第2話襲撃

 T8000はその圧倒的な能力ちからを使い一軒の衣料店でシャツとレザーの上下、そしてサングラスを強奪すると、更には暴力団の事務所を襲撃し、マシンガンとショットガンを手に入れた。そしてそれを肩に掛けたまま、ゆっくりと森永探偵事務所の方角へと足を向け、歩き出した。


その様子はあまりにも堂々としていて街行く人々には、まさかそれが本物の銃だとは思えない程であった。


やがて森永探偵事務所の正面玄関の前に立ち、窓からの生体反応で中にターゲットの存在を確認する。


『ターゲット、森永探偵事務所……』


T8000は、無表情のままマシンガンを構えると、なんの躊躇いもなく、そのトリガーを引いた。


DA DA DA DA DA DA DA!


♢♢♢



「うわっ、なんだ!」


なんの前ぶれもなく、いきなり事務所の壁がとなりその方角と同じ窓ガラスが粉々に砕け散った。


「キャーッ! 北朝鮮が攻めてきたのよ~!」


「ああ~っ! もらったばかりのバドワイザーに穴が~!」


子豚とひろきが大騒ぎをする中、てぃーだが冷静に適確な指示を出す。


「ビールの心配はいいから、早くテーブルの後ろに隠れて!」


探偵事務所という仕事柄、時には危険な目に遭う事もあるが、こんなに真昼間から白昼堂々と狙われるような仕事を受けた覚えは無い。外で自分達を狙っているのは果たして誰なのか、シチローには全く見当がつかなかった。


「一体誰が撃ってるんだ?」


シチローがテーブルの端から僅かに顔を覗かせると、割れた窓ガラスの向こう側にマシンガンを乱射する男の姿が僅かに見えた。


「あれは!



HGだっ!」


『フォオォ~~♪って違うわ~っ!』


よく芸人に間違えられるアンドロイドである。


「とにかく、ここから逃げるぞ! みんな、に集合だ!」


了解ラジャー!」


 森永探偵事務所の地下はガレージになっていて、シチローの愛車はそこに駐車されていた。チャリパイの四人は次々とそれに乗り込む。運転手は勿論シチロー、助手席にてぃーだ、そして後部座席には子豚とひろきの順である。


「いいか、強行突破するから頭を下げていろよ!」


 森永探偵事務所の駐車場入り口は、なだらかなスロープになっている。シチローは車のエンジンをかけ、アクセルを床いっぱいまでべったりと踏み込んだ。前輪が僅かにホイールスピンを起こすとシチロー達を乗せた車はなだらかなスロープを勢いよく登り切り勢いで一瞬前輪を浮かせた後にT8000の横を掠めながら大通りに消えて行った。


「ターゲット生存……銃撃失敗……」


弾切れのカタカタという音が、T8000の持つマシンガンから聞こえていた。



♢♢♢



「追いかけて来ないわ……どうやら無事に逃げられたみたいね」


「走って車には追い付けないもんね」


T8000の姿が見えなくなり、チャリパイの四人はもうこれでT8000が自分達を追ってくる事は無いだろう…そんな風に思っていた。


「まあ、アイツが誰だか知らないけど、ここまで逃げ切れればさすがに諦めるだろう」


シチローはそんな分析をしていたが、その理論には実はシチローも知らない大きながあった。


 第一に、シチローはT8000がアンドロイドである事を知らない……アンドロイドであるT8000は、プログラムされた事を自分で勝手に諦める事をしない。命令がキャンセルされるか自分が完全に破壊されるまで、まさに追う事をやめない。更には西暦2100年の進んだ科学技術により設計されたT8000は、今この瞬間にもその優秀な人工知能AIでシチロー達の次の行動を予測していた。


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