第81話 巨大

巨大なモンスターはゴリラのような見た目で、赤いオーラを纏っている。モンスターは見た目で判断してはダメだとシーカーの基礎として習うことなのだけど、それを踏まえたとしても、このモンスターは確実に強そうだった。


「恵麻、こいつの情報はないか?」

「ごめん、こんなの初めて見た」


メルティライナーのプレイヤーだった恵麻が知らないとなると、このゴリラはレアなモンスターか、途轍もない力を持った隠しボス級の敵か……どっちにしろ強敵の可能性がやはり高かった。


ゴリラは、太い腕を振り上げて、叩き落すように拳で碧を攻撃した。それを盾で防ぐが、あまりの破壊力に、碧は後ろに吹き飛ばされる。


「見た目通りのパワーだぞ! みんな気をつけろ!」


碧であんなに吹き飛ばされる攻撃なんて、僕が受けたら間違いなく死ねる。ちょっとびびり、少し後方へと下がった。


碧に追撃しようとするゴリラに、理央の魔法とヒマリのライトニングボウガンの攻撃が放たれる。追撃の注意を反らすには十分だったようで、ゴリラの動きが一瞬止まった。そこへ朝陽が攻撃をかける。まさに神速、素早い動きと攻撃速度、さらにその一撃一撃が多段ヒットする手数の猛攻でゴリラを一時的に圧倒する。


さらにそこへ碧が加わる。朝陽とは違い、重い一撃、渾身切りで強力な攻撃をゴリラに与えた。


恵麻と僕も猛攻に加わる。ボス級には珍しく、スリープタクトも効果があった。ゴリラを眠りに陥れ、猛毒で強烈なダメージを蓄積させていく。


僕もここぞとばかりのケンタワンドのスキルを発動した。前々からそうじゃないかと思っていたのだけど、眠り状態の敵、いや状態異常の敵には効果があがるのか、とんでもないダメージがゴリラに入る。表示されたダメージ数値は脅威の1200万、もはや必殺の一撃だと思うけど、ゴリラはまだ倒れなかった。


「こいつもタフだな」

「でも、このまま削り切れそう、眠ってるし、このまま押し切りましょう」


眠りの状態異常なこともあり、戦いは一方的だった。全員の一斉攻撃でゴリラの体力を削っていく。


だけど、このゴリラとの戦いはそんなに甘くはなかった。僕たちは強敵の真の力を目のあたりにする。


急にゴリラが目を覚ました。ゴリラは目を開けると、胸をウホウホと手で打ち鳴らし、雄たけびをあげる。すると、体を包む赤いオーラが大きくなり金色に変色した。


そして、あの大きなゴリラがとんでもない速さで動いた。最初のターゲットは碧であった。碧は危険を察知したのか、盾で受けることはなくゴリラの拳を避けた。碧のいた場所をゴリラが豪快に抉る。


ゴリラは間髪入れずに拳を振り上げ、碧に叩きつけた。その攻撃は避けることができず、仕方なく盾で受けたが、あまりの衝撃に碧は真上に吹き飛んだ。


「ぐわっ!」


ヤバいダメージなのは見た目でわかる。あれをもう一発喰らったら致命的だと僕でもわかった。すぐに恵麻がスリープタクトでゴリラを止めようとするけど、この状態のゴリラには効き目がなかった。さらに理央が魔法で、ヒマリがライトニングボウガンで攻撃してゴリラを止めようとするけど、効果が薄い。


朝陽はゴリラの目の前に出て挑発するけど、すでに興奮マックスのゴリラには効果もなく、見境なく、ひたすら暴れまくる。


このままじゃ誰かがやられる。僕に何かできないかと考え、インベントリにあのアイテムがあることを思い出した。

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