第17話 何やかんやで【スターシアン】新人戦開戦です!炎よ

 ふわっとした浮遊感を感じ、視界が白く染まる。

 その白さに慣れて来ると、其処は草原だった。


「あれ?メア、アーちゃんは?」

「見てないにゃ」


 どうしたものかと考えていると、アナウンスと一緒に上空にモニターが出現し、デフォルメされた孔雀が現れアナウンスする。


『初心者異界人の皆様、本日はお集まり頂きありがとうございます。私はイベント担当npcAI-397 どうぞサクナとお呼びください。只今皆様は、等間隔にワープされております、時間と共に移動エリアが狭まって行きます。制限時間1時間のサバイバルバトルロワイヤルです!!敵をより多く倒し、最後の1人になった異界人が優勝です!!それでは〜第13回【スターシアン】新人戦サバイバルバトルロワイヤルスタートです!!』


 上空に映し出された映像が消え、STARTの文字がデカデカと浮かび上がる。


「取り敢えず始まったみたいだけど、ここ風が気持ちいいねえ〜ふぁーおやすみzZ」

「おやすみって、この状況で寝るのにゃ?!ひるねはよくわからないのにゃ。よっと」


 取り敢えず寝てしまったひるねの首を咥えて、上に放り投げ、背でキャッチする。


「ピー」


【觔斗雲】を呼び出し、そのまま乗り込むと、全速力で草原を飛行する。そのまま、他のプレイヤーが目に入る。


「噂の珍しい猫か!相手にとっ?!ぎゃ、この僕を倒すとは……がく」


 即落ち2コマどころか即落ち1コマの速度で、倒されていった剣士くん。


「優くん!優くんの仇は、わ!!」


 近くに居たもう1人の女性魔法使いの首を飛ばす。

 2人の冒険者がリタイアした。接敵から5秒くらいの出来事である。


 それを遠目から見ていたプレイヤーは、ヤベェと心が1つになる。

 弱過ぎて拍子抜けだと、HPが減ってすらいないのに聖水をちびちびと舐め始めるメア。その背ではぐてーとへそ天で眠る金の猫ひるね。


「やっとにゃ」

 耳がピンと立つ。その瞬間、草原の周りを囲っていた木々の間から続々とプレイヤーが集まる。


「珍獣!!貴様がどれだけ強かろうと、このプレイヤーの数なら逃げ場などない!!」

「此処で退場よ!!」

「行くぞ!!野郎ども!!」

「「「おう!!」」」

「野郎じゃないけどね!私たちは!!」


 迫り来るプレイヤー、総勢100名近く。基本人種、亜人種もちらほら。やっぱり扱い辛いからか、モンスターの姿は見られない。

 身軽な前衛が迫る中、タンクプレイヤーの後ろに隠れながら魔法の詠唱を始める魔法使いたち。


「風よ!我が敵を撃破せよ風撃《ウィンドショック》!」

「火よ!我が敵を撃破せよ火撃ファイアショック!」

「水よ!我が敵を撃破せよ水撃ウォーターショック!」

「土よ!我が敵を撃破せよ土撃アースショック!」


※魔法の威力

無詠唱(スキル名のみ)<基本詠唱<オリジナル詠唱


 四限素のショック魔法が放たれる。メアは動じず、【宇迦うけ煙管きせる】の装備スキル【生命の煙】を発動し、聖水を一気に吸い込み、ふぁーと煙を吐く。


「当たったぞ!!」

「しゃあ!」

「待って!」

「ヤベェ、あの珍獣。無傷だぞ」

「あくびまでしてやがる」

「あたしたちを舐めないで!!」

「食いやがれ!【ソードストライク】!!」


 近いてきた剣士が、大剣による上段から下段への溜め攻撃を放つ。メアは、見てからでも避けれる敏捷を持っているが、【岩質下】を使用し額を岩に変える。そして真正面から額パリィを決める。


「な?!」

「バイバイにゃん【切り裂く】」

「ぐぅ……」


 剣士の胴体が真っ二つになる。だが他のプレイヤーは、その程度では動じない。近寄って来た近接プレイヤーが取り囲むように襲いかかる。


「死に晒せ!!」

「これは避けられまい!」

「死になさい!」

「にゃ、【影移動】。【加速】【乱れ引っ掻き】にゃ!!」

「ぐはっ?!」

「そんな」

「何故……後ろに」


 飛びかかった事で、自分の影しかなかった草原にプレイヤーの影が出来る。メアはこの影を利用し【影移動】でプレイヤーの背後に回り込み、【加速】で敏捷を1.5倍にし、囲っていたプレイヤーを【乱れ引っ掻き】で横に真っ二つにする。


「にゃにゃ〜」

「この?!」

「くそ!」

「何で当たらないのよ!」

「ぐはっ?!」

「ちょっ!!こっちに来ないでよ!!」


 メアは鼻歌混じりに戦場を走る。近接、中距離、タンク、魔法使いの順に時計回りに走りながら、接敵したプレイヤーを屠っていく。

 1人のタンクプレイヤーは重い装備のせいで攻撃をかわせず、背後に回ったメアが【尾突】を鎧の隙間を通らせ、心臓を串刺しにされる。その姿を見た周りのタンクプレイヤーの血の気が引く。

 そのプレイヤーたちは【恐怖】の状態異常に見舞われ、スキルのクールタイムが伸び、溜めが長くなる。

 そんな中、己を信じ、やまないプレイヤーが1人。

 そのタンクプレイヤーの1人は耐久に極振りし、カウンターを狙っていた。


「来やがれ!珍獣!【挑発タウント】!!」


 メアの意識がそのプレイヤーに向く、その時メアの背で寝ていたひるねが目を覚ます。【夢遊病:悪夢《ナイトメア》】がスキルが解除され、上がっていた耐久値が戻り、下がっていた腕力が元に戻る。


「あ〜よく寝た」

「【闇属性付与】!【切り裂く】にゃん!!」

「ぐぅ。これで俺の勝ちだ!!【反射カウンター】!!!」

「にゃ?!」


【根性】で1耐えたタンクは、全力の【反射カウンター】を放つ。メアの前に迫る肥大化した片手剣。メアは【切り裂く】後の硬直で避けられない。

 メアの全力の【切り裂く】の【反射カウンター】で2倍になった物理攻撃が、メアを切り裂いた。

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