第50話 ニャル様の実験

「さてさてさーて、取り敢えず白くんには【聖域】を他の3人はその【聖域】を囲むように祈りをお願いしようか」

「何故僕が【聖域】を使える事がバレているのかは少し気になりますが、この際です。あまり気にしないでおきます」

「わたくしたちは祈りを」

「「はい!」」

「私の合図でお願いね〜白くん」

「はい」


【聖域】種目:アクティブ MP:全て

 効果:発動時全てのMPを消費し、その消費したMPの数値分×5分継続する。展開された聖域は消費した分のHPを1分起きに回復させ、聖域内の幽霊系、アンデット系モンスターに消費分のダメージを30秒起きに与え、聖域内に新たにモンスターが入る事は出来ない。発動中他の事は出来ない。

 クールタイム:基礎MPの30%まで回復すれば再使用可能。


 ニャル様は4人の準備を確認したのを確認してから、ひるねの前足を切り落とす。


「じゃあ頑張ってねひるねくん」

「ふぇ……ッ?!」

(ゑ?……痛い!イタイ!痛い!熱い!わたしの腕が!痛い!どうして!痛い、痛いイタイ痛い痛いイタイ痛い痛い痛い熱いイタイ痛いイタイ痛い痛いイタイ痛い痛い痛いイタイ……)

 いきなりの事に頭が追いつかず、現実を受け止めきれないひるねの足元が金色に輝く血で染まっていく。ひるねの現実の身体も痛みをカットしているとはいえ、脳が悲鳴を上げ、痛みでもがき腕の皮膚を自分で引っ掻き血が出る。普通の人間なら一瞬で廃人になっても可笑しくない。だが、彼女は長年の不眠による脳や身体への負荷に加え、病院での様々な薬の投与に耐え続けてきた事による痛みへの耐性が、彼女の強制ログアウトを阻害する。


「ひるね様!!」

「はーい白くん落ち着いてね」


 急いで【聖域】を発動使用とした白がニャル様の触手に押さえ付けられる。他3人は恐怖で震えるばかりで放心状態である。

 ニャル様は待つ、大体半径1mの円まで血が溜まるのを待つ。


(……あれ、足が冷たく、痛みがなく……)


 ひるねの意識が限界に近づいた時、円を金色の血が満たされる。ニャル様は白の拘束をとき【聖域】を発動させる。


「白くん今!!」

「クソが!!【聖域】!!」


 白は自分の不甲斐なさを悔やみながらもしっかりと【聖域】を発動させる。


「3人も祈りを!!」

「「「ハッはい!!」」」


 呆然としていた3人も急いで祈りを捧げる。

 それと一緒にニャル様が何の詠唱を始めると、円状に魔法陣が現れ、金色の血を吸収し、花が舞い上がり、天秤が現れる。


 その天秤の上にひるねの前足2本が乗せられ、その逆側には錆びた【アンサタ十字架】が置かれる。

【アンサタ十字架】とは、別名エジプト十字架とも呼ばれるT字形の上に楕円形、もしくは卵の形が乗ったものである。


 天秤の上に平たい台があり、そこに力なく横たわるひるねが乗せられる。【聖域】の効果でHPは回復している筈なのに切り離された前足は再生しない。

 その事に白は動揺し、足に力が入るが。少しでも気を逸らせば直ぐに【聖域】が切れてしまう。


 徐々に流れる金色の血が前足の方に溜まり、そして【アンサタ十字架】に傾いていた天秤が均等になる。


「きた来た!!時は来た!!黄金。猫脚。血液。十字架。祈祷。秘密。乙女。招き猫。最後に林檎を一つ。混ざれ。混ざりし深淵よ、今宵ここに生誕せよ」


 ひるねの身体がニャル様の詠唱に合わせて浮かび上がり、ひるねの周りにニャル様がどんどん物を投げ回転を始める。最後に招き猫を投げ入れると全てが混ざり黄金のオーブとなる。


「我ニャルラトホテプの名に置いて【マザー】にひるねくんの進化を申請」

『プルイヤーひるねの進化に贄が足りていません。レベルが足りていません。申請を許可できません』


 ニャル様は少し考えいい事を思いついたと、ポンと手を叩く。


「ひるねくんの特殊装飾:【錬金生命体ホムンクルス金の猫】の特殊進化を申請」

『プレイヤーひるね特殊装飾:【錬金生命体ホムンクルス金の猫】の特殊進化を申請を許可。特殊進化率66%です。贄が足りません』

「んーこれでもダメか。んーじゃあ、【爪研ぎ】【鳴き声】【闇属性付与】【落下耐性】を贄に追加でどうかな?」


 勝手にひるねとメアのスキルを贄にし始めるニャル様。


『わかりました。再計算を始めます。スキル【爪研ぎ】を贄、71%に上昇。スキル【鳴き声】を贄、76%に上昇。スキル【闇属性付与】を贄、86%に上昇。最後にスキル【落下耐性】を贄、特殊進化率101%。特殊進化を許可出来ます。進化しますか?贄にした物は再度取得が出来ませんが、本当に宜しいですか?』

「いいよ。いいよ。ひるねくんには入らなそうだしね」

『わかりました。では、【MotherAI-00Eden】とクトゥルフ所属【ニャルラトホテプ】の名の下にプレイヤーひるね特殊装飾:【錬金生命体ホムンクルス金の猫】の特殊進化を受理実行します』


 ひるねの身体から4個のスキルが無色オーブとなって飛び出し消失する。その代わりに金色のオーブがひるねの身体に吸い込まれていった。


 一方その頃のメア。


「【爪研ぎ】!にゃ?!発動しないにゃ?!にゃんで?!火力が少しでもいるのに!じゃあ【鳴き声】みゃー!!あれこっちもにゃ?!じゃあじゃあ【闇属性付与】からの【切り裂く】!!にゃ!にゃんでぇー」


 キメラの防御力をどうにかしようと何時も使わないスキルを使用としたら、急に全部使えなくなってしまったもんどから混乱していた。

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