外伝

とある喫茶店、店の奥端の席に探偵は、座っていた。

「ここでは、パフェも食べないとね~♪」

そう言ってメニューをピラピラめくる。

「この、春のフルーツスーパーDXチョコ&生クリームましましパフェと、ブレンドコーヒーで。」

探偵は、注文を終えるとふ~っと息を吐くとぐったりとなった。

「……名前は、か。聞かれたのはいつぶりだ?」

探偵の脳裏にあの時の情景が浮かぶ。

「フフッ、最近は思い出す機会無かったからなぁ。」

探偵は、ふっと、目蓋を閉じ、こちらにやって来、ち、ちょっとな、なにするんですか!?

 まあまあ、落ち着いて、ね!

さて、どうも皆さんこんにちは。精神探偵です。精神探偵シリーズ、御愛読ありがとう。

 ちぇっ、お前は主人公だろ、ぶつぶつ……

(小声で)

 なにか言った?

 別になにも!

 ならよかった、言いたいことがあるならいいたまえ。マイクは、僕がもっているんだ。なにか発言するなら、ちゃんと読者に聞こえるようにマイクを通していってくれよ。

 お前が奪ったんだろ…(小声で)

 ん?なにか言っt…

 言ってない!

 …ならいいんだ。

さて、気を取り直して。

今から、お読みいただく物語は、私、精神探偵が探偵になるまでの話です。この僕が、探偵になるまでに何があったのか!?なぜ、名前を名乗らないのか!?愛と勇気、そしてフィクション盛りだくさんでお届けします!

 フィクションあったらダメだろ。

 ………おっほん!(咳払い)

それでは、お楽しみに~!

 無理やり始めやがった。


━━もちろん、フィクション盛りません👍️




 小さいときから、叔母に育てて貰っていた。両親は、赤ちゃんの時には、もういなかった。だから、名前はおばに着けてもらったものだ。しかし、叔母が自分のために尽くしてくれたこともあり、両親がいないことに(言い方は悪いが、)不自由はなかった。


小学生の頃は、

「おばさん行ってきま~す!!」

「はいはい。気をつけてね。」

勢い良く玄関から飛び出し、学校へ走っていく、という行為が毎日の恒例になっていた。

なにも考えずに走り回り、友達とからかいあったりし、学校生活を楽しんだ。その時はまだ、中学校でも同じような日々が待っていると思っていた。


中学校に入学し、最初の学活の授業。

「親に感謝を伝えよう」

先生には、叔母のことを書けば良いと言われたが、その機会に親のことを知りたいと思った。

でも、叔母にも、やめときなさいと言われた。

どうしても知りたいと思ったので、僕は内緒で両親の最後にいた病院へ行くことにした。そこで僕は衝撃の事実を聞くことになる。


「おふたりは、病死ではないですよ。」

──は?なんて?

「叔母様からお聞きになっていないんですか?死因は───」

その瞬間、病院から飛び出していた。

病院は、家のすぐ近くだ。

    ドアを勢いよく開け、靴を脱ぎ散らかす。

「ちょっと何して──。」

「おばさん!!」

声をさえぎって怒鳴った。

おばさんが驚いて黙る。

「ねぇ、お母さんとお父さん、病死じゃないの?」

おばさんが自分に嘘をついてたことが悲しくて、嫌で、しかも親の死因が、

「病院の看護師さんが、お母さんたちは、殺されたって。ねぇ!説明してよ。誰が殺したの?」

叔母は、やっと何事かをさとり、悲しそうな表情をして話してくれた。

「……あなたの両親は、なんにも悪いことはしてないわ。誰にも恨まれるようなことは無かった。」

「じゃあ、なんで…。」

おばがゆっくり話し始めた。

「あなたを産んですぐのことよ。2人で出かけて私が家であなたの世話をした時があったの。でも、行ったきり、帰ってこなかった。その時にはもう、殺されてたの。その頃、世間を騒がせた無差別殺人鬼がいて、警察に聞くとおそらくその人にやられたって。」

「………。」

言葉が出なかった。

   





     少しの間、学校を休み部屋にこもった。食事は少ししか食べず、一日中寝てる日々が続いた。

    しかし、ある時、急に両親の死因を詳しく知りたくなった。そして、その事件を捜査したという警察署に向かった。 

   

    久しぶりの外は地獄だった。前はあんなに涼しかったのに、火山でもあるのか、と言うくらい暑い。水筒も持たずに飛び出したから、死ぬかと思った。やっとの思いで、警察署に着き、待合室で待っていると

「こんにちは、私がその事件を扱いました、安井です。」

と名刺を渡された。N警察署捜査第1課…?

