猫の夢
ユーTA
好奇心は猫をも殺す
あ、これはきっと夢だ。
少年は思う。目の前にあるのは一見何の変哲もない日常の風景のように見える。よく喋る母が冗談を言って、父が笑っている。ただその団欒の横には腹部から内臓が飛び出てしまった猫がいる。夢らしい奇妙な光景、そして自分はそれに違和感を抱くことが無い。ああ可笑しい。可笑しい夢だ。そう夢に違いない。こんなおかしな光景が夢じゃないわけが無い。絶対そうだ。あの両親がそんなことする訳ない。
覚めろ、覚めろ悪い夢。
____目が覚めた。良かった。やっぱり夢だ。両親があんなことする訳ない。
少年はほっとして時計を見て時間を確認しようとする。
時計は無かった。その代わり「あの猫」がいた。
ああそうかこれも夢だ。また夢だ。可笑しい夢。
なんなんだこの猫は、
「僕が何が悪いことしたか?!」
少年は自暴自棄になって答えが来ないことを分かっていながらも問いかける。
彼は覚めろ覚めろと祈る。
視界がぼやけてゆく。よかった。夢が覚めてゆく。
____目が覚めた。ああ、今度こそ現実だ。痛みを感じることを確認しながら少年は安堵する。そして気がつく。いや、思い出す。少年は猫を轢いたのだ。事故では無い。好奇心で。
罪悪感は感じている。しかしそれ以上に可笑しいのだ。先程まで生きていて、心臓が動いていて、およそ37℃ほどの温度を持った生き物が、ただの自分の好奇心で死んでしまったことが。その可笑しさが自分のことながら恐ろしかった。
僕が心を痛めているからきっと夢にまで見たのだ。良かった。心を痛めることができるなら僕はまだ人間だ。
僕は眠る。安心して眠る。きっとまたあの猫の夢を見る。
だって心を痛めているから。こんなに素晴らしい事はない。
良かった。ああ、おやすみなさい。
猫の夢 ユーTA @SqNTq-youta
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