第80話 苦戦の後に
碧や朝陽は僕が傷ついたことに怒ってくれたのか、西洋甲冑に対して激しく責め立てる。ゴンはマイペースにパンチ、キックを繰り出し、西洋甲冑に打撃を与えた。三人はなかなかのコンビネーションで、西洋甲冑に反撃の隙を与えない。一方的に攻撃を加え、ダメージを蓄積させていく。
朝陽の連撃、碧の渾身切り、そして痛烈なゴンの体術は、タフな西洋甲冑の耐久力をなんとか完全に削り切ったようだ。限界を知らせるかのように西洋甲冑の隙間から炎が溢れ出る。そして甲冑の部品がバラバラに分解するように弾け散って、カラカラと地面に落ちた。そしてすべての西洋甲冑の部品は黒い消し炭のように消え去る。
「健太、大丈夫か!」
戦闘が終わると、みんな、心配そうに駆けつけてくれた。
「うん、恵麻のポーションのおかげでもう傷口も塞がったよ」
「よかった、しかし、あの一撃喰らってよく腕が斬り落とされなかったな」
「装備の補正もあるし、レベルが上がってステータスも少しは高くなってるのもあるかもね」
確かに前までの僕だったら、あの一撃で即死していてもおかしくなった。レベルアップと良装備に感謝したい。
「どうする、ちょっと休むか?」
「そうね、さすがに休憩しましょう」
僕のこともあってか、朝陽と理央が休憩を提案してくれた。全員がそれに賛成して一休みとなる。
特殊エリアの入口は比較的静かで安全であった。少し進んだだけで地獄に変わるとは想像もできない。そんな中、僕たちは各々適当に座って休憩する。
「コーヒー飲む人、手を上げて」
「はい!」
「俺も頼む」
「私もお願いね」
「ヒマリは朝陽特製コーラがいい!」
「残念だったなヒマリ、もうコーラは切れた」
「えええっ! 嘘でしょ」
「本当だ」
「じゃあ、恵麻、ヒマリもコーヒー頂戴、砂糖たっぷり、ミルク多めで」
「はいはい、朝陽はどうするの?」
「俺はお茶を飲むから大丈夫だ」
朝陽はあまりコーヒーが好きじゃないみたいだ。あまり飲むところをみない。
休憩時に恵麻にステータスを見てもらった。驚いたことにすでにみんなレベル90台後半になっていた。あの西洋甲冑、もしかしたら凄く高レベルだったかもしれない。一気にレベルアップしていてて驚いた。
「下手すると次の戦闘でみんな100超えるかもな」
「そうね、さっきの西洋甲冑ならいけるかも」
「いや、あれは勘弁してくれ、しぶといし危ない」
「だな、今度は健太の首が飛ぶかもよ」
「ええっ! 首は勘弁してよ」
「でも、蘇生ポーションがあるから一回なら大丈夫だよ」
「一回でも首なんて飛ばしたくないって」
首どころか腕も飛ばしたくない。次は気を付けて立ち回ろうと心から思った。
「よし、そろそろ次行くか」
「そうだな」
「朝陽、次は大型なのをお願いね。やっぱりPTで狩るのなら大きい方が戦いやすいから」
「任せろ、でっかいのを連れてくる」
そう言って朝陽はひょいひょいと奥へと向かった。
そしてしばらくして、朝陽は言葉通り大きいモンスターを連れてきた。しかし、その大きさなんだけど、想定より、少し大きすぎると言うか……広い空間の、特殊エリアの天井に届くほどの巨大さ、間違いなく、今までのモンスターの中でも最大サイズ、さすがの大きさにみんな唖然としている。
「馬鹿、デカすぎだ!」
しかし、連れてきたものは仕方ない、僕たちはすぐに戦闘態勢に入った。
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