なんかよくわかんないが話を聞いてみることにした。


     めんどくさいので、会話の内容のみ省略して書いておく。

・犯人は、無差別連続殺人鬼で有名のS氏

・場所は、某所の路地

・母も父も左胸を一刺し、争いあった形跡はなかった。いずれも前から刺された様子。

・S氏の他の事件と異なる点が1点、S氏の被害者は全員後ろから右胸を刺されているところ

・路地は人二人は並んで歩けないほどの狭いところであった(S氏のほかの犯行現場も同じ)

・凶器は、出刃包丁が用いられた。



それだけ聞いたので、もう帰ろうとしたが。

「君は1人でこの事件を解決しようとしてるのかい?」

安井さんが話しかけてきた。

「はい、親には内緒で来ました。」

「へぇ〜凄いね。手伝ってあげようか?」

めんどくさい刑事だ。

「いえ、大丈夫です。それでは。」

「いいの?警察だからね?情報いるでしょ?」

なんだコイツは、本当に警察なのか?

めんどくさいが情報は欲しいな…。

まあ、背に腹はかえられない。

「じゃあ、お願いします。でも、この件が終わったら、関わらないと約束してください。」

「いいよ〜。」

にこにこして言った。

本当に何が狙いだ?




帰ると、おばさんはおらず、1人になった。

どうしようか。次に1人でできそうなことといえば…。

現場に行ってみるか。


「やっほー」

「は?」

なんでこいつがここにいるんだ…。

「なんでここにこいつがいるんだ…。って思ったでしょ!」

無視してしたいことをしよう。

そう思って、真顔で横を通り過ぎようとすると

「なんで無視するの〜。」

「めんどくさいから。」

即答する。

「酷っ。協力するって言ったじゃん。」

「それよりなんでわかったの?」

予知能力でも持ってるのか?

「フフフ、自分なら次どうするかと考えてみたんだ。そしたら、ここに君も来た。まるで心が通じ合っt」

「ってない!」

なんだコイツは!もういい、さっさとすまそう。

「当時の様子を知りたいのだろう。」

「っ…別に。」

安井さんはニヤニヤこちらを見てきた。

「頼ればいいじゃん♪」

こいつに頼るのは 、なんか嫌だ。

でも…。

「教えて。」

「ふふ、いいよぉ♪」この路地の奥の方に

そう言って話し始めた。

「君の両親は、この路地の奥の方に同じように並んで、後ろに倒れていた。引きずられたあとは無いから移動はされてない。さっき、君の両親だけ刺され方がおかしいと言ったけど、さらに言うと、2人同時の犯行も、これまでなかったんだ。」

なんでさっき言わなかったんだ…。

「なんでさっき言わなかったかと言うとね

、もうあってくれないかもと思ったからだよ。 」

心を読むな!

「じゃあ、もう会わなくていいね!」

「やだ。それより、事件の日のことをもう1回調査したらどうだい?」

話題を変えやがった…。

「今話を聞いてわかる通り、君の両親はSの犯行では無いと考えられる。しかも、路地で正面から刺されたとすると、君の両親が知っている誰かが呼び出したと考えることも出来る。」

安井さんがこちらを覗き込んだ。

「さあ、こんなとこにいつまでもいるつもりかい?」

ムカつくな。

まあ、いいや。おばさんが帰ってくるまで家で待っとこ。


1時間後──


ガチャ。扉の開く音がした。

「ただいま。ごめん遅くなっちゃって。美味しいもの買ってきたよー。」


夕食の時、おばに聞いてみた。

「その、お母さんたちが死んだ日、おばさんは何してたの?」

「…あの日はずっとあなたのところにいたわ。まだ生まれて間もなかったから。 」

「じゃあ、最後にお母さんたちとあったのは?」

おばは、はぁと息を吐いた。

「じつは、事件の第一発見者は、私なの。」

は?

