉ、そんなこと。


〇モニカ:

 アサちゃんも、ステラちゃんも、学園の人もみーんな助けて!

 ハレルランドの太陽を守る!


◎ウォッチ(シャイニー):

 それが、オレっちとモニカが契約したサイコーの力――!


〇モニカ:

 それが、あたしとシャイニーの無敵の魔法!

 ――マギアフェアリーズだよっ!!



△アサ(ヨルトバーリ):

 ッ――――――忌々しい妖精共が!


(手に闇のエネルギーが迸る)



 ――ここは私の世界だッッッッ!!

 余所者が、土足で踏み入るなど断じて許さないわ――ッッ!!!!


(エネルギーをモニカ達に向ける)


 終わらせてあげるッ!!



◎ウォッチ(シャイニー):

 ノットシャイニ~ング!

 フィナーレにはちーっと早いぜぇ~?


 だってよぉ、まだお決まりの“アレ”を見せつけてねーだろ!?


〇モニカ:

 みんなまとめてまるっと解決できる、グッドな方法は一つ!!


 ――「なんかすっごい力でっ!ドッカーーーンってすればいいんだよっっ!!」


◎ウォッチ(シャイニー):

 かますぜモニカー!!必殺技だぁぁあああ!!



【モニカ必殺バンク】


◎シャイニー:シャイニー!!『ゲット・アップ』!


〇モニカ:お日様ペンダント、セット!

(ロッドに太陽のペンダントをセットする。ロッドが光って変化)


◎シャイニー:モードチェンジ!「サンシャインロッド」!


〇モニカ:お日様・チャージ!!

(ロッドに輝きが集まっていく)


◎シャイニー:気合い入れろよォ――フルチャージ!シャイニーGO!!


〇モニカ:サンサンと照らす、煌めく朝日を浴びなさい!

 

     必殺――『シャイニングッド!モ――ニングッッ!!』


(ロッドから放たれた光の閃光が迸り、トバリ全体を包み込む)


×ファントム:

 なッッッ――――。


△アサ(ヨルトバーリ):

 そんなまさかッッッグッ――――!!!!!!


×ファントム:

 ヨルトバーリ様ぁぁあああ!!!!(閃光からアサを庇う)

 グァァァァアアアッ!!!!


△アサ(ヨルトバーリ):

 グゥゥゥゥゥゥ……!?!?(光に飲まれる)


 ッッ―――シャイニィィィィイイイイッッ!!

 このままでは終わらせないわ!!!いつか必ず――ッッ!!


◎ウォッチ(シャイニー):

 またぶっ飛ばしてやるからよ~~、いつでもかかってきなァ!!

 あばよーーーーロリババア!!


△アサ(ヨルトバーリ):

 ッッッッ――――!!!!(ファントムを闇のゲートに投げ入れ、消滅)



(闇のトバリが完全に消滅。集会場を照らす輝く青空に、花々が咲き誇る)



□ステラ:

 …………すごいですわ。

 これが、あの子達の……太陽の力――。



◎ウォッチ(シャイニー):

 シャイニ~~~ング!


〇モニカ:

 モーニングッドっ♪



―――


――




△アサ:(目覚める)

 ――……ぅう……あれ、ここ。


□ステラ:

 目が覚めました?


△アサ:

 ステラ、ちゃん……。

 あ……!ごめんなさい、ステラ“さん”!


□ステラ:

 今更ですわ。

 特別に、ちゃん付けで構わなくってよ。


〇モニカ:

 アサぢゃああん無事でよがっだよおおおお!!


△アサ:

 モニカちゃん……!


□ステラ:

 生徒達も無事ですわ。

 まったく。この事態、理事長になんて説明すればいいんですのよ……。


△アサ:

 私、途中から寝ちゃってたのかな……。

 本当に夢みたいな出来事だったなぁ……。


◎シャイニー:(唐突に登場)

 ――夢じゃないぜぃ♪


△アサ:

 ふええっ!?


◎シャイニー:

 オメーにも、オレっちとモニカのサイコーな技を見て欲しかったぜー!

 いや、オメーは食らった側だっけか!シャイニ~!


〇モニカ:

 ちょ、シャイニー!そのことは、しーだよ!しー!


△アサ:

 ……?


□ステラ:

 気にしないでくださいまし……。

 そんなことよりも――モニカ・アオゾラっ!

