第95話 接近

「やべっ、なんか進化したぞ!」

「恵麻、あいつのステータスわかる!」

「うん、今見てる……レベル1550……凄い、ブラックドラゴンよりレベルは上で、全てのステータスが五割増しくらい、間違いなく強敵よ!」


「レベル1550か、だけど、それくらいならいけそうだな」


僕らはレベル1260のブラックドラゴンを倒している。それより少し強いけど、僕らもレベルアップでさらに強くなってるので、確かに、いけそうな感じはしていた。


しかし、光る石像が強い光を発した瞬間、そんな余裕は消えた。光は僕らに向かって、長い鞭のように振り下ろされる。それを受け止めた碧の盾が、まさかの全壊した。


「やばっ!」


壊れた盾は粒子のように粉々になり、強制的にインベントリに収納される。碧は慌てて剣を両手持ちにして構えなおす。しかし、あの盾が壊されるような攻撃に、碧の炎の剣がどれくらい耐えられるか疑問だ。


「碧、ここは俺に任せろ」


朝陽が注意を引くように光る石像の前へ躍り出る。光る石像はそんな朝陽をすぐにターゲットにする。体中からニョロニョロと出てくる光る鞭で必要に攻撃してきた。


さすがの朝陽も、無数に迫る鞭の攻撃にギリギリで避けるのが精一杯だ。このままでは攻撃がヒットするのは時間の問題のように見えた。光る鞭は碧の盾を粉砕する威力なので、朝陽にあたったら一溜りもないだろう。


「このままじゃ、朝陽がやられる、援護するぞ!」

碧の声で、僕らは各々、攻撃態勢に入った。



理央の魔法が光る石像の頭部に命中する。さらに腹部にヒマリのライトニングボウガンも突き刺さった。周りを朝陽が飛び回っているが、大きさの比率が違うこともあり、光る石像は狙いやすかった。しかし、攻撃は命中するが、見た目通り光る石像は丈夫でなかなかHPを削っているとは感じない。


「恵麻、健太、ブラックドラゴン戦の時と同じ作戦でいくぞ!」


僕と恵麻は属性に左右されない高火力の攻撃を行える。射程が短いのがネックで、どうやって強敵の近くに接近するかが問題となる。


僕と恵麻は、ブラックドラゴン戦の時と同じで、ゴンに守られながら光る石像に接近する。碧は理央とヒマリの護りで後衛に残った。


ブラックドラゴン戦とまったく同じ作戦だけど、有効な作戦なのは間違いない。僕たちはこの時、上手くいくことを確信していた。


だけど、やはり甘くはなかった。敵はブラックドラゴンより格上のダンジョンボス、接近に気づくと、無数の光る鞭でゴン、恵麻、僕を同時に攻撃してきた。


僕と恵麻とゴンは、ギリギリでその光の鞭を避ける。さらに追撃してくる光の鞭から逃げるように、光る石像から距離をとった。


「ダメだ、近づけない。敵の手数が多すぎる」


「碧、私とヒマリはもう少し後ろに引いて攻撃するから、健太と恵麻の護衛にいって」


「わかった。攻撃より、身を護ることを優先してくれよ」


理央たちにそう言い残すと、碧が僕と恵麻の方へと来てくれた。ゴンと碧に守られながら、僕と恵麻は光る石像へと再度接近を試みた。

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