第7話 今の琉生の特技

「琉生くん、ここは、こうして、こう」

「そうですか」

「そして、くっつけるときは、爪楊枝を使うの。爪楊枝にボンドをつけるの」

「キーホルダーづくり、とっても奥が深くて楽しいです」

「前の琉生・・・くんは、これがとっても上手だったの。それで、偉そうな口調で教えてきた」

「琉生でいいです」

「ふえ?」

「だから、と言っているんです」

驚いて琉生の顔を見る梨々花。

すると、琉生はぷい、と向こうを向いてしまった。

でも、琉生は、耳まで真っ赤だった。

普通、女子なら照れているとわかるはずだが、梨々花は鈍感すぎて気づかない。

「顔、赤いよ。大丈夫?」

そうして、梨々花は琉生のおでこに手を当てる。

「なっ・・!」

「また熱くなった!大丈夫?」

「大丈夫、です」

そして、こんなやり取りを交えながら。

「「完成!」」

琉生と梨々花は、一斉に声を上げた。

梨々花は、あのとき琉生に馬鹿にされたときのキーホルダーと同じデザイン。

琉生は、琉生が好きな動物のくま。

「琉生、なんでくまにしたの?」

「なぜか、これがいいと直感で感じました」

「琉生もくま、好きだったんだよ。琉生、私も梨々花でいいし、敬語禁止」

「うん。梨々花、わかった」

「キーホルダーづくり、とても楽しかった!また教えて」

すると、そのとき、梨々花の目から涙が溢れた。

「どうしたの?」

「なんでもない」

梨々花は、今の琉生が前の琉生と重なって見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る