第72話 【暴食のグラ・オブルーク】

「俺から行くぜ!!【噛みつき】!!」

「【回し蹴り】。てい!」

「ぐわは?!」


【回し蹴り】種目:アクティブ MP:10

 効果:次の回し蹴りの攻撃の威力をアップする。威力は、腕力に依存し、速度は、敏捷に依存する。

 クールタイム:5秒


 オーロは【暴食のグラ・オブルーク】に【噛みつき】掛かるが、その太っちょボディからは考えられない速度の【回し蹴り】で宝箱に隠れているロッソの方に勢いよく飛んでいく。


「オーロにゃ!」

「ぶっひっひ。遅い遅い」

「コクコク」


 オーロがロッソに回収される。


「良かったにゃ。じゃあ次はにゃーがやるにゃ!!この攻撃止められるかにゃ?【ジャック】!!」


【血塗られたメス】の腕力増加分とレベルが上がって増えた基礎腕力により、腕力が500を超えたメアの【切り裂きジャック】は、最早近距離スキルでは無くなっており、斬撃が【暴食のグラ・オブルーク】に向かって飛んで行く。


「ぶっひっひ。頂きまーす」

「にゃあ?!」

「ふう。これはなかなか、良い殺意を持った攻撃スキルぶひ」

「……」


 メアの【切り裂きジャック】は、全て【暴食のグラ・オブルーク】に食された。10連続で攻撃を当てたにも関わらず、平然とお腹をぽんぽんと叩くグラ・オブルーク。

 メアは初めての現象に思考が止まる。その隙を許すほどグラ・オブルークは甘くなかった。


「二章:我が蓄えを無くす事は出来ない。ふご!カロリーを腕力と敏捷へ!!【奇襲】【猪突猛進】ふごごごご!!!!」

「?!」


【奇襲】種目:アクティブ MP:30

 効果:次の攻撃の際に相手の視線から外れる。

 クールタイム:1分


【猪突猛進】種目:アクティブ MP:300

 効果:次に行う突進攻撃の威力をアップし、目標物に当たるか、HPが0になるまで走り続ける。

 威力は、腕力と敏捷に依存し、攻撃範囲なども変わる。

 クールタイム:15分


 グラ・オブルークの身体が細くなり、腕と足が筋肉で盛り上がる。そして走り出したかと思うと、瞬きの瞬間には既に目の前にいた。メアは反応できずに胴体に穴が空き、上がったHPが消し飛んだ。メアの身体がポリゴンになって消えて行く。


「ふご?【傲慢の書】を持っていたわりに弱かった……な、何だお前」

「にゃっふっふ。貴方は強いにゃ!でもにゃーの魂が1つって何時言ったにゃ?【猫憑】その上がったステータス半減させてもらうにゃ」

「ぐう。おでのカロリーがー!」

「とう!【輪廻転生】にゃ。にゃっふっふ」


 メアは冷や汗を流しながらも、それを表に出さないように笑う。それを見たグラ・オブルークの額に青筋が浮かび上がる。


「五章:我が悪食を無くす事は出来ない!この猫スケ喰らってやる!!」

「喰われてやらにゃいもーん。逆に食ってやるにゃ!!【加速】からの【加速】」


 増えたMPと【世界樹の若枝】の【ハイエルフの加護】でクールタイムが半減を合わせて常に敏捷を2.25倍にし続け、グラ・オブルークの通常の敏捷の値を上回り続けさせる。


「なあ、妹よ」

「?」

「俺らいるか?」

「んー?」


 オーロとロッソは自分の存在意義を考えている。


「はあ、はあ、はあ。猫スケやろー早えぇ……ぶひぃ?!」

「油断大敵にゃ【加速】」


 敏捷強化スキルが無いのか、グラ・オブルークが止まったので、逃げるのをやめて通り去る瞬間に一度噛みついた。驚いていたグラ・オブルークだったが、メアの噛み跡は瞬時に塞がった。


(自己再生系のスキル持ちにゃか。面倒にゃ。でも、これで1回にゃ。あと2回)


「もうおで怒ったぞ!三章:我が食欲を無くす事は出来ない【瞑想】【倍食】【早食い】【防御の構え】【3匹の子豚の煉瓦の家】」

「??」


【瞑想】種目:アクティブ MP:0

 効果:坐禅を組んでいる間1秒辺りMPを10回復する。

 クールタイム:なし


【倍食】種目:アクティブ MP:20

 効果:発動してから食事をやめるまで、セーフゾーンにいる時、食べ物2つを1つにし、満腹度などを回復出来る。

 クールタイム:5秒


【早食い】種目:アクティブ MP:20

 効果:発動してから食事をやめるまで、セーフゾーンにいる時、食べ物を食べるスピードを2倍早くする。

 クールタイム:5秒


【防御の構え】種目:アクティブ MP:75

 効果:動けない代わりに物理防御力が2倍になる。

 クールタイム:5分


【3匹の子豚の煉瓦の家】種目:アクティブ MP:5,210

 効果:物理攻撃と風魔法では破壊されない煉瓦の家を召喚する。家の中はセーフゾーンとなっている。

 クールタイム:3匹の子豚が新しく煉瓦の家を建てるまで


 怒ったといいながら煉瓦の家に隠れ防御を固めたグラ・オブルーク。窓から見えるのは、アイテムBOXから何も出していないし微動だにしないのに、何かを口に含み続けぶくぶくと肥えていくグラ・オブルークの姿だった。

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