第82話 想定外

スパイダーネット、強力な拘束アイテム、僕はこれをインベントリから取り出し、ゴリラに使った。


巨大なゴリラに効果があるか少し心配だったけど、スパイダーネットは優秀なアイテムだった。シュルシュルとゴリラの巨大な体を何重にも絡めとり、完全に身動きを封じる。


「ナイスだ健太!」

「よし、みんな一斉攻撃だ!」


良くも悪くも僕らには全力で攻撃するって選択しかなかった。スパイダーネットの効果が切れる前に倒し切ろうと、みんな必死で攻撃を繰り出した。


ゴリラは身動きは封じられていたけど、気絶していたり眠っているわけじゃない、なので、ちゃんと反撃してきた。気合を溜めるように力を入れて踏ん張ると、一気にそれを開放して叫んだ。ゴリラの攻撃は咆哮と呼ばれる行動で、強力なものであればダメージすら与える音の暴力であった。強烈な音の衝撃により、みんな、たまらず耳を抑える。


「ひっ~無理!」

「くっ……」


「ちっ、攻撃をやめんな! チャンスは今しかねえぞ!」

「わかってるわよ!」


ゴリラの咆哮は強力であったけど、耐えられないほどのものではなかった。グッと我慢しながら、みんな攻撃する。


そして無限とも思われたゴリラの耐久力の底が見えた。体を包み込むオーラが消えて、膝をつく。さらに攻撃を加えると、最後に大きく叫んでゴリラは倒れ、黒い霧状に分解して消えた。


「よし、レベルアップだ!」

「レベル100超えたかな~」

 

さらに驚くことが起こった。なんとドロップ無しエリアのはずのこの場所にかかわらず、ゴリラから何か落ちたのだ。表示は──


【GR】マジックアイテム


「【GR】だと!」

「ちょっと、ここじゃアイテムでないんじゃなかったけ?」

「おい、ゴン、どういうことだ?」

「シラネエヨ、ソンナノ、マア、デタンダカラ、イイジェネエカ」


確かにレベルも上がってアイテムまでドロップして、悪いことなんて何もないけど、出ないって言われていたものが出ると、ちょっと気味が悪い。しかも最高レアリティーの【GR】とは嬉しいを通り越して怖くなる。


だけど、みんなはただ嬉しいだけみたいだ。素直に、初最高レアリティのドロップを喜んだ。

「うひょー【GR】だぜ、正真正銘の神装備の降臨だな」

「噂だけど、【GR】は桁違いの性能って言うからな、どんなものか楽しみだ」

「ヒマリの装備になるかな? なったらいいよね」

「誰の装備でもPTがパワーアップするのは間違いないでしょうね」


そんなレアリティ【GR】の話題の中、恵麻が本来の趣旨に話を戻した。


「ちょっと、レベル100超えてるよ! さっきのゴリラ、やっぱりレベルがかなり高かったみたい」

「あれだけタフな奴だからな、そうでなけりゃ割に合わん」

「それじゃ、レベル上げは終わりかな」

「そうだな、【GR】も気になるし、今日は切り上げるか」


目的も達成できたこともあり、僕たちは屋敷へと戻ることになった。これで体制を整えて、ダンジョンボス攻略に挑めるかもしれない。

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