第34話 食人植物
早朝、宮武は事務所で目を覚ます。
デスクがヨダレの池。ぐったりと
気づくと、頭が焼けるように熱くて痛い。首から上があまりに重く、しばらくほおづえをついたまま動けずにいた。
それにしても記憶がない。目の前には空の缶チューハイの山。そうか、確か昨晩は事務所でプチ祝勝会だったはず。その後も飲み続けていたと思うんだが………。
サッパリしようと事務所の洗面へ歩き出す。そんなとき見上げると、天井には血のあとを発見した。
「そうだっ! 思い出した!!!」
思わず
ギザギザの刃で切られたんだ。あのとき、
1人になった深夜でのこと。なにやら天井から血。怪しんで上の階へ向かうと、わけもわからず大広間に案内された。そこで
だが今、自分の
ふ~~~……。なんだ、夢だったか。ホッとするのもつかの間。よく
「そんなバカな!」
あわてて上の階を確認する。しかし、なぜか空室。
思わず
「おまえの身代わりを用意しろ」
冷や汗が滝。あのときのトビラは異世界との境界だった。決して立ち入ってはいけない。これは助かったんじゃない。
おどし。それは戦わないために必要なのか?
おそらくそれは始まりの
爆風で死ぬならまだマシ。死にそびれて全身から血が
そんな地獄絵図も数十年たってしまえば、二日酔いの夢だった。正義だったと花を
もしくはもののけの
ちなみに神社が存在する前から、鳥居は存在する。誰がいつ、どこから始めたのか? 神よりも昔、神代の時代よりさかのぼる。
そんな怪しげな動画は数多く。
やられたら、やりかえせ!
入ってくるなら、覚悟しろ!
現実と夢の間。どうも信じがたいな。それが、150年前のことだったらどうだろう? ヤナギはなぜ幽霊を見やすいのか、その答えは鳥居よりも恐ろしい。
サクラと同じく、川の土手を強くするため中国から輸入されたよ。そして川は境界線であり、生死の
1849秒 11分 21時間
いいえ、これは絶対に教科書にのることのない。場面は大陸の清(現:中国)。そこへ勢力を伸ばす明治政府(日本)との日清戦争の時間であった。
あのこの世で一番、いびつなヤナギは何だ?
つい、先日まで
羽虫がたかるその死体。どれくらい憎しみがこもっていたのだろう。頭部の
生きていたころは後輩には厳しいが家族思いでたくましい笑顔が印象的だった。それが今はどうだ? ところどころ、骨がむき出しで前歯がくだかれている顔面だ。
残っている顔面の
一部の兵士はあまりのむごたらしさに
侵略者には
正義の
確か彼は相手国の
むき出しの
それでも指揮官はむせぶ兵士たちの前で号令だ。
「下を向くことは許さん! この光景を
のどを
「あのヤナギを
そこからだ。眼下に広がる一万人の大都市、清の旅順。撤兵し、残すはほとんどが無関係な一般市民であった。ここにおいて日本人だけ
人の数え方も変わったよ。1人、2人じゃない。1匹、2匹の数え方だ!
指揮官は
「バラバラ死体をヤナギにつるすという
確かに個人には恐怖だよ。ただし、軍隊には別。通用しない。
むしろ兵士教育になりえる。捕虜となったら、こうなると。
俺たちはこうなるくらいなら、徹底的に
そして出来上がった殺人マシーンの最凶日本軍。片手には銃剣、ふところにはモルヒネだ。
ええ、彼らの銃剣はよく
ヤナギの葉、一枚一枚にべっとりと血が流れた。神風と書かれたそのハチマキがそんなにカッコいいか? 神との対話か? 獣のよだれかけか?
ヤナギは「もう、いいかげんにしろよ」と自ら嫌われるために言ったのだ。
ちなみにこのキッカケとなったヤナギの死体は
そして死んだ情報が流れれば、合格点である。
オイオイッ、本当なのか? まず、ここまで憎しみ合っていないだろ。ただ、あのときはそんな感情が支配していた。何も感じないようになっていた。戦争に人などいない。結局、おどしは境界を
世界の知らないウィンドウズ。鳥居を超えたあの日から、恐怖にあやつられていたと思う。
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