第27話 生首の井戸
標高 1923.9/1 m。
ダムの職員も
残っていたのは
「失礼します、
一瞬、無反応。それでも数秒後にはのどかな声だ。
「オウッ、入りなさい! ちょうどいいところに来た。イモが焼けたぞ」
カギはかかっておらず、ゆっくりと開ける。すると
自宅よりも長く勤務している。そのため、寝グセがついたままでもお
李はさえない表情でお茶を置く。
「さきほど山へ入った松倉さんですが、まだ戻っておりません。大丈夫でしょうか?」
は~~~、そういうわけか。鼻をほじる甘粕だ。
「さあな。そもそもあの松倉ってやつはあの山の新しい地主さんだよ。子どもじゃあるまいし、そのうち戻ってくるだろ。それより、イモは食べるか?」
彼女の心配事。それは李自身が松倉をダムの先を許可したことだった。
彼女は不安げにたずねる。
「現在、山中はひどい悪天候かと思いわれます。その松倉さんは連絡手段をお持ちでしょうか?」
いつの間にか、黒くて厚い雲をかぶっている裏山だ。きっと、上では
「連絡手段ねぇ。持ってんじゃないの」
相変わらず、そっけない甘粕だ。
50代前後で
そして、今。この部屋にもわずかに人の気配がする。
「ちょっと、気がかりなことが………」
思い切って、口に出す李であった。
そうだ。確かにいる。私。館長。そして、おそらく3人目が存在する!
ただ、ここで甘粕の顔が
「もういい、戻りなさい。この部屋には2人しかいない。もし、3人いようものなら、必ず1人は
そう、一番簡単なやり方で。君にはこのイモを食べて
ガタガタと
李はゴクリッと息を飲んだ後、失礼しましたと一言告げて退室した。
まだ、未だ、
そして、
ガタガタ………、ガタガタガタガタ………がッがガガッがががががガガガガ!!!
突然だった超巨大地震。
マグニチュード7.9 (
終末的
船のようなグワングワンとした横ゆれの後、一瞬の
そして、くる、くる、くる! やはり、きた!!!
木造家屋は
さらに、台風の接近による強風でまたたく間に大火災が発生。
それは昼間の飲食店の火がきっかけだった。炎は風で育つという。東京湾から
のまれれば、人も家も車も全身が
ここで、初めて気づく。自然の生み出す音の重さと大きさに
人、物、すべての色が失う。焼け野原とは生ぬるい。広大な
ただ、命あってのものだろう。どうにか避難先までたどりつく。しだいに安らぐ
それは
まさに誰もが身一つで逃げ回って、たどり着いた。そこでは
そんな中、食料もない、薬もない、情報もない極限状態で、バタバタと倒れていくナゾ。
なぜ? なぜ? なぜなんだ! やはり神の怒りか?
九死に一生から、さらなる地獄だ。苦しみの死体が山となっていく。これはもう、裁きや怒りでは考えられない残忍さ、もしや
それでものどのかわきが先だった。
ふらつきながら、近くの井戸に顔を
この、絶望的なさびた色。
これでは飲めない! 泥は飲めない!
ここに、怒りと恐怖が第二の旋風となって巻き上がる。
そうだ! これは呪いだ‼
そうでなければ、バタバタと死なない。井戸だってきっと何か入れられたんだ!
………ああ、思い当たるフシがあるぞ。
………ああ、そうだ! あいつらだ!
薄汚いあいつら。
町の
そして、今回もあいつらの仕業なんだ。見てみろ、この井戸を!
きっと、
それは1人や2人の感情論ではなかった。当時、彼らを安い賃金で
そう、勝手な恐怖だ。その、未知の恐怖のはけ口にした。
さあああ、人災のはじまりだよ!
朝鮮人たちが井戸に毒を投げ込み家々にも放火していると、デマが広がる。
そこには親族・友人を失った悲しみ。
家や財産を失った
明日へのやるせない絶望。
誰のせい? 誰の呪いだ? 殺せ殺せ殺せと
そして治安
誰でも目の色を変えれば血走るんだ。守る側が捕まえる側になった瞬間だった。
町内を通過する人々へ
名前だけで人を殺す。
顔の色だけで人を殺す。
言葉だけで人を殺す。
足のうらは真っ黒だった。本当の地獄とは災害ではない、震災後の人の
井戸はすぐに生臭くなったよ。血だらけに
その
最大で約6000人朝鮮人+約2000人中国人が
ただし、そんな
『すでに日本とアメリカはいがみ合っていた時代。それでも、サンフランシスコ大地震や関東大震災ではお
甘粕はストーブの揺れを
「日本人に対する外国人の評価だ。
日本人とはとても親切で
しかし彼らは先頭に立ち責任を負ってしまうと、圧倒的に
なるほどねぇ~~~、と思うなかれ。そんなことあるか、とも思うなかれ。
言われたこと、書かれたこと、足もとじゃぁあない。本当は足のうらに
クククッ、そのデマは本当に一部の富裕層かぁ?
実は政府が流した。当時の民衆も知らなかっただろうな、クククッ!
社会のウミ、共産主義のアカどもめ。
キナ臭い検問。このどさくさにまぎれて当時、東京
気持ちが震える。
笑えるだろ。
それを、どこぞの
また、その甘粕は新天地で
さて、そろそろ百年だぞ。
次の巨大地震では、どんなデマが待っているのだろうか?
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