第65話 ご飯で一杯

 乙姫がびくんびくんと倒れているのを横目に、天使と悪魔のネコザメは自己紹介を始めた。


「主にご挨拶申し上げます。我はビアンコ!主を護る騎士で御座います!!」

「しっしっし。あーしはノワール、主人様よろ〜」

「うん。ビアちゃんにノワちゃんねよろ〜」


 自己紹介をしている間に、マリーとキャロから解放されたラビが乙姫に近づいて、赤く腫れたお尻を優しく撫でて上げる。


「乙姫さん大丈夫?」

「あん♡大丈夫です」

「なーに発情してるんですカメ!!」

「あひん?!」


 怒りを露わにしながら塩椎神しおつちのかみは、自前の立派なヒレで顔を思いっきり叩く。


「しーくん打ったわね。お父様にだって打たれた事ないのに!まあ、他の方には良く叩かれてますが、ぽ♡」

「ぽ♡じゃありませんカメ!!いつもいつも!海の民たちに示しがつきませんカメ!!」

「まあまあ、そんなに怒らないのしーくん。ほら、大好きな海藻よ」

「もぐもぐ、今回だけですガメ」


 海藻を食べた瞬間、さっきまでが嘘だったかのように落ち着く塩椎神しおつちのかみ。その姿を見て、計画通りと悪い顔をする乙姫。


「チョロいですわ」

「チョロすぎにゃ」

「ふふふ。チョロいです」

「チョロすぎ!!」

「な、何て恐ろしい娘!」

「がっはっは!」

「こくこく。チョロ……」

「しっしっし」

「あれではダメダメですわ」


 一同は塩椎神しおつちのかみの事を呆れた顔で見た。そんな顔をしていると、コンコンとドアがノックされ、リュウグウノツカイがひょこっと顔を見せる。


「お食事の用意が出来ましたー」

「む。そうか。では、まいろうか!!」

「こっちガメーむしゃむしゃ」

「ご飯にゃー!!」

「メアーもー先に行かないの!!」

「メアちゃん待ってー」

「もーラビちゃんまで!!」

「まあまあ」

「あの2人は本能で動いていますの」

「俺たちも行くぜー」

「てくてくてく」

「しっしっし!あーしも〜」

「もう!貴女たちまででしての?!」

「案内してないのに真っ直ぐ進んでるカメ。驚き」

「流石ですわ」


 メアを先頭に自前の嗅覚を頼りに宴会場に向かうやんちゃ組。大人組は、乙姫たちの後ろを着いていく。近づくに連れて料理の良い香りがしてくる。


「わあー」

「ん?ひる姉!遅いにゃ!」


 所狭しと料理が並んでおり、メアたちは一心不乱に食らいついていた。

 並べられているのは、

  リュウグウエビのマヨソース

  何かの鶏・クラーケン・カシューナッツ炒め

  何かの牛肉とレタスのオイスターソース

  スブタ

  アサリのスープ

  杏仁豆腐

  何かの牛肉とピーマンの細切り炒め

  リュウグウエビのチリソース

  何かの豚肉角煮蒸しパン添え

  リュウグウエビ・クラーケン・矛盾の炒め

  白身魚の甘酢かけ

  フカヒレスープ

  杏仁豆腐

  キングクラブ肉入りフカヒレの煮込み

  クイーンクラブの生クリーム炒め

  リュウグウエビ団子のスープ

  杏仁豆腐

  三種冷菜盛り合わせ

  矛盾のバター炒め

  何かの豚肉角煮蒸しパン添え

  岩石アワビの醤油煮

  軍隊ハマグリのスープ

  杏仁豆腐


(す、凄い数だ。てか、どんだけ杏仁豆腐推しなんだ、綿津見神わたつみ様)


「ふぉっふぉっふぉ。たくさんお食べ〜」

「ありがたいぜぇー」

「しっしっし。流石主神、料理のセレクト神がかってる!フカヒレスープウマ!」


 フカヒレスープを食べるネコザメとはこれ如何に。


「ほら、貴女たちも沢山食べて下さいね」

「はい」

「ご相伴に預かりますの」

「これは美味しそうですわ」

「あらあら、こんなに高価そうなお料理を頂けるなんてー」


 それから夜明けまで宴会は続く。

 皆が宴会しているなか、ひるねは1匹眠気に誘われ、乙姫から貰った本を枕にして眠った。


「むにゃむにゃ、【猫の書】……zZ」

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