幕間 緑と青と、それから紅茶


過去の世界に戻ってきた日。神々に呼び出され色々と問われたり、時間遡行じかんそこうの影響がないかの様子見をかねた散歩をするなどした。その夜のこと


「づがれだぁ〜……」

「おつかれ。ほれ、紅茶淹れといたぞ。おまえアールグレイ好きだろ」

「お〜、ありがと〜……あれ、濁闇だくあ。お前どこで紅茶の淹れ方なんて覚えたんだよ」

「あぁ?あー、ほらオレ達とアイツらは時間逆行?遡行?まぁどちらでもいいんだが――あのときオレ達姉妹の統合も発生しただろ。で、どうにもオレの場合は優華ゆかのヤツと混ざった割合が高いようでな〜。こっちに戻って気がついた時からあいつの知識とかがインストールされてたって話だ。お前も心当たりあるんじゃないのか?」


問われてから思い返すと確かに彼女らの持っていた知識や技量を自然と使っていたことに気づく。同時にそれが堪らなく嬉しかった


「そっか、みんな一緒なんだな」

「あぁ。そのおかげでお前のティータイムのお供も完全に把握済みってワケだ。ほい、チョコチップスコーン」

「神か?……いやうちの姉妹みうち、神だったわ」


穏やかな時が流れる。流れていたのだが、やはりというかこういう時に現れるのがうちの姉らしいところか


輝光ひかるー!濁闇ー!!髪染めよーぜーー!」

「マジでどういう風の吹き回しよ」

「どぅーゆー風の炊き出しだって?」

「なー、輝光ほんとさぁ!この姉貴ダルいってー!!」

「にゃははは……まぁ姉ちゃんもなんか理由があってなんだろ?」

「そらそーよ。それはそれはとてもつなく深い、海底よりもさらに深く。宇宙よりも広くて尊い理由あるって〜!」

「ほー?そら随分と大きくでたな。それでしょうもねえ理由だったら始源神の前に――」

「しょうもないなんてとんでもない。私なりのケジメというか覚悟というか……んまぁ、要するに妹ちゃんらのテーマカラーを差し色にして絶対忘れないぞーってことよ。おーらい?」


一時ひとときの静寂。最初に口を開いたのはやはりというべきか――


「……悪かったよ。しょうもねぇとか言って。冷静でいたつもりだが、どうやらオレも辛いものは辛かったってことか」

「にゃっはは。濁闇も輝光に負けず劣らず家族思いでおねーちゃん嬉しいぞ〜。いっそ濁った闇から抱く愛で抱愛だくあに改名しちゃう?」

「小っ恥ずかしいからいやですっ!!!」

「え、そう?俺は良いと思ったんだけど」

「ひーかーるー!お前もかよっ!!」

「おねーちゃん的にはむしろ7人全員満場一致の名案ではなかろうかと思うのよっ!」

「オレの意見ゴリ押しでねじ伏せようとするのやめろォッ!?」


こうして、我が家の騒がしき姉・黒音くろねの妙案により3人それぞれの髪に差し色、インナーカラーを入れることとなった


「ふ〜〜ん、ほーーう?こうなるか。ま、いいんじゃねーの。輝光、そっちはどんなだよ」

「…………へへっ」

「え、なにその笑顔」

「あぁ、いや。こうして色入れてみたらなんとなくさ、あの子らはいつも一緒に居てくれるんだなって。そう思うと嬉しくて」

「――確かにな」

「よーし、明日から気合い入れて始源神対策するぞー!」

「おー、やる気あんのはいいけど無茶すんなよー?いかにオレ達が人間と違うからってやりすぎは禁物だからな」

「言われずともわぁってるよ。……お前、実は心配性?やっぱ抱く愛なの?」

「はっ倒すぞっ?!」


その数日後、本当に無理をして倒れたのはまた別の話

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