第27話 中への旅路、アウローラの場合

「ふ!コケー!危なかったコケー」


 どうにか落下死を回避したアウローラは、額の汗を拭って周りを見回す。


「此処は何処コケ?」


 すると霧が晴れる様にボロボロの一軒家が現れる。其処には天冠を付けた、肌が青白く、手には団扇を持つ黒髪、長髪の女性が立っていた。


「幽霊っぽいコケーでもでも、突撃するコケ!!こんにちはー!!」

「あら?こんにちは。鶏さんはこんな所でどうしたのかしら?」

「あたしアウローラ!いつの間にか友達と逸れて此処に着いたの」

「あらあら、そうだったの。私は黒闇天こくあんてん。見窄らしい家だけど、中でお茶でもしながらお話し、聞いてあげる」

「ありがとう!コク姉さん!!」

「ふふ。いらっしゃい」

「お邪魔しま〜す」


 コク姉さんと呼ばれて嬉しかったのか、笑みが溢れる。アウローラが黒闇天に着いて行きお家の中に入る。中は外の見た目に反する様にとても綺麗だった。座布団の上に座り、出されたお茶を嘴で啄む。

 お茶菓子の味噌田楽も、一口。香り良い濃厚な味噌が口一杯に広がる。


「んー!!」

「どうだい。私の自慢の味噌田楽は」

「うまうまです!コケー!!」

「ふふふ。そうだろうて、そうだろうて。私が豆から作って仕込んだ味噌だからな」


 味噌の事になると目に熱い炎が現れる。奥から七輪とおにぎり、味噌壺まで持って来て、縁側で持っていた団扇でパタパタと焼き始める。


「コケー……美味しそう。ジュルリ」

「ふっふっふ。これが欲しいんかえ?ほれ、ほれ。ほら取ってこい!!」

「コケー!!!!」


 焼き上がった焼きおにぎりを目前で嗅がさされ、勢いよく宙に飛んでいく焼きおにぎり。我慢できずに飛び出す。そしてハム!


「から?!……上手いコケー!!」

「そんなに上手いかえ?ほれ!もう一つ!」

「コケー!」


 焼き上がれば投げられ、食べ終わったタイミングで次弾が投げられる。


「ふ〜お腹一杯コケー」

「ふっ。良い汗をかかせてもらった。良し!!アウローラよ、君にこの天冠を与えよう」

「え?ありがとうコケー」


『特定npc貧乏神 黒闇天こくあんてんと友好を結びました。呪防具:【逆転の天冠】に呪われました。【竜魂ドラゴンソウルの瞳】が呪いを弾きます』


 ※【貧乏神の隠れ家】

 幸運値が-の者しか入れない場所。【スターシアン】近郊に隠れ住んでいる。


「ほう?私の呪いを弾くとは、成程混沌ドラゴンの仕業か、アウローラは自分達の所有物と、ほうほう。元福の神の力を舐めるで無いわ!!【呪合成】!!【逆転の天冠】×【呪いのコイン】欲望よ混ざれ、其処に少しの幸運をスパイス!!」


 禍々しい紫色の煙を放つ鍋に【逆転の天冠】【呪いのコイン】【幸運スパイス】が放り込まれ、混ぜ合わされる。そして爆発と共に新たなアイテムが生成される。神様が本気で作り上げたそのアイテムは、混沌ドラゴンの呪いを凌駕する。出来上がったのは、薄紫色の天冠、縁を金色で染められ、金色の福の文字が逆さまに刺繍されていた。


『神呪防具:【逆福説の神冠】に呪われました。【竜魂ドラゴンソウルの瞳】が呪いを弾こうと挑戦、失敗しました。【竜魂ドラゴンソウルの瞳】が呪いを弾こうと挑戦、失敗しました。【竜魂ドラゴンソウルの瞳】が呪いを弾こうと挑戦、失敗しました。【竜魂ドラゴンソウルの瞳】が呪いを弾こうと挑戦、失敗しました。【竜魂ドラゴンソウルの瞳】が呪いを弾こうと挑戦、失敗しました。【竜魂ドラゴンソウルの瞳】が呪いを弾こうと挑戦、失敗しました。【竜魂ドラゴンソウルの瞳】が呪いを弾こうと挑戦、失敗しました。【竜魂ドラゴンソウルの瞳】が呪いを弾こうと挑戦、失敗しました。【竜魂ドラゴンソウルの瞳】が呪いを弾こうと挑戦、失敗しました。契約混沌ドラゴン族クエレブレが召喚を懇願。貧乏神 黒闇天こくあんてんが召喚用のMPを肩替わりしました。クエレブレが召喚されます』


「貴様が儂らの所有物を呪うものか」

「ええ、こんな幸薄そうな子なかなかお会い出来ませんので、混沌ドラゴンさんも独り占めは宜しく無いでしてよ」

「く。アーよ。今回だけだぞ、アーは儂ら混沌ドラゴン族の一員なのだからな!他の呪い何ぞに好かれるでないぞ、貧乏神よ。今回だけだ、次は無いからな」

「そんな事言われても〜」

「ふっふっふ。呪いで敵うものならかかって来なさい」

「く。儂は、呪いの強化に勤しむ。アーよ、浮気はするんじゃないぞ、またな」

「コケ。またね〜」


 クエレブレは召喚陣に戻って住処に戻って行った。貧乏神は満足気に団扇を振っていた。


『混沌ドラゴンクエレブレが呪いの解呪を諦めました。【逆福説の神冠】が装備されました』


 神呪防具:【逆福説の神冠】知力(+1,153)幸運(-6,666)

禍福かふくあざなえる縄の如し】装備スキル

 効果:この装備は外す事が出来ない。並の呪いを凌駕する。わたしは貴女に迫る悪から、貴女を護ります。お金が近づくとお金に宿る悪意に反応して弾きます。貴女はお金を持つ事が出来なくなる変わりに、貴女に悪意を持つ者には貴女の合計-幸運値分、悪意ある者の幸運値を下げます。

 この装備は、壊れず、離れず、逃がさない。


『アイテムボックスに入っているマニーが弾き出されました。これより、貴女はマニーを獲得出来ません』


 マニーの入った袋がボスんと地面に落ちる。それに触ろうとすると、マニーが爆発した。


「え?あ?うん?もしかして、あたしこれから一文無し?」

「私と一緒ね!さあ!自給自足よ!頑張りましょうアウローラ!!」

「おーのー」


 貧乏神は満面の笑みでアウローラの肩に手を置く。アウローラは、白目をむいて縁側に倒れた。

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