第10話T8000の逆襲

『もしもしシチローか? だな』


その特徴のある、ガラガラのダミ声は間違いなくシチローの良く知る人物の声だった。しかし、そんな筈はないよなとシチローは首をかしげた……


「その声は羽毛田か? 何言ってんだ、久しぶりってさっき会ったばっかりだろ……」


『元気にしてたか』


「だから、さっき会っただろ~が! お前からかってんのか?」


どことなく話がかみ合わない。その会話の異常に気が付いた凪が、慌ててシチローに向かって叫んだ。


「シチロー、その電話に出ちゃダメ! すぐに切って!」


「えっ、どうして?」


「それはきっと、T8000に違いないわ!」


しかし、電話でシチローが聴いた声は間違いなく尊南アルカイナの羽毛田の声であった。シチローがその事を告げると、凪はその理由についてこんな事を言った。


「T8000は、一度でも聴いたことのある声やネットで取り込める、あらゆる人間の声帯をコピーする事が出来るの!」


すると、その凪の説明に猛烈に食いつく子豚。


「それはスゴイわ! じゃあは出来るかしら?」


子豚のリクエストにスマートフォンの向こうのT8000が応える。


『ヤバイよ~ヤバイヨ~シャレになんないよ~!』


「じゃあ、タモリさんは?」


『髪切った?』


「じゃあ、ビートたけし!」


『ダンカン、バカヤロコノヤロ!』


「スゲエ! 本物そっくりだっ!」


スマホを握りしめたまま、シチローが興奮して叫ぶ。

後部座席の子豚とひろきは、次は誰の真似をやってもらおうかと嬉しそうに話し合っていた。


「次は歌マネとかがいいんじゃない?」


「米津玄師とかどうかな」


そんなふうに子豚とひろきが盛り上がっていると、助手席のホノが少し言い辛そうに声をかけてきた。


「あの……そのスマホの位置情報でなんですけど……」


「え・・・・・・・・・」


ホノに現在地がまるわかりと言われ、慌てて後ろを振り返るチャリパイの三人。

するとそこには、いつの間にか物凄い勢いで自分達の車に近付いてくるの姿が見えた!


「T8000が乗っているわ!」


「いつの間に!」


それはアンタ達がいつまでもものまねで遊んでるからだろ……



ズドン!ズドン!


後ろからの銃声に気付きてぃーだが後ろを確認すると、T8000がトレーラーの中からショットガンを発砲していた。


「この前の銃と違うわ!」


「T8000、あんな銃まで持っていたの! 凪、出来るだけに走って銃をかわして!」


「了解!」


てぃーだのいう通り、凪は車を道幅いっぱいにジグザグ走行させT8000の銃撃を躱す。


「うぇ……なってきた……」


トランクの中のシチローから、泣きが入った……



☆☆☆



「こっちも負けてられないわ! みんなで反撃するのよ!」


このまま防戦一方では、いずれT8000に追いつかれてしまう……子豚の言う通りここは団結してT8000に応戦しなければならない。


 今走っているシチローの車は、リアシートのリクライニングを前に倒す事によって作りになっていた。つまり、そうする事によって車を走らせたまま武器をトランクから車内へと移動する事が出来た。

その機能を利用して、運転手の凪とシチロー以外の四人はシチローから銃を渡され後ろのトレーラーめがけて一斉射撃を始めた。


DA DA DA DA DA DA DA!


「ここは私が主役よ! これで吹っ飛ばしてやるわ!」


子豚は、ここぞ自分の見せ場とばかりにアルカイナの武器庫から拝借して来たを肩に担いで狙いを定めた。


「ちょっと……コブちゃん……」


「さあ、覚悟しなさいT8000!」


「コブちゃん、あのね……」


「何? 今いいところなんだから後にしてよ~ティダ!」


「そのロケットランチャー……だと思うけど……」


「え?・・・・・・」


それを聞いたトランクの中のシチローは、大笑いして言った。


「いやぁ、だったな~コブちゃん」


「凪、思い切りバックしていいわよ……位!」


「わあ~っ! 冗談だよコブちゃん! シャレになんないよ!」


だ」











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