第25話 怒りの四神と我儘王女

 とある人族史上主義の王国。


「きゃ!」

「ひゃひゃひゃ、逃げろ!逃げるのじゃ!」

「お母さん!!」


 鎖に繋がれた兎人族の親子。母は、人族の王の遊び道具として奴隷商から購入された。

 人族の王は逃げ惑う兎人族に、愉悦な笑みでナイフを投げる。


「うるさいぞ、お前から殺してやろうか?」

「ぁうー」

「私が遊び道具になりますから!どうか娘だけは!」


 四つん這り状態の兎人族の少女の手を踏むよに腰掛ける王様。懇願するように跪き、娘の解放を願う母の目の前で王はその手に持つナイフを娘の足に刺す。


「うぐ!?」

「やめ!!」

「儂に命令するとは死にたいようじゃな」

「ひ!?」


 恐怖で顔を歪める。その様子を見て満足したのか、部下に言って親子を下げさせる。


「ぐすん」

「泣いてんじゃねえ!さっさと歩け!」

「娘を蹴らないで!」

「近よんじゃねえ!気持ち悪いだろうが」

「うぐっ」


 蹴られながら牢屋に放り込まれて行く兎人族と入れ替わりで金髪縦ロールの少女が入ってくる。少女は獣人の仕打ちをあたかも普通の出来事であるかのように、気にせず中に入る。


「お父様!!」

「おお〜どうしたんだいマリー」

「わたくし新しいペットがほしいですの」

「この前の、白蛇はどうしたんだい?」

「水に浸しら死んでしまいましたの」

「そうか、そうか。死んでしまったか、それじゃあ今度はどんな子がいいんだい」

「わたくしこの前見た本の白い虎が欲しいですの」

「白い虎、白い虎。中《チュン》の白虎の事かい?」

「それですの!」

「よし分かった、マリーの頼みだしな。おい、いつもの商人を呼んでまいれ」

「はっ」


 兵士が直ぐに宝石をジャラジャラと付けた男を連れてくる。


「陛下、お呼びと聞き馳せ参じました」

「おお〜良く参った。マネマニよ。娘がの〜白虎が欲しいと言ってての、確かこの前中の国で子供が産まれたそうじゃないか、そいつを捕まえてまいれ、儂らに飼われるのだから光栄じょろうて。褒美はそうじゃのう〜向こう10年税を免除でどうじゃ?」

「は。陛下のお心のままに」

「よろしく頼むぞ、マネマニよ」

「は。それでは直ぐに行って参ります」


 商人はその足で裏ギルドへと赴き、そこで人を雇い中に向けて出発した。


 場所は変わり中。四神が護る中華が美味しく暖かい国。


 阿膠棗あきょなつめを舐めながら散歩する虎柄の白い子猫。鼻歌混じりに街を探検する。


「ふんふーん」

「白様、今日は何時もにましてテンションが高いですね」

「ん。猫猫。今日ね、母様がお勤めから帰ってくるの!」

「そうでしたね」


 中は四神が3ヶ月起きに結界に魔力を注ぐ、強いモンスターの侵入を不正でいる国である。


「今日は、どちらに行かれますか?」

「森に行くの!母様に渡すプレゼントを探すの!」

「ふふ、喜んでくれるといいですね」

「うん!」


 2人は森に入っていく、だいぶ奥まで来た時、森の雰囲気が変わる。弱いモンスターがちょくちょく出てきていたのに、急にモンスターが出なくなる。


「白様、帰りましょう。嫌な気配がします」

「う、うん」


 帰ろうとしたその時、木の陰から黒ずくめの男たちが現れる。


「逃しませんよ」

「何ですか、貴方たちは?!」

「我々は闇ギルドの者です、其方の白様を頂に参りました」

「女は殺しても構いません」


 黒ずくめたちは剣を抜く。


「白様は渡しません!!【箭疾歩せんしっぽ】。【発勁はっけい】!!」

「ぐは?!」


 猫猫は一気に間合いを詰める【箭疾歩せんしっぽ】で、黒ずくめの男の1人の懐に入り、そのまま必殺の【発勁】を放ち、息の根を止める。


「貴様、手加減はするな!殺してしまえ」


 黒ずくめの男のリーダーらしき男は、仲間が倒れた事には一切動揺せず、命令を下す。最初の方は猫猫の優勢だったが、白を守りながらの戦いは、猫猫に負担が大きく、遂に男たちの剣が腹を切る。


「がは!」

「猫猫!!」

「白様……お逃げ、下さ……い」

「猫猫……ごめん!」

「逃すわけが無いでしょう。そしてそっちは西ですよ」


※白虎

西の虎の都を守護する神獣。中の西の都を背にする時、全属性耐性、各種状態異常を無効化する。東を背にした時、全能力が1/3状態異常の効果が1段階上がる。他2方角は全ての能力値が通常に戻る。


「放せ!この!」

「はい、大人しくしましょうね。ちょっとちくっとしますよ」

「や……」


 あっさりと捕まってしまった、白は男の1人に何かを打たれ眠りにつく。


「はあ、めんどくさい仕事だったな」

「ああ、女1人だから油断してた」

「仲間は何人か死んだが、これで任務完了だ」

「急いで帰るぞ、待たせると俺らが消されかけないしな」


 黒ずくめの男たちは中を後にし、数時間後。

 猫猫が目を覚ます。意識が朦朧とする中、白様が大事にしていた白虎様の黒いバンダナを発見し、出来る限界の速度で町へと戻る。

 猫猫を見た門番が急いで、白虎邸へと使いを出す。

 そして白様が連れされた事が町中に知れ渡り、悲しみに暮れる中、お勤めから帰ってきた白虎様が、猫猫見て目を見開く。


「白虎…様」

「猫猫!どうした!」

「白様が、」

「坊やがどうしたのだ?!」

「黒ずくめの男たちに攫われ、ました」

「な?!」

「これが落ち……てました」


 猫猫がアイテムボックスから、黒いバンダナとアラガント所属のギルドカードを渡す。


「白虎様、すみません。白様を、お守りできずすみ……」

「猫!死ぬな!医官!!早く医官を呼べ!!」

「今急いで此方に来ております」


「我の愛子を攫い、民に重症をおわせた事、死んで詫びるがいい!!アランガント!!!!!!!」


 白虎は怒りの雷撃を放つ。異変を感じた他の三神も白虎の元へ動き出す。


『緊急クエスト:白虎の愛子の救出戦が始まりました』

『防衛クエスト:アランガント防衛戦が始まりました』


    第2章 傲慢な王と憤怒の四神

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