第62話 竜宮城へ着きました!!

 夕暮れ時。珍しくひるねが1番に目を覚ました。


「ふぁーもう夕方か……そういえば竜宮城に行く途中だった。カメさーん」

「ガメ?夕暮れ……は!早く帰らなければ!」


 塩椎神しおつちのかみを起こしてあげると、慌ただしく帰り支度を始める。


「わたしもみんなを回収しますか」


 深淵触手でみんなを抱き上げていく。


「あ。こっちに乗せるカメ」

「はーい」


 貝の形の乗り物にみんなを乗せていく。最後にひるね自身も乗り、塩椎神しおつちのかみはそれを確認すると、貝を閉じて砂場をずりずりと引いて海にそのままダイブした。その音で寝ていたみんなが徐々に起き始める。


「ん?ひるね姉ちゃん、ここは?……お魚さんがいっぱい!!」

「海の中だからねー」

「普通に海の中を移動しているのは、不思議なものね」

「わたくしの夢が1つ叶いましたの!」

「にゃーむにゃむにゃ。にゃ!横歩きしてるあれは何にゃ!」

「蟹?かな」


 初めての海でテンションが上がる一同。貝の横を通り過ぎたのは、片鋏が身体くらい大きな蟹。


「あれは、【クラブナックル】カメ。どっちかの鋏が巨大化して、水中だと俊敏な動きで翻弄し、重い一撃で仕留めるモンスターカメ」

「水中だと?」

「地上だと片鋏が重すぎてゆっくりしか動けない、ちょっと残念な蟹だカメ」

「そう思うと、何となく狩り辛いなー美味しそうなのに」

「美味しいの?」

「わたしの世界だと、高価な価格で取引されるくらいは美味しいかな。わたしは好きだよ」

「わたくしも一度だけ食べた事がありますの。見た目はアレですけど、ぷりっぷりで美味しかったですの」

「美味しいにゃ?じゃあ、今度狩るにゃ」


 メアが獲物を狙う瞳で見つめると、【クラブナックル】は早速さと逃げていった。

 その後も、塩椎神しおつちのかみの海観光は続き。大体1時間後、遂にひるねたちは竜宮城へと到着するのだった。出迎えてくれたのは、半魚人や人魚。リュウグウノツカイの面々だった。


「ギョギョ塩椎しおつちさん、今日は遅かったぎょ?」

「ちょっとお昼寝してたカメ」

「良いですわね。私たちは、外だと何故か狙われるからゆっくり出来ないのよ」

「俺はそもそも外に出ると嵐を起こしちまうからなー」


【人魚の血】は、【回復薬】の効果に全体回復の効果を追加付与出来たりするので、地上にいる人魚は死ぬ覚悟でも狩るくらいには高価で取引される。


「美味そうだにゃ」


 メアが人魚の下半身の魚部分に舌舐めずりしていた。


「そのーお客様?私に何か御用で?」

「ちょっと舐めても良いかにゃ?」

「ちょっとメアちゃん、流石にそれは失礼だと思いますの」

「ちょっとだけですよ」

「頂きますにゃー」

「え?!」

「あらあら大胆」

「人魚さん!うちも触って良い?」

「良いですよ」

「わーい!」


 人魚の下半身を舐め回すメアと尾鰭の辺りを不思議そうに掴んでいるラビ。人魚さんは意外に下半身を触られても気にしないようだ。


「うちの子たちが、すみません」

「良いのよ〜男の子はダメだけど、女の子はね」

「ありがとうー」

「んふ。そろそろ良いかしら」

「仕方ないにゃ。また今度舐めさせて貰うにゃ」

「まだ舐める気なのね」


 人魚さんは少し身の危険を感じた。


「じゃあ、応接室に案内するカメ」

「よろ〜」

「よろしくですの」

「はーい」

「にゃー」

「お願いしますー」


 ひるねたちは、塩椎神しおつちのかみに着いて行く。

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