第9話武器調達②

 さすがはテロ組織というだけの事はある。武器庫の中には、大量の大小様々な種類の銃器や爆薬、弾薬等が所狭しと並べて置かれていた。


「あたしは、コレとコレとコレと……」


「あんまり欲張らないで、後で運ぶのが大変よ!」


目に付いたものを端から抱え込むひろきに、てぃーだがそんなアドバイスを告げる。確かにあまり量が多すぎると、シチローの乗用車には積みきれないかもしれない。


「私、これ一度撃ってみたかったのよね」


子豚は、足下にあったを構えて得意そうに言った。


その横で一人何かを探すように木箱の蓋を開けていたホノが、目的の物を見つけたようだ。


「手榴弾は持って行った方がいいですね」


「さすがホノ、それは絶対要るわね!」


同じように何かを探しているようだったひろきが、顔を上げ凪の方を向いて訊ねた。


は無いの?」


「絶対無いと思います……」


凪が即座に否定した。



目ぼしい武器を手に入れると、てぃーだは撤収の合図をシチローに送った。


『シチロー、こっちは上手くいったわ! もう戻っていいわよ』


『………………』


喋った後に応答を待つが、なぜかシチローからの応答が無い……


『シチロー、聴こえてるの?』




「アッタマきた! もう一回勝負だ羽毛田! ……こうなったら勝つまでやってやる!」

「ワハハ♪何回やっても一緒だよ」



『お~いシチロー返事して? …ぉ~ぃ…』



☆☆☆



「いつまでオセロやってるのよ、シチロー!」


武器を積み終わった車の中から、てぃーだがシチローを怒鳴りつける。


「いやあ、悪い悪い……つい夢中になっちゃって……」


 負けず嫌いなシチローには、この作戦は合わなかったようである。シチローは当初の予定から大分遅れて、頭をポリポリと掻きながら走って車へと帰ってきた。


「ほらっ、早く乗りなさいよ! ……に」


シチローの車は五人乗りである。座席は既に埋まっていてシチローの場所はトランクしか無いのだが、そのトランクは積み込んだ武器の為に前にもまして狭くなっていた。


「ここに乗れっていうのかよ……」


開いたトランクを見たシチローが、情けない声で呟いた。



☆☆☆



凪の運転で、車は再び走り出した。


「凪、これだけ武器が揃えばT8000に対抗出来るかしら?」


「どうでしょう、これだけの武器があっても果たしてあのT8000を破壊出来るかどうか……」


てぃーだの質問に答える凪の表情は、真剣そのものだった。その位、T8000の戦闘能力は強大であるという事なのだろう……助手席に座っていたホノが溜息混じりに呟く。


「出来るなら、無用な戦闘は避けた方が無難です。T8000には、出来るだけ見つからない様にするのが賢明だと思います」


そんな時だった……車内の会話に割り込むように、突然、スマートフォンの着信を知らせるメロディが鳴り響いた。


「えっ、これ誰のスマホ?」


「あたしのスマホじゃないよ」


「私もこんな着メロじゃないわ」


 どうやらてぃーだ達三人の物ではないらしい。そうなると、トランクにいるシチローのスマートフォンという事になる。


「シチロー、電話掛かってきてるけど?」


電話がかかってきているのは、当然シチローにもよくわかっていた。しかし真っ暗なうえに体の自由も利かない程に狭いトランクの中では、ポケットのスマートフォンに手を伸ばす事すらままならない。


「ちょっと待ってよ今出るから……はい、もしもし…」


さんざん苦労した挙句に電話に出たシチロー。すると、その電話の相手はシチローの思いもよらない相手だった……

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