第52話 夢の世界へ……

 ひるねたちに気付きカップを起き、指を鳴らすとテーブルとイスが消える。


「ん?帰ってきたのか……」

「お父様!貴方を倒させて頂きますの!!ラビちゃん!」

「うん!マリーちゃん」

「【深淵化】【深淵纏アビスローブ】」

「娘のお手並み拝見と行こうかの〜ほれ、行け」


【深淵化】の隠し能力、同じ眷属間での深淵の共有。

 マリーの深淵が包帯状に伸び、キャロの拳をカバーするように巻き付く。


「行きます!!【聖拳】!!」

「ガタガタ」


 ラビが目の前に迫る。ゾンビ兵をぶん殴り始める。

 拳に【聖力】を纏わせている為、殴りつけたそばから骨が崩れ落ちていく。


「ほれ追加じゃ」


 減らした分だけ追加のモンスターを召喚される為、少しずつ押され気味になる。


「ママ!ヘルプ!」

「はいは〜い【口寄せ】」


 ラビがキャロママに助けを求める。それに答えながら【口寄せ】でご先祖様の誰かを自分の身に降ろす。


『キャロちゃんやりましょうか』

「お母様ですか」

『うちじゃ、役不足かね』

「いえ、心強いです」

『ぴょっぴょっぴょ!そうでしょうとも』


 キャロママの背後に我の強そうな兎獣人が現れ笑う。【聖魂】が発動し、【口寄せ】で憑依したお母様のスキル【聖歩】を獲得する。


【聖歩】種目:アクティブ MP:不明

 効果:MPを消費した分、歩いた場所に十字架が刻まれる。その上を歩くと幽霊系モンスターはHPを削られ(MP:1=10ダメージ)、他の人やモンスターはHPを回復する(MP:1=1回復)。刻んだ十字架は半日残る。


『「ここからは私のステージでしてよ!」』

「ちょっと恥ずかしいわー」


 タレ目が吊り上がり、ウサ耳をピンと立たせて、ゾンビ兵の攻撃を華麗に回避しながら城《ステージ》を舞うキャロママ。地面に足が付くたびにMP:1を消費して【聖歩】が発動される。

 咲き乱れるはゾンビ兵の身体。1個では足りなくとも、2個、3個と踏めば自己回復や、再召喚など無意味とかした。


「ほほう。あの奴隷おもちゃたちにこんな力があったとはの〜」

「「あの時の仮返させていただきます!!」」

「愉快じゃ、愉快じゃ。存分にかかってくるが良いのじゃ。そして自分の無力を感じて我に頭を垂れるのじゃ」


 アランガント王は兎親子に興味津々。これから何をしてくれるのか、どんな感じに争うのか。そして最後は恐怖のどん底に落とした時の、希望から絶望に落とした時の表情を楽しみにアランガント王は、心を昂らさせていた。


(さて、あの王様が何かしでかす前にそろそろこっちのフィールドに来てもらおうかな)


 アランガント王の意識から存在が消えつつある今、ひるねと白は動き出した。開始の挨拶は眩い光から。


「白くん」

「はい!ひるね様」

「【深淵穴アビスホール】」

「【瞬いフラッシュ】!!」

「ぐは、目が!我の目が!!」


 白くんがアランガント王の視界を潰し、その隙に【エルダーワイトキング】の本体がいる次元へと繋がる穴をひるねがジジジジジとテレビの砂嵐のような音を立てながら通って行く。

 そして数分後、【エルダーワイトキング】の視界が回復し目を開けると其処にはひるねが鎮座していた。


「な?!貴様は?!」

「あは♡みーつけた。ではでは、わたしの世界へ1名様ご案な〜い【早寝】【夢のドリームランド】」

「こ、この我が【睡眠】だ……と……」


 ひるね専用睡眠スキル【早寝】からの【日暮の眠り】【眠りの波動】【夢のドリームランド】の夜だけの必勝コンボで、眠らない筈の【エルダーワイトキング】は、ひるねの夢の世界へと迷い込んでいくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る