先輩からのアドバイス

 七月に入った頃だったと思います。

下校の時、靴が見つかりません。だいぶ探しましたが見つからない。仕方ないので裸足で帰ろうと覚悟を決めて歩き始めた時、声を掛けられました。

「どうした?」

近所に住む五年生です。悪ガキで有名な子供でした。ご近所さんから「話をするな」と言われている子供でした。

靴が見つからないことを話すと、「見つからないだろうな」と。

彼が隠したかと疑っていると、彼から驚く提案。

「おぶって行こうか?」

話をまとめると、彼の靴を交代で履いて、相手をおんぶして帰ろうと言うことです。

「おまえは体が小さいから、電柱の間ひとつで交代、俺は五年生だからふたつぶんをおんぶする。」


 おぶされた時、彼のイガグリ頭のあちこちに傷があるが分かりました。多分ケンカでできた傷なのでしょう。

お互い小学生、七月だということもあり、ニ・三キロ位歩いた所でお互い汗だくになり、休憩しました。

その時、彼からのアドバイスがありました。

「ケンカする時は、一番強い相手に向かえ。

弱そうなやつの相手はするな。仮にそいつに勝っても次が出てくる。

弱そうなやつでも、おまえは多分負ける。どうせ負けるなら一番強いやつとやって負けろ。

つるんでいるやつらは、トップが怖いから一緒にいる。

そのトップにおまえは挑んだんだ。取り巻きはもうおまえに挑まなくなる」


 鵜呑みにはできませんが、彼なりのアドバイスです。それは小学四年生でも分かりました。

夏休みの間中、彼のアドバイスをどの様に使ったよいか考えました。

そして、二学期が始まり、彼のアドバイスに基づく対応を実行しました。

残念ならがら、彼は翌年、引っ越して行きました。


 因みに、彼の名前は、「サクライ ショウ」と言います。

漢字は分かりませんが、読みはあの「嵐」の櫻井翔と同じです。

櫻井翔の名を知った時、「サクライ ショウ」のいがぐり頭とその傷を鮮明に思い出しました。ものすごい違和感があります。

櫻井翔と「サクライ ショウ」が別人であることは間違いありませんが、櫻井翔に違和感と共に親しみを感じています。

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