反撃開始

 夏休みの間、「サクライ ショウ」のアドバイスを考えていました。

一番強いのは誰か?

クラスに腕力の強い子はいます。しかしイジメの「トップ」ではない。

イジメの「トップ」はあの担任の女教師です。

しかし、教師に殴りかかっても、何か違う。

考えた末の結論は、イジメとは対象者の嫌がることをすることです。ですから私も、あの教師の嫌がることをすればよい。

では、何を行えば一番嫌がるか?

相手は教師、であるなら「授業妨害」が一番効くだろう。


 まずは、音楽の授業。

合唱の時、私は、あえて大きな声で音程を外して歌いました。

教師は、睨みつけてきましたので、「授業でも口パクですか?」と聞いたら、無視されました。

私の勝ちです。


 その後の音楽の授業では、常に音程を外して、できるだけ周りが私の声で音程を外す様に歌いました。

結果、大人になった今では完全な音痴です。

しかし、恥ずかしいとは思っていません。意識してなった音痴です。音痴に誇りを持っています。

現在、カラオケに行くと、私の声では周りの人に迷惑を掛けます。ですから、極力カラオケには行かない様にしています。


残念ながら、音楽の授業は二週間に一回。これだけでは、教師イジメになりません。

コマ数の多い国語の授業でもトライしました。

ただ、デタラメな日本語を書いていても、授業妨害になりません。

教師の説明でおかしな部分があれば指摘、要するに揚げ足を取るしか方法がありません。

しかし、「表現がおかしい」などと指摘しても、「そうなっている」で終わり。

残念ながら、国語や社会などの文系の科目では勝ちがありません。


 しかし、理系科目では、多くの人が認める形で、間違った箇所の指摘ができます。

例えば、「生物は海から進化して、陸へ上がった。魚類から両生類、爬虫類、哺乳類へと進化した」

この様な説明を教師がしたので、突っ込みました。

「海に居る魚から両生類へと進化したなら、進化途中の海に居る両生類は何ですか?」

教師は、調べて明日答えると。そして、翌日、回答なし。

私の勝ちです。

「生徒と約束しても破る。そして何も言わない。それなら私も宿題はやる必要ないですよね。」

正直、ホットしました。調べると、汽水域に「カニクイガエル」がいます。後で調べると、陸上から汽水域に戻る進化をしたようですが、小学生ではそれ以上調べられませんでした。


 理系科目なら、事前調査をしっかりすれば、教師のミスに突っ込めます。

無論、教師以上の知識習得が必要です。

あの女教師は理数系が弱そう。しかし、事前にミスをしそうな所、そしてその正しい内容を知っておかねばなりません。

しかし、この作業、普通の学習より楽しい。図書館に入りびたり、学芸員や司書に聞きまくる日々でした。


 気が付いた、得意科目は文系から理系へ変わっていました。

小学三年までは、世界の民話や神話を読むのが好きだったのですが……

ともかく、週に数回、授業妨害できる様になりました。


 授業中は、教師から当てられることが無くなり、教師からのイジメは少なくなりました。無視されたといえばその通りですが、私にとって嫌な思いは少なくなりました。

しかし、生徒からのイジメは続いていました。

休み時間、誰も話しかけてきません。席を離れると、椅子が部屋の片隅に投げ出されます。鉛筆の芯はすべて折られます。昼食時、誰かが机にぶつかり、皿やコップを落とされます……

耐えられなくなると、友達のいるクラスへ避難しました。

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