「なんで、黙ってたの?」

「ねえ、犯人を見つけようとしてるのかもしれないけど、やめて!あなたまで殺されるかもしれないでしょ!」

「警察の人がね…犯行はその殺人魔の人じゃないかもって…。しかもお母さんたちの知ってる人が誘き寄せたかもって。」

「そうなの…?ほんとに?」

「うん。刃物で一刺し、正面から刺されたって。凶器は包丁だって。」

「…知らなかったわ」

その日は、夕食を食べて何も言わず寝た。


次の日──


安井さんのところにもう一度、行ってみることにした。今度はおばも連れていくことにした。


「こんにちは。」

「こんにちは〜。」

私達は軽く挨拶をして席に座った。

「早速ですが、あなたが彼のおば様ですね?」

「はい。」

「当時、事件の担当をしていました安井です。」

「はい、覚えています。」

おばさんは頷いた。

「早速ですが、事件のことでいくつか聞きたいことがあります。」

「その前に、なんで今更こんな話をするんですか?」

「頼んだんだよ。」

代わりに答えた。そう、この話し合いの場は、ある仮説が正しいか確かめるためにいやいやお願いして用意してもらったのだ。

おばは黙った。

「では早速、事件で使われた刃物はご存知ですね。」

「はい、確か出刃包丁…。」

「その通りです。」

「この子の両親は、この包丁で殺されています。」

安井さんが凶器を取り出す。

「見覚えはありませんか?」

「ない…です。」

「では、事件当時どこにいらっしゃいましたか?」

──その後も順調に話し合いは進んだ。


「それでは最後に。」

そう言いながらおばの手に手錠をかけた。

「えっ…。」

おばは困惑している。

「これでいいんだね?」

安井さんが聞いてきた。

「はい。ありがとうございます。」

「本当は、手錠なんてダメなんだけどなぁ。」

安井さんが頭を搔く。

「すぐ現行犯逮捕になるから。」

「ちょっと!さっきから何言ってるの!?」

「そーだそーだ。説明してよー。」

そろそろ説明してやろーか。

「おばさん、昨日事件のことについて話したら、『知らなかったわ』と答えた。もちろん凶器のことも。」

おばさんがはっとした。

「そ、それは発見した時に見ていたの。」

その時、安井さんの電話がなった。

「あ、うん。良かった。」

安井さんが頷いた。

「な、何かあったの?」

「なんの証拠もなくあなたを犯人にすることは無理だ。ないなら、探せばいい。」

そう、この話し合い自体時間稼ぎだ。

「今、刑事さんたちが家の中を捜索してる。」

「そ、そんなのよくないわ。いきなりは無理よ!」

「こうでもしないと。だっておばさん部屋見してくれないじゃん。」

「見つかったのは、返り血が着いたであろう手袋と上着。誰の血かとかはすぐ分かるだろうけどね。」

「ごめん。小さい時から厳重に鍵が掛けられた箱があるの、知ってたから。でも、疑ってよかった。」

安井さんは今までで1番真剣な顔をしている。

「なんで捨てなかったの?」

おばさんは俯いている。

「隠すのが1番逃げ切れると思ったのよ。捨てれば、ゴミ捨て場で拾った人が通報したら終わり。遠くで燃やすことも考えたけどお前がいた。あまり遠くは行けないし、お前に見られてしまったら、と考えると隠すのが1番だったの。」

僕を睨みながら言った。

「じゃあ、なんでこんなことしたの?」

1番気になることだ。

「お金が必要だったの。借金が溜まってしまってね。あなたの祖父母はもう死んでる。あなたの両親を殺せば、遺産はあなたのものだわ。でもその時はまだ小さいから私が後見人となって遺産を借金返済に使ったの。」

おばは開き直ってニコッとしている。

「それだけ?」

「うん。」

おばは笑顔でそう言った。

僕は、その顔にゾッとして何も言えなくなった。

「あとは署でゆっくり話しましょう。」

安井さんが言って、おばを連れていく。

「……。」

それを見ながら僕は黙って座っていた。


次の日──


    おばの罪が決定した。まあ、認めていたからそらそうか。

「安井さん、ご飯できたよ。」

「ありがとう!m…」

「名前で呼ばないでください。」

「え〜、だって〜。」

あの後、僕は安井さんに引き取られることになった。

    あと、同棲してわかったこと、安井さんは家事が、とても下手だ。最初、家に入った時は床がどこにあるのか分からなかった。

今は僕のおかげでまともな部屋になった。でもすぐ安井さんが散らかすから油断出来ない。

「それじゃ、行ってくるよー。」

    安井さんが出勤した。

    さて、僕も中学行くかな。

制服に着替えて、荷物を持つ。

玄関で振り向き、誰もいない部屋に向かって言う。

「行ってきます。」



─精神探偵外伝終─

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