第89話 無謀ならぬ作戦
少し無謀だと僕は思ったけど、みんな少しづつ過信があるのか、朝陽の作戦が実行されることになった。
理央が、ジョブアップグレードにより発現したという、とっておきの大魔法の詠唱を始める。長い詠唱に比例して、威力と効果範囲は大きく、まさに奇襲にはぴったりの攻撃だった。
「ニュークリア・エクスプロージョン!!」
モンスターの群れの中に見ていられないくらいの眩しい光が発生する。それは一気に広がり、次々とモンスターを飲み込んでいく。メッセージ表示には億の位に達するダメージが表示されていき、あまりの威力に離れていた僕たちの方まで音と衝撃、そして熱が伝わってきた。
「や……やべーダメージだな……」
「これは狭い通路や部屋じゃ使えないな」
恐ろしいことに理央の魔法は敵の大半を全滅させていた。驚異の攻撃力だけど、現状でも魔力の大半を消費するらしく、連発することはできないようだ。さらに範囲が広すぎて、仲間にまで影響を与えそうでちょっと使いにくい感じはした。
「うん、この魔法はなるべく使わないようにしましょう」
理央は決心したようにそう言った。
「さて、生き残りがくるぞ! 戦闘態勢だ!」
朝陽が何も指示してなくても、それを聞いた碧は前に出て、剣を構える。僕はそれを見て、言わないと動かないゴンに指示を出した。
「ゴン、敵を食い止めて!」
「フンッ、シカタナイ」
いつものように、朝陽、碧、ゴンが前衛、僕と恵麻と理央、ヒマリが後衛の陣形で、生き残りのモンスターの襲撃に備えた。
敵の数は30体ほど、あの巨大なゴリラなど、強そうなモンスターばかりだった。間違いなく、昨日までの僕たちでは太刀打ちできないほどの戦力に、ちょっとビビる。
殺到してきたモンスターを、碧と朝陽、そしてゴンが受け止める。碧は盾と剣で応戦することで、朝陽は攻撃を避けることで、そしてゴンは体でまともに受け止めた。
混戦では理央は範囲魔法を使えない。効果範囲は狭い威力の高い魔法を選択する。
「アイシクルランス!」
氷の槍が敵を貫き、ダメージを与え、さらに追加で凍結ダメージも与える。凍結した敵は動きも鈍り、さらに狙いやすくなる。そこへヒマリがライトニングボウガンで追撃する。
殲滅を優先する理央やヒマリに対して、恵麻は前衛をサポートするように立ち回る。不意に攻撃してくる敵を狙って、新武器であるデバフタクトを振る。
「衰退せよ!」
恵麻に狙われた敵はピタリと動きを止めたり、眠りに付いてバタリと倒れる。さらにその敵は弱体していることにより、前衛の三人や、理央とヒマリのターゲットとなり、屠られることになる。
僕はケンタワンドは温存して、神撃の数珠で攻撃する。ジョブアップグレードのおかげか、神撃の数珠の攻撃もかなり威力が上っていた。数珠一振りするだけで、数百万のダメージを敵に与える。ちょっと怖くなるほどのお手軽感覚での高ダメージに、自分でもちょっと引いた。
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