 問題が山積みでしてよ!お分かり?


〇モニカ:

 え、なにが?


□ステラ:

 「なにが?」じゃありませんわよッ!

 貴女は、このワタクシを差し置いて太陽の妖精と契約してしまったんですのよ!?

 事の重大さが分かっていますの!?


〇モニカ:

 でも悪い奴追い払ったからいいじゃーん。


□ステラ:

 それとこれとは話が別ですわッ!

 これはハレルランド国民全体の問題でしてよ!

 すぐに学園と連絡を取って、中央会議に事の次第を――。


〇モニカ:

 そういえば、そっか……!

 あたし、シャイニーと契約しちゃったんだぁぁ!!

 伝説の妖精が、あたしの、パ~トナ~~~…むふふふふ!!

 やったやったー!!


□ステラ:

 ちょっと、話を聞いていましてっ!!


〇モニカ:

 シャイニー!これからよろしくね!!


◎シャイニー:

 ――あ~~~~~。

 いや~~、そのことなんだけどな?


〇モニカ:

 ……うん?


◎シャイニー:

 えー、ごほん。

 オレっちたち、あの時契約して、変身して、すっごいバトルをしただろ?


〇モニカ:

 ……?

 うん、したけど。


◎シャイニー:

 で、必殺技もぶちかましたろ?


〇モニカ:

 うん。


◎シャイニー:

 なんつーか、その時にパワーを使いすぎちまったのかな~~~~。

 ……変身解けて、まああれだ。それと一緒に。


 ――――契約も解けちまったあ☆


〇モニカ:

 ほへー。契約解けちゃったのかぁ。

 じゃあしょうがないねー。


 …………え?


□ステラ:

 え――??


△アサ:

 え…………???


◎シャイニー:

 え、えへへ~。なんてこった~、こんなことってあるんですねぇ。

 しゃいにーんぐ……!



〇□△みんな:

 ――ええええええええええええッッ!?!?



〇モニカ:

 どどどどどど、どういう――。


□ステラ:(遮る)

 どういうことですの!?契約が破棄ですって!?

 そ、それじゃあ今度はワタクシと――。


△アサ:(遮る)

 モニカちゃんのこと嫌いになっちゃったの!?


〇モニカ:(遮る)

 なんでなんで!?説明してよシャイニー!!


◎シャイニー:

 あ、あ、ああ~~。

 なんだかオレっち、聖なるパワー使いすぎてめちゃ眠くなってキタナ~~。


 ほんじゃま皆の衆そゆことで。

(モニカのウォッチの中に消えていく)


〇モニカ:

 あっっ!!ちょっとっ!

 どういうことなのおおお~~!!


 シャイニ~~~~~~~~~~――――。


(モニカの声が虚しく学園に響く)



―――


――




(ナイトパレス)


△ヨルトバーリ:

 ――――ッッ!(憑依が解け、目を開ける)


□ナイトメアリー:

 お帰りなさいませ、女王さ……ッ!?

 (ただならぬ気配を感じ取る)


×ファントム:

 ――ぐはぁ!?ゴホッ、ゴホォ!!(闇のゲートから放り出される)


□ナイトメアリー:

 なッ、ファントム!?

 女王様、これは一体……!


△ヨルトバーリ:

 …………フフフ。(目が笑っていない)

 

 メアリー。


□ナイトメアリー:

 ――っ!!(何かを察し、平伏して申し出る)


 ……女王様。私をお使いください。

 愚弟なファントムに代わり、この私が奴を捕えて進ぜましょう。


△ヨルトバーリ:

 いいわ、お前の出番よ。

 必ず捕まえなさい。


 念のため、「ロッド」の使用を許可するわ。


□ナイトメアリー:

 ――ッ!


×ファントム:

 っっ……!?(倒れたまま青ざめる)


△ヨルトバーリ:

 この意味が、分かるわね?


□ナイトメアリー:

 ……ははっ!必ずや。


 グナーイン――。(闇の中に消える) 




△ヨルトバーリ:

 ――400年前の奴には、あんな力は存在しなかった。


 ……マギアフェアリーズ。

 今宵は実に楽しませてくれそうね。


 ………………ウフ。ウフフフフッ――――。








一話、終わり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ふぁんたじっく♪マギアフェアリーズ @murota

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る