第26話 中へ向けて出発です!

 ドラゴンや神様は自分の住処に帰り、集まった異界人たちも各々解散した。アーサーは、クエレブレを追いかけて走って行ったが、途中足元の小石に躓き、そのまま崖の下へ。多分生きてるだろう。


「ふぁ〜アーちゃん、週末だし、一緒に行動する?」

「行く行く!どこ行こっかコケー!!」


 迷っていると桜姫が提案する。


「ん〜中に行くのはどうですの?」

「中?」

「其処のメディカルダックの丸焼きが絶品ですの」

「鳥にゃ!」


 メアが飛び起き、ふんふんする。興奮が凄い。アウローラとひるねは、目を合わせて笑う。


「じゃあ!其処に行こう!!」

「中に向けて出発コケー!!」


 おーと前足と翼を上げる3匹の前にハゲ神父がやって来る。


「メア様、ひるね様、旅立たれるのですね」

「にゃん」

「はい」

「どうぞ此方をお納め下さい。教会の奥に仕舞われていた物になりますが、メア様に渡すべく仕舞われていたのでしょう」


 メアが受け取り箱を開け、中身を見ると黒猫マークのランプのような物が入っていた。


『特殊装飾【幸運を齎す死神猫の尻尾用カンテラ】を入手しました』


【幸運を齎す死神猫の尻尾用カンテラ】幸運(+42)

【霊蒼炎】装備スキル

 効果:装備すると蒼炎が照らす。この炎は、基本味方と彷徨える魂のみが見える。【死神のマント】もしくは、【死神のローブ】を装備している時、近寄って来た魂を冥府へと送ってくれる。

 死神と行動を共にし、死神を助け死んでしまった猫さんの魂が宿っている。稀に猫さんが現れ助けてくれるかも?

 この装飾は、奪われず、壊れず、譲渡不可。


 遂に揃う猫用死神シリーズ。帰り支度を始めていたプレイヤーたちが、少なからず動揺する。


「ありがとうにゃ」

「メア様方の旅を照らしてくれるでしょう。また、聖水が無くなりましたら、お越し下さい。何時迄もお待ちしております」

「ありがとうございます」

「にゃ!それじゃあ!中に向けて出発にゃ!!」

「コケー!!」


 メアの上にアウローラの上にひるねのハーメルン状態で旅を開始した。今回は時間もあるので、徒歩での移動だ。途中視界に入ったロックバードとスライムバードは、血相を掻いて逃げ出して行くのを横目に進む。ひるねはアウローラの肌の温もりと、晴れ晴れとした陽気で数分もしないうちに夢の世界へ。


「ほんとひーちゃん寝てるのに、メアが勝手に行動してるのふーしぎー」

「ニャーはもう1人のひる姉だからにゃ、当然にゃ」

「そっか〜」


 元の性格と猫の本能を足しらこうなるのか?と、疑問に思っていると、急に足元に何も無くなる。


「コケー?!」


 其処は崖だった。

 急いで翼を広げ、【滑空】して行くアウローラ。


 時を同じくして、ニャル子が追いかけて来て。振り返ろうとしたら、背中が軽くなるメア。


「追いついたにゃん!……はあ、はあ、あれ?ひるねんと、あの鳥の子は?」

「にゃん?!」


 背中に居るはずの2匹がいない事に気づき飛び上がって、【木登り】で木の上へ、何処にも2匹の姿は無かった。


 そして未だ眠っているひるねははというと、


「もう直ぐ帰れるな」

「ぐすん」

「五月蝿えぞ!」

「乱暴にすんなって、話によれば姫様の注文らしいからな、何かあったら俺たちの首が飛ぶぞ」

「ああ、忘れてた。すまん」

「リーダー!こっち来てくれ!」

「ん?何かあったのか?……こいつは!?」

「黄金に輝く猫ですぜ、こいつ生きてやすぜ」

「寝ているな。こりゃあ丁度いい、おい!」

「へい!」

「予備の檻があったよな。それに入れて帰るぞ!」

「了解しゃした」

「ふっふっふ。コイツも献上すりゃあ、俺たちの立場も鰻登りよ」

「そうですわね」


 不気味に笑う黒ずくめの集団に捕まっていた。ひるねは、一度寝るとそう簡単には起きない。あまりにも捕まえ易いお猫様だった。

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