第90話 そのままレベル上げ

あの強敵たちを僕たちはそれほど苦労することもなく殲滅できた。やはりというか、かなりのパワーアップで自信もついたように感じる。


「おい、ポンコツ、これでも俺たちにはダンジョンボスを倒せねえっていうのか?」

「マッタクモッテ、タオセナイ。オシクモナイシ、ジゲンガマダチガウ」

「たく、お前、意地になってるだけだろ? 本当はもう、俺たちでボスを倒せるって思ってんじゃねえのか?」

「ダカラムリッテイッテルダロウガ、ヘンニカングラナイデ、スナオニウケトメロ」


「とにかく、もしかしたら本当に力不足かもしれないし、もう少しこのままここでレベル上げすればいいんじゃない?」

「そうね、さっきの戦闘でも一気にレベルアップしてるし、備えあれば憂いなし、今日は一日、レベル上げに費やしましょう」


今日一日のレベル上げに反対する者はいなかった。確かにレベルは上げて困ることでもないし、できるかぎりレベルを上げていて損はない。



この特殊エリアでのレベル上げで、気が付いたのだけど、恵麻の新しい武器、デバフタクトの性能がヤバい。眠り、麻痺を同時に付与できるこのタクト、この両方の無効耐性を持っている敵は皆無で、必ずどちらかの効果があった。眠り、麻痺になると猛毒によるスリップダメージが入るし、どんな強敵もその毒でやがては倒れる。さらにボス級の敵にはデバフ効果があることで、弱体化させることができるし、どんな状況でも活躍できそうだった。


そして、前衛として覚醒した碧の剣武一筋のスキル効果はやはり凄まじい。今まで何だったんだろうと思うほどの前衛感を醸し出し、敵を抑えるだけではなく、強力な一撃で致命的なダメージを与える。まさに闘神、頼もしい存在となっていた。


朝陽はサブジョブスキル【陰に生きる】により、ジョブ忍者の能力を得たことにより、より早く、より避ける、そして、必中の連撃は強力な多段ヒットの攻撃で、驚くほど敵の体力を削る。


分かりやすくパワーアップを実感できる三人に比べて、僕やヒマリ、そして理央は地味で実感しにくいけど、確実にダメージ量は飛躍的にアップしていた。それにより、この特殊エリアの強敵を圧倒するPT火力が実現していたし、戦いに貢献できていると思う。


しかし、そんな順調な僕たちに不測の事態が起こる。


レベル上げもそろそろ切り上げようかと話が出始めた頃合い、ゴンが不吉なことを言い出したのが始まりだった。


「ソレヨリオマエラ、ココデバカスカ、テキヲタオシマクッタラ、アイツガデテクルカモシレナイゾ」


「はぁ? ”あいつ”ってなんだよ」

「ココノ、エリアボスニ、キマッテルダロウガ」

「エリアボス!?」


朝陽の反応の言葉と同時に地響きがした。そしてそれは大きくなり、エリア全体に広がる。モンスターが湧き出る時のエフェクトの巨大なモノが、エリアの中央で発生した。それはどんどん広がっていき、光が消滅すると同時に、何かがそこから現れた。

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