第85話 ジョブアップグレード2

「次、私ね」


理央は朝陽の成長に触発されたのか、自ら次の順番に志願した。すぐに自分のインベントリに神託の宝珠を入れると、迷わず実行した。


理央のジョブアップグレードの結果は、これまたとんでもないものだった。


「ジョブ名は極魔女、ユニークスキル【十全十美】が発現しましたね」

「魔女!? 私、魔女になったの!」

「お似合いじゃねえか、魔女のイメージ、ぴったりだ」

「うるさいわね、火炎魔法で頭燃やしちゃうわよ」


本当にやりかねない威圧感に、朝陽も危険を察したのかすごすごと悪態を収めた。


「それで【十全十美】てなんなの?」

「一言で言うと、完全強化です。あらゆる能力が上昇して強化されます。特に魔法に関する能力はかなり強化されるみたいですね」

「完全強化なんてうれしいけど、なんか大雑把な能力ね」

「単純に全能力強化だろ、いいんじゃねえか」

「まあ、確かにいいけどね」


全てが強化されるなんて、素晴らしい。だけど、理央はどこか不満そうだ。


「次! ヒマリね!」


珍しくおとなしく状況を見ていたヒマリが、自分の番を察したのか元気に主張してきた。


「えと、これをこうして……」

少し戸惑ったみたいだけど、無事に神託の宝珠を実行できたみたいだ。光に包み込まれ、ワイワイ喜んでいる。


「ねえねえ、恵麻、どう?」

「うん、ちょっと待ってねヒマリ、え~と、ヒマリの新しいジョブ名はネコ神だって……」

「えっ! またネコなの? もうやだ、そんなわけわからないの~」

「まあまあヒマリ、説明を聞こうぜ」

「どうせ、ネコになつかれやすいとかそんなんでしょ、ヒマリ、犬派なんですけど!」


ネコテイマーということで、ネコ好きだと勝手に思っていたヒマリの思わぬ告白に、内心少し動揺する。他のみんなも犬派なのか~とちょっと驚いているようだ。


「ネコ神のユニークスキル【ネコ神】は、ネコ系モンスターの完全掌握、どんなネコ系モンスターもテイムすることができるだって!」

「おぉ~すげーじゃねえか、ネコ系だとどんなのがいるんだ」

「そうね、有名なのだと、ネコマタとか、強そうなので言うと、パワーライガーとかかな」

「そんなの全然いないよ! いないものをどうやってテイムするのよ」

「まあ、そのうち出てくんじゃねえか」


強いネコ系が出るのを待つということで話を終えた。ヒマリは凄く不満そうだけど、どうすることもできないので仕方ない。


「最後は健太だな」

「あっ、そうか、僕が最後だね」


みんなやったように、僕は神託の宝珠を実行した。ふわっとする浮遊感と、何とも言えない爽快感が体を包み込む。そして僕の中の何かが変わった。


「どうかな、恵麻」

「うん、健太は……えっ!?」

「えっ、どうしたの? 何、その反応!」

「あっ、違うの、ジョブ名が変わってないと思ったから」

「ちょっと、まだ僕、楽人なの?」

「ごめん、大丈夫だよ、ちょっと見間違いただけ、ジョブ名は神人、ユニークスキル【大天恵++】が発現したよ」

「大天恵とは!?」

「えと……うわっこれちょっと凄いかも、ドロップ率超絶アップにドロップ品質超絶アップ、さらに神の???だって」

「???てなに?」

「それが私にもわからないの」

「恵麻の神眼でもわからないってなに?」

「でも悪い効果じゃないのはわかるよ、だから気にしないでいいかも。あっ、それより後、もう一つ、ユニークスキルが発現してるんだった」

「えっ? なに?」

「ユニークスキル【大変質++】」

「それはどんなスキル?」

「ドロップ率が大幅低下するって」

「ちょっと待って! マイナススキルなの?」

「あっ、違うの、その低下した分の三倍増で、ドロップ品質が向上するって」

「ちょっと待て、ドロップする数が減るけど、出るアイテムは何倍も良くなるってこと?」

「うん、どうせ私たちのドロップ装備って売れないでしょ? この先、使わない装備が増えるより、より良いアイテムが出る方がいいかもしれないよ」


確かにそうかもしれない。売れもしない装備がどんどん増えるより、より強力な装備が出る方が僕らにはいいかもしれなかった。

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