第11話 桜姫、んにゃんにゃ

 今日は現実だと金曜日。

 桜姫が【スターシアン】を訪れる日。

【夢遊病】はふすふすと転移の泉の前で今か、今かと鼻息を荒くして待つ。誰かがワープしてくる。


「ここも久しぶりね!」

「そうだな」

「ワン!!あそこに何か猫いるよ」

「俺たちなんかしたか?」

「んにゃあーーー」


 出てきたプレイヤーが桜姫じゎなかったから、威嚇する【夢遊病】。困惑する男女2人と1匹のコーギー。


「ドレッドこっちこっちにゃ」

「ん?おう!ニャル子じゃねえか!」


 その様子を見ていたニャル子がドレッドたちを呼び寄せる。


「ワン!!へへっおひさ」

「ニャル、久しぶりね。最近見なかったけど、【スターシアン】に居たのね」

「久しぶりにゃ、コーヒーくん、トールっち。ちょっとね、あの子を観察してたのにゃ」


 ドレッドと呼ばれた赤いドレッドヘアーの片手剣士、コーギーのコーヒーくん。雷系の補助魔法具を見に纏う雷ヒーラートール。3人はパーティドトールのメンバー、某カフェが好きな3人組。


「ふーん、あれはダークキャットか?変な雲に乗って煙管を吹いてるみてえだけど?」

「なんかダークキャットにしては、大きくないかしら?」

「僕と同じ動物なのに、大きいね」

「あの子はダークキャットじゃないにゃ。良く尻尾を見てみるにゃ」


 視線を遠くの方、お尻のあたりを見ると尻尾が2本あることに気づく。


「おっ!尻尾が2本あるぞ!」

「猫で尻尾が2本、なんだったかしら、名前はねーねー」

「猫又わん?」

「そうそれよ」

「そうにゃ。ダークキャットから特殊進化した猫又のひるねんにゃよ。ここまでは桜んの串焼きで、聞けたにゃ」

「あー桜ん、あいつかあの鳥ばっか追いかけてる料理人桜姫か」

「そうにゃ。今日は【スターシアン】に来る日だにゃ。ひるねんは、今日のためにロックバード狩を昼夜問わずしてたにゃん」

「なるほどね」

「桜姫さんの串焼き、僕も好きだから気持ちわかるワン!!」

「因みに何体くらい狩ったんだ?お前の事だから、どうせストーカーしてたんだろ?」

「ストーカーとは心外だにゃ!ニャルは、見守ってただけにゃん!偶にご飯買ってあげてたにゃ、一応フレンドだにゃ」


 ニャル子はプンスカと尻尾と耳と腕を伸ばしながら怒る。


「ニャルワン、餌付けまでしたの?」

「ニャル、やってる事が、何も知らない小学生を餌付けして誘拐するストーカーみたいだよ」

「そ、そ、そ、そんなことにゃいにゃ!!見てるにゃ!!ひるね〜ん!!」


 ニャル子が【夢遊病】に突撃していく。それを見守るドトールパーティー。

 突っ込んできたニャル子に向かって、思い切り尻尾で叩き飛ばす。


「じゃまにゃ!」

「ぐはっ!?」


 ドトールパーティの近くの建物の壁に激突する。


「ツンなひるねんも良き……にゃ」

「おい!ニャル子死ぬな!」

「こここここここここは、し、し、しにゃにゃいにゃにゃにゃ」


 ドレッドがニャル子の肩を揺らす


「筋金入りね、ほんと」

「わう、あの子初心者?」

「多分にゃん、お金の稼ぎ方も知らないにゃん、だから桜んもロックバードのお肉1つ、ロックバード焼き鳥串1本交換してくれるにゃん、桜んはほんといい奴だにゃん」


「あらあら、ニャル子がそんなにわたくしのことを評価してくれるなんて、嬉しいわ〜」

「にゃあ!?」


 泉の方じゃなく、ニャル子の背後から現れる桜姫。実は屋台の出店許可を貰いに、【スターシアン】には昨日【夢遊病】にメッセージを送った時には来ていたのだ。【夢遊病】が桜姫に気付きダッシュで掛けより、跳びつく。


「さくらにゃ!!」

「あらあら、ひるねさんたら、そんなにコレが欲しかったのかしら?」

「にゃん!!」


 懐(アイテムボックス)から、ロックバードの焼き鳥串と秘伝のタレ壺を取り出し、それに浸す。

 指をぱちっと鳴らすと、桜屋と書かれた祭りの出店のような屋台が出現する、そして炭に火を入れるとその上に網を置き、さっき浸していた串を5本網の上へ、ジュッと音がし、タレが下の炭に垂れるたびに、ジュワーと焼き音が噴水広場に広がる。ひっくり返しながらじっくりと焼き完成だ。


「ひるねさん。はいどうぞ。1本目はわたくしからの奢りですの、火傷しないように注意して下さいまし」

「ありがとにゃん!みゃ、みゃ、んみゃ〜」

「ふふ」


 串にかぶりつき、はふはふしながら美味しそうに食べる【夢遊病】を見てご満悦な桜姫。残りの4本を他の3人と1匹に渡す。


「皆さんもどうぞですの」

「やったにゃ!」

「おう!わりいな。んまっ!かー酒があればな!!」

 ドレッドはお猪口をクイってやるように手の形を作る。

「ワン!これこれ!」

「ありがと。ん〜やっぱり、焼き方勝ることながら品質:9のタレは凄いわね、この1本で満腹ゲージ半分も回復するんだから」

「ふふ、わたくしが仕込んでいるんですのよ。これくらい当然ですの」


 桜姫は言葉では気高く振る舞っているが、褒められて嬉しそうな顔をしている。話題を変えるように、【夢遊病】に話しかける。


「そ、それでひるねさん」

「にゃ?」

「ロックバードのお肉はどれくらい集まったのかしら?」

「にゃ、今送るにゃ」


【夢遊病】はトレード機能を使って、桜姫にロックバードのお肉を100個渡す。その数量を見て、桜姫の顔が固まる。


「にゃん?たりにゃかった?」

「いえ、まさか100個も大変だったと思うですの?」

「がんばったにゃ!ほんとは、もっと狩りたかったにゃ、でもぜんぜん森にいなかったにゃ」

「そうだったのですの?」


 桜姫は頭に疑問を抱く、他の場所は淘汰されてるけど【スターシアン】の森には沢山いる筈だったから。


「100個?なあ、ひるねだったか、因みに何体くらい狩ったんだ?」

「にゃん?ロックバードのお肉100、ロックバードの岩皮膚199、あロックバードの核も出てたにゃ、んにゃたべよ」


 スキル獲得アイテム:ロックバードの核

 入手難易度:D級

 食べるとアクティブスキル【岩質化】を獲得可能。


【岩質下】種目:アクティブ MP:50

 効果:発動後身体の一部を岩のように硬く出来る。岩化した部分に受けた斬撃によるダメージを無効化する。

 クールタイム:10分


 知っているニャル子以外は絶句した。

 ニャル子は何故か腕を組んでドヤっていた。


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