第64話 我ら!サメちゃんズ

「ほら!早く装備して」

「わかったにゃ」


 乙姫に急かされるまま、メアは【乙姫様の手編み羽衣】を装備した。すると【双魂分隊】の効果が発動し、ひるねの首元にも【乙姫様の手編み羽衣】が複製される。複製される瞬間を見たのが初なので、みんなが驚く中、竜宮城が海の中だと判定され、【サメちゃんズ】が2匹分発動される。


 メアの横に現れたのは、1匹は獰猛な牙を輝かせる金色のネコザメ。もう1匹は、眠たそうにぷかぷかと揺らいでいる手のひらサイズの赤いネコザメ。

 そしてひるねの横に現れたのは、1匹が天使の輪っかを付けた真っ白で吊り目のネコザメ。最後の1匹は、「しっしっし」とくすくす笑う背中に蝙蝠の羽を持つ黒いネコザメだった。


「まあ!まあ!まあ!何て可愛いのでしょう!」


 4匹のネコザメの姿にテンション爆上げな乙姫が抱きつきに行くと、赤いネコザメが、金色のネコザメの後ろにサッと隠れ、迫り来る乙姫のヒレにその獰猛な牙で噛み付く。

 それと同時に天使のネコザメが、機嫌悪そうに尾鰭で乙姫の頬の辺りを引っ叩く。


「【噛み付く】!!」

「痛?!」

「俺の妹分を怯えさせるとは良い度胸だな!ああ?!」

「ふぇえ……」

「我に気安く触るでないわ!」

「やーい。振られてやんの〜ざーこざーこ。しっしっし」


 よよよと、頬を抑えながら人の姿に戻っていく乙姫の周りをうろちょろとおちょくるように泳ぐ悪魔のネコザメ。

 急な事について行けていないひるねたち。先陣を切ったのは頼りになるメアであった。


「宜しくにゃ〜」

「あん?!これは姉御!召喚に感謝するぜー」

「こくこく」


 金色のネコザメは、話しかけて来たのがメアだと気付き態度が変わる。赤いネコザメは、後ろでこくこくと頷くだけで何も喋らない。


「ん。何て呼べば良いにゃ?」

「あー俺はオーロだ。妹分は」

「ローはロッソです。よろしくお願いします」

「オーロとローちゃん、覚えたにゃ!宜しく」

「おう!」

「こくこく」

「ほら!ひる姉しっかりするにゃ!あっちの2人止めにゃいと」

「【往復ビンタ】!せい!や!」

「は!2人ともそこまでー」


 はっと我に返ると乙姫さんが「あひんあひん」言いながら天使ネコザメにビンタされていた。痛めつけられながら、興奮して身体を震わせる乙姫を見て、ひるねのスイッチがポチッと入った。


「主人様〜」

「主!この不届者は懲らしめときました」

「あは。ありがとうね〜でもね、お仕置きはこうやるのよ!」


 無数の金と黒の触手が現れ、乙姫を拘束するひるね。


(はぁ……はあ、わっちは今から何をされるのかしら、ハァハァ考えただけで、身体が疼きますわ)


 乙姫を回してお尻を持ち上げ、そこに目掛けて何本もの触手を絡ませた一本の触手で思いっきり叩く。パンッ!と甲高い音が鳴り渡る。因みにダメージは10程度である。


「こうですの!」

「あひん!」


「ママ?」

「ラビちゃんにはまだ早いかな〜」


 キャロがサッとラビの視界を塞ぐ。


「そうですわ。ラビちゃんは、まだ清いままで居て欲しいですの」

「ん?」


 そして我に返ったマリーが耳を塞ぐ。


「あーまた、乙姫様の悪癖が……」


 塩椎神しおつちのかみがヒレで顔を隠し天を仰ぐ。


「そしてこう!」

「あひん!」

「リズミカルににゃ!」

「やれやれー!!」

「ひぇ……」

「流石主!」

「主人様良い顔ですーしっしっし」


 真顔で見つめる3人と1匹とは逆に、テンションアゲアゲのノリノリのネコ集団。


「最後にこうですの!!」

「あぁあ〜ん」


 竜宮城内に乙姫の甘い悲鳴が響き渡るのだった